謎の少年
迫ってきていた手は何かにより弾かれ、四方に飛び床を濡らした。それでもまだ襲ってこようと、モゾモゾと動いている。
俺の周りに張られているのは、透明な膜。手で触れてみると冷たくて、硬い。押してもびくともせず、通り抜けられるわけでもない。
「これって、結界的な感じ?」
触れていると効力が無くなったのか、張られていた透明な膜は、光と共になくなってしまった。床には、破れてしまった人型の紙。
「これって──」
破れてしまった人型の紙の裏表を確認してみるけど、何も知識がない俺が見たところで分からない。
もしかしてこれが結界を張ってくれたのかな。でも、誰が──
「あ。もしかして、琴平が最後に俺に近付いた時とか?」
なんにせよ助かった。助かったけど、破れてしまったって事は、もう俺を助けてくれるものは無い。
「詰んだんじゃ……。あ、化け物が……」
床に落ちた水が勢いよく化け物の手に戻っちゃった。水だから自由自在、少し傷つけた程度じゃ意味がないって事かよ。
「意味ないじゃん!!!」
化け物は、またしても俺を掴もうと手を伸ばしてくる。
「どどとどどうしろと!!!」
と、とりあえず逃げないと!!!
幸い、この部屋は一般的な部屋よりは広いみたいだし、逃げ道は確保出来る。でも、隠れる所がないから逃げていても意味はない。何か考えなければ、ずっとこいつと鬼ごっこをする羽目となる。
「うわっ!!!」
────ドテッ!
いってて、足がもつれた。受身が取れず、膝を思いっきりぶつけたからすぐに立ち上がれない。いや、立たなきゃ殺される。早く立て、早く走れ。
「どうすれば、いいんだよ……」
すぐさま立ち上がり、走るけど。攻撃なんて出来るわけがないし、逃げ続けていても無駄。何か、ないのか。
「あっ、しまっ――」
視界の端から、水の手。体にひんやりとした感覚。
掴まれてしまった。
「くっ、離せ!!!」
めちゃくそ冷たい!! 体の芯まで冷たくなる。このままじゃ、確実にまずい。体が締め付けられるが先か、凍死が先か。どっちにしろ、死んじまう。
「離せって!!!」
今の俺は体が小さい。その分、化け物の手にすっぽり収まっているし、なんなら、顔も包まれそうだ。
「ひっ!?」
まだ何かしようとしているのか。空いている方の水の手も伸ばしてきた。
「死んだ──」
何も抵抗できず、何をすればいいのかも分からない。ただただ、握りつぶされるのを待つだけ。
「っ──……」
咄嗟に目を閉じてしまった。
その時。
『ちょっと。僕の体でそんな体たらく晒さないでくれる? ものすごく不愉快なんですけど』
下から、声? え、この声って、俺がトラックに轢かれ、意識が飛んでしまう一歩手前に聞こえた、少年の声と同じだ。
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