叫び声
「な、なんで。お前がここにいるんだよ。靖弥……」
靖弥は俺を見下ろすだけで、何も話そうとしない。
見た目は俺の知っている靖弥と変わらない。明るい茶髪に黒い瞳。唯一違うと言えば、顔左半分が黒く変色してしまっている事。火傷とも違う、どす黒い何かを感じる。
「靖弥、これって……」
────ドカッ!
「っ優夏!!!」
「っ!! げほ!! ごほ!!」
手を伸ばしただけで、お腹を蹴られた? なんで…………。
「何が、なんで…………」
「馴れ馴れしく触れるな無礼者。貴様など、我にとって殺害対象でしかない」
何言ってんだよ。なぁ、靖弥。
────靖弥、なんだよな?
「優夏、しっかりしろ!! どうしたんだ?!」
『主、力が不安定になっております。落ち着いてください』
二人の声が遠くなっていく。
友人……で、いいんだよ。あいつは靖弥なんだ。靖弥もこっちに転生していたって事だよな。
やった。これで、俺はまた靖弥と共に馬鹿な話で盛り上がれる。お互い、元の世界を知る者同士、楽しめるぞ!!!
「なぁ靖弥、そんな怖い顔するなよ。俺だよ、優夏だ。なぁ、覚えてるだろ?」
何でか足がふらついて言う事聞いてくれない。早く、早くに近づかないと。また、いなくなってしまう。助けられない、また、失う。そんなの、もう嫌だ。
「靖弥。俺、陰陽師になったらしいぞ。しかも、こいつは天才陰陽師と言われている。すごいだろ。凡人でなんの取り柄もなかった俺が、今度は周りから天才様と煽てられているんだ。なぁ、すごいだろ、なぁ? 靖弥。俺達、友人だよな?」
やっと、掴むことが出来た靖弥の袖。これで、逃げられないはず。
俺は今、しっかりと笑えているのか。どんな表情を浮かべているのか分からない。けど、今はどうでもいい。だって、嬉しいんだ。友人が、目の前にいる。死んだと思った友人がだ。
顔に手を伸ばし、靖弥に触れようとした時。頭の中に知らない声が響いた。
────違います
「靖弥、また沢山話そう。また、俺の愚痴とかを聞いてくれ」
──違います、その人は君の知っている友人ではない
「話したい事が沢山あるんだよ。お前も、あるだろう?」
──気付いて欲しい。その人は、君の友人では無い
「何か、話してくれよ。なぁ、靖弥」
──それ以上何も言わないで欲しい。気付いて欲しい。その人は──敵だ
「なぁ、せい──」
再度名前を呼びかけようとした時、頭の中に流れ込んできていた
その代わりに、琴平と百目の叫び声が、鼓膜を揺らす。
『「優夏/主!!!!!」』
なんだよ。なんでそんなに慌てた声を出している。そんな叫ぶなよ、聞こえてるから。
――――――――ポタ ポタ
あ、あれ……なんだ。目が、霞む。地面が見える。あれ、なんだ。足が地面につかない。浮いているのか。
視界に映る地面はなぜか、どんどん赤くなっていく。これは、血? 誰のだ。
あぁ、誰の、じゃねぇ。これは、
「ガハッ…………」
隠し持っていた刀で、靖弥が俺の腹部を貫いた。
腹部からは大量の血が溢れ出ているのを感じる。そこだけ温かい。いや、熱い。血の味がして、気持ち悪い。
「任務、完了致しました」
そんな言葉と共に地面へと投げ捨てられた。
熱い、苦しい。な、んだよ……。どう、なってんだよクソが。
「ガハッ、ゴホ……。せ、いや……なん」
「先程も口にした。気安くその名を呼ぶな」
なにを、なんで。
分からない。靖弥、お前は靖弥じゃないのか。なら、なんでそんな見た目をしている。
他人の空似レベルじゃないだろ。なぁ、教えてくれよ。靖弥……。
「せ、いや。頼む……。また、一緒に、ゲーム、しようぜ」
琴平に支えられながらも手を伸ばす。だが、その手を誰掴んでは、くれなかった。
意識が遠のく。これ、まずいんじゃないか。闇命君の体でこの重症、出血が止まらない。まだ流れ出ているのがわかる。
何とか止血しようと布か何かが当てられているみたいだが、それでも止まらない。
『許さぬぞ、人間』
この声は、百目? おいおい。何怖い声出してんだよ。お前、そんなに低くなかっただろ。それに、俺がこの状態なんだぞ、一度戻れよ。紙に……。
「百目か。そなたを倒せという命は受けていない。狙いの者は倒した。我は行く」
「行かせるわけないだろ!!」
おいおい……。琴平も、なんつー声だ。だから、怖いって。
そうか、闇命君の体を傷つけたからか。これは俺の不注意でもあるだろ。頼む、落ち着いてくれ。
靖弥を、傷つけないでくれ──
『許さぬ』
「殺してやる」
二人から放たれている、重苦しい殺気を受けているはずの靖弥。顔色一つ変えずに二人の様子を伺っている。恐怖で足が動かなくなってもおかしくない殺気のはず。
向けられていないはずの俺でも、身震いしてしまいそうになるほどだぞ。
「お主達の主はもう死ぬ。意味の無い事をするな」
「ふざけるな!!!!」
琴平は俺の体を支えながらも臨戦態勢を取り、懐から御札を取りだし投げつけた。
「『
握られている御札からは、徐々に冷気が出始め包み込まれる。次に姿を現したのは、水色の長い髪を翻している女性。
『主の仰せのままに』
白い着物を着こなしている女性は、今にも消えてしまいそうな澄んだ声で口にすると、右手を前に出し、何かを投げる動作をした。すると、女性の周りにはいきなり
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