政略結婚したくない2人が、帝国の魔の手から逃れ幸せに暮らすまでの3日間

ねむりねずみ@まひろ

第3話

⚠️注意事項⚠️


この台本は、政略結婚したくない2人シリーズの 3話目となります。


2話→政略結婚したくない2人が、他国の王子の求婚を退けるまでの3日間


1話→政略結婚したくない2人が、婚約破棄するまでの3日間


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『キャラクター』

リーゼ・マトライヤ姫:緑豊かなマトライヤ国の姫、天然気質のある可愛らしい女性

一人称「わたくし」


ルービル・アトマデナデナッフィオレント・ナグラリア王子:水の大国ナグラリアの王太子。子供の頃からリーゼが好きで、あの手この手で婚約を維持しようとする

一人称「わたし」


ナナリー:リーゼのお付の侍女 侍女でありながら用心棒でもある。強く美しい完璧な女性

一人称「わたくし」


アビー王子:砂漠の国ハルバードの王太子。 腕に巻いた鈴のアクセサリーが印象的、男女共に魅了する程の美貌 飄々としていて、中々本心はみせない

一人称「俺」


カーマイン王子:ナナリーの兄で、ルブラシア帝国の王太子。禁術に手を染めてしまい、妹をも操り政治の道具とする非道。 本当は優しい兄だった


M :モノローグ


『コピペ用キャスト表』


リーゼ・マトライヤ姫、リーゼ(老):

ルービル・アトマデナデナッフィオレント・ナグラリア王子:

ナナリー、リファ:

アビー王子:

カーマイン王子:





以下台本

――――――――――――――――


リーゼM「ナナリーが行方不明になってから、1週間が経ちました。今のところ有益な情報は何もなく、私は心配のあまり、花嫁の試練にも身が入らずに、先生方にも迷惑をかけてばかりいます」



【ナグラリア城の応接室でまつリーゼの元へ、やってくるルービルとアビー】



リーゼ「…いったいナナリーはどこに行ってしまったのかしら」


ルービル「…リーゼ」


リーゼ「ルービル様!アビー様…ナナリーの行方は、わかりましたか?」


ルービル「すまない…。」


リーゼ「そう…ですか…」


ルービル「これだけ探しても見つからないとなると、他国へ入り込んだ可能性も考えねば…」


リーゼ「…他国」


アビー「なあ、リーゼちゃん。ちょっと聞きたいんだけどさ」


リーゼ「なんでしょう?」


アビー「ナナリーちゃんって、小さい頃からリーゼちゃんの侍女なのかい?」


リーゼ「え?それは…そう…だったかしら?」


アビー「…言い方を変えようか、ナナリーは、いつから…いた?」


リーゼ「いつ…から?…あら?いつからだったかしら…」


アビー「思い出せない…いや、わからないのかい?」


リーゼ「はい、確かにナナリーはずっとそばに居てくれたはずなんですが、いつから居たかと聞かれると、頭にモヤが掛かったように…思い出せなくて…」


アビー「…なるほど」


ルービル「認識阻害か?」


アビー「あー多分、その手の魔道具だろう」


リーゼ「魔道具?」


アビー「ああ。その名の通り、魔法のかかった道具の事さ。水晶の丘にある道のような大型の物から、この間見せた目眩しみたいな、小型の物まで色々とあるんだ」


ルービル「ふむ、 認識阻害系だとしたら、普段から肌身離さず持っているとは思うが…」


リーゼ「ナナリーが肌身離さず…あっ!」


アビー「何かわかったのかい?」


リーゼ「いえ、ナナリーはいつも指輪を大切に持っていましたの」


アビー「指輪?」


リーゼ「はい、幼い頃お兄様がくれた大切な指輪だと…聞いたことがありますわ。仕事に支障がでるからと、普段は首から下げていましたけど…」


ルービル「ナナリーに兄が?」


アビー「リーゼちゃん、ナナリーの出身地はわかるかい?」


リーゼ「いえ、すみません…」


アビー「そうか。それなら、ナナリーの好きな物や場所は、わかるかい?」


リーゼ「んー、好きな食べ物はわかりませんが、ピリトウガなら良く食べてましたわ!」


ルービル「ピリトウガ?」


リーゼ「ええ、マトライヤ国でしか実らない果実で、少し辛いのが特徴ですわ。私が大好きな果実で、ナナリーも一緒に食べていましたの」


アビー「ピリトウガねぇ…」


ルービル「他には何かないかい?」


リーゼ「んー、あ、鳥!」


アビー「鳥?」


リーゼ「はい、ナナリーは鳥が好きでしたわ!良く一緒にバードウォッチングをしていました!」


ルービル「そうか」


リーゼ「中でも青い鳥が気になっていたみたいです」


アビー「っつ?!青い鳥だって?!」


ルービル「アビーどうした?」


アビー「青い鳥は…別名、識別鳥と言って特定の条件下でしか、見ることが出来ない鳥なんだ」


ルービル「なんだって?」


アビー「リーゼちゃん、ナナリーには、青い鳥が見えていたのかい?」


リーゼ「ええ、この間の孤児院からの帰り道、青い鳥が飛んでるところを一緒に見ましたわ」


ルービル「ああ、あの時か。私もその鳥なら見かけたな」


アビー「そうか…皆見えていたんだな」


ルービル「アビー、その条件とは…まさか」


アビー「ああ、青い鳥は、王族の血が流れている者にしか、見ることのできない鳥だ」


ルービル「なんだって?!」


リーゼ「王族…ですか?」


アビー「そう。青い鳥は識別鳥と言っただろう?王族の血が混じっている者は、時折平民にもいるからね」


ルービル「私生児か…」


アビー「そういう事、その子達を探したり、果ては亡命した王族を捉えるために使ったりと、色々と重宝されているのさ」


ルービル「初めて知ったぞ…本当なのか?」


アビー「ああ、識別鳥はハルバード国が極秘に輸出している、一種の魔道具だからな」


ルービル「お前…そんな重要な事をペラペラと…私が悪用したらどうするんだ!」


アビー「お前はそんな事しない。真面目でカタブツだからな」


ルービル「一言余計だ」


リーゼ「…待ってください、その王族にしか見えない青い鳥が、ナナリーにも見えていたということは…」


アビー「ああ。やはりナナリーは…王族だ」


リーゼ「ですが…ナナリーは私の侍女でしたのよ?」


ルービル「…だから認識阻害の魔法道具か。」


アビー「ああ、アルバリオン公国なら、アクセサリーサイズの魔道具を作ることも可能だ。そして、これも極秘情報だが…アルバリオン公国は今…ルブラシア帝国の傘下にある」


ルービル「?!なんだと?!」


リーゼ「まぁ?!」


アビー「ナナリーは、帝国の王女だ…」


リーゼ「そんな…ナナリー…が…」


ルービル「あまり驚かないんだな」


アビー「…まあ…な。」


ルービル「……そうか」



【ノックもなく開けられる扉 後ろで侍女が怯えている。皆が驚き振り返るとそこには、帝国の現王カーマインがいた】



カーマイン「やあ、皆さんお揃いのようで、お邪魔するよ?」


ルービル「っ…これはこれはルブラシア帝国のカーマイン王太子殿。連絡を頂ければお迎えしましたのに、何かご用ですか?」


カーマイン「やあ、ルービル王太子殿。かまわないよ、急に来たのはこっちだしね。今日は招待状を持ってきたんだ」


ルービル「招待状?」



【カーマインから禍々しい空気が漂ってくる、その重圧に耐えるルービルとアビー】



カーマイン「ああ、ハイデン王が亡くなったからね」


アビー「なんだって?!」


カーマイン「やあ、アビー王太子殿…どこに行ったのかと思えば、こんな所にいたのかい?」


アビー「…ご無沙汰しております」


カーマイン「あー、硬っ苦しい挨拶はいらないよ。はい、これ。君にも招待状」


アビー「……」


ルービル「ハイデン王が亡くなるなんて…病気か何かか?」


カーマイン「…さぁね、しーらない。…手を出しちゃいけない薬にでも、手を出したんだろうね…きっと」


アビー「っ?!カーマイン殿、まさかっ!!」


カーマイン「…まさか?何?続きをどうぞ?」


アビー「いえ…」


カーマイン「なんだよ、言えないの?つまんないなー」


ルービル「…っ。それで、招待状というのは…」


カーマイン「ああ、何故かハイデン王が死んじゃったからね、王が不在の帝国なんて、許されるわけないだろう?だから、僕が王位を継ぐ事になったのさ…」


ルービル「なっ…?!」


カーマイン「それとね、行方不明だった妹が、ついこの間見つかったんだ…」


アビー「…妹?」


カーマイン「そう、妹。楽しみにしてて?生まれ変わった、新しい帝国のお披露目さ。3日後に継承の儀を開くから、来てくれると嬉しいなぁ。ん?あ、君、リーゼ姫だろう?」


リーゼ「は、はい!あのっ、お初にお目にかかります…リーゼ・マトライヤと申します…」


カーマイン「これはこれはご丁寧にどうも、リーゼちゃん。はい、君にも招待状」


リーゼ「ありがとうございます…」


カーマイン「リーゼちゃんには、特に来てもらいたいんだ、…色々とお世話になったしね…」


リーゼ「あの、何か…」


カーマイン「いいのいいの、こっちの話し。それじゃぁ、招待状…確かに渡したからね。」


ルービル「行くとは…限らないぞ」


カーマイン「いいのー?来ないと後悔する事になるよ、元第二王子のルービル様」


アビー「なっ…」


ルービル「カーマイン殿、何故それを貴方が知っている」


カーマイン「しーらない。あ、リーゼちゃんは特に来た方がいいと思うよ?」


リーゼ「私…ですか?」


アビー「ナナリーか…?」


カーマイン「さあ?知りたければ自分の目で確かめにおいで。それじゃ、失礼するよ」



【先程までの禍々しい空気が無くなり、緊張が溶ける2人】



ルービル「ふぅ…なんだあの禍々しい空気は」


アビー「ああ、呼吸するのもやっとだった…」


リーゼ「大丈夫ですか?2人とも…」


ルービル「ああ、ありがとうリーゼ。君は何とも無かったのかい?」


リーゼ「何とも…とは?」


アビー「いや、あの禍々しい空気を…」


リーゼ「…?」


アビー「まじか…リーゼちゃんって意外と鈍感?」


リーゼ「な、そんな事はありませんわ!」


ルービル「ともかく、ルブラシア帝国に行くしかないな。ナナリーは十中八九そこに居る」


アビー「くそっ…。最後のピースを無理やりはめ込まれた気分だ」


ルービル「ああ。だが、ただではやられん」


リーゼ「私も、お手伝いしますわ!」


ルービル「リーゼ…無理はしないように」


リーゼ「…もしこの件に、ナナリーが関わっているなら、お約束は出来ませんわ」


ルービル「リーゼ…」


アビー「ははは、リーゼちゃんも強くなったもんだ」


ルービル「ああ、そうだな」


アビー「ごちゃごちゃ考えてても仕方ない、できる限りの準備をしていこうぜ」


ルービル「そうだな、そうしよう」



【そのころ、一方ナナリーは意識が混濁し朦朧としたなか、綺麗に着飾り1人部屋にいた】



ナナリー「…私はナナリー・ルブラシア…」


カーマイン「やあ、愛しの我が妹ナナリー…気分はどうだい?」


ナナリー「…私は…」


カーマイン「ふむ…いい具合に術がかかっているな」


ナナリー「私は…ナナリー・ルブラシア…」


カーマイン「くっくっく…あの強気でやかましいだけが取り柄のお前がっ…こうまでなるとは…あはははは!!あのマトライヤ姫にも招待状を出したかいがあるというものだ!」


ナナリー「マト…ライヤ…っリーゼ…様…?」


カーマイン「…あ?」



【無言でナナリーの頬を殴るカーマイン】



ナナリー「がはっ…」


カーマイン「ちっ、術にかかりきってねーじゃねえか!おいそこのお前、ナナリーに術をかけた魔術師を殺せ!何してる?早く行け、お前も殺されたいのか?。…さあナナリー、僕の目をよーくみるんだ」


ナナリー「あっ…うっ」



【禁術を使いナナリーの意思を奪うカーマイン】



カーマイン「…お前は、ナナリー・ルブラシアだ」


ナナリー「私は…ナナリー・ルブラシア…」


カーマイン「そうだ、お前はナナリー・ルブラシア、このルブラシア帝国の姫だ。いいかナナリー…リーゼ・マトライヤは敵だ」


ナナリー「リーゼ・マトライヤは…敵」


カーマイン「そう、我が帝国を脅かす…敵だ。敵は殺せ…」


ナナリー「リーゼ・マトライヤは…殺す…」


カーマイン「そうだ、それでいい…。さあ、ゆっくりおやすみ…」


ナナリー「……」


カーマイン「さてと、そろそろ準備に取り掛かるとするか。くっくっく…当日は、楽しい宴になりそうだ…」


ナナリー「私は…ナナリー・ルブラシア…私…は…

…」



【カーマインが去った後も、うわ言のように呟くナナリー、その顔には一筋の涙が零れていた】


【3日後、賑やかなルブラシア帝国 王位継承の義を目前にして、王宮の広間に案内される3人】



リーゼ「なんだか緊張しますわね…」


ルービル「大丈夫だ、リーゼのことは、例え何があろうとも、私が守る」


リーゼ「ルービル様」


アビー「はーい、敵陣のど真ん中でイチャイチャするのは止めてくれるかい?」


ルービル「なっ…」


リーゼ「イチャイチャなんてしてませんわ!」


アビー「はいはい、にしても帝国の力は相当脅威だとは聞いていたが、ここまで豪勢な城とは…床や柱は大理石か?」


ルービル「ああ、そうだろうな」


アビー「流石無敗と謳われていた、帝国ルブラシアだ」


ルービル「おい、お前が言うと皮肉にしか聞こえないぞ!帝国に対して、唯一白星を上げたハルバード国が!」


アビー「だとしても、曾お祖父様の代の話だからな。ハルバードは、今、砂漠化による被害の補填でいっぱいいっぱい。今攻め込まれたら一溜りもないさ」


ルービル「ふむ…なあ、アビー。ものは相談なんだが…」


アビー「ん?なんだい?」



【突如なるファンファーレ、拍手と共にカーマインが現れる】



リーゼ「ルービル様、アビー様、始まりましたわっ!」


ルービル「話は後だ」


アビー「はいはい」


カーマイン「やあやあ、諸君。今日は僕の為に集まってくれてありがとう。知っての通り、国王であるハイデンが急死した。…皆が動揺する気持ちもわかる。王は、病気も怪我も何もなく、健康な身体そのものだった…だが、ある日を境に…日に日に衰弱していったのだ。」


リーゼ「ルービル様…これって」


ルービル「…ああ」


アビー「……」


カーマイン「そんな中、父上は私を自身の寝室へと呼び出した。他人に弱みを見せるなど、一族の恥と豪語していたあの父上が…。妻である母上すら一度たりとも入ったことの無い寝室へ…招き入れたのだ。私は悟った。ああ、王はもう長くはないのだと。そしてその予感は当たった。王は、弱弱しく拳を握り私に、王位をつげと仰られたのだ! …死の間際まで、あの方は偉大なる王であった…。今ここに宣言しよう…私は、あの偉大なる父の後を継ぎ、ルブラシア帝国の王となり、帝国の繁栄を約束すると!」



【歓声が湧き上がるなか、3人は小声で話している】



アビー「よくもまあ、ペラペラと舌が回るもんだ」


ルービル「おそらく全て自作自演だろう」


アビー「それに気づけない家臣とか…やばいな」


ルービル「いや、奴らの目をみてみろ…」


リーゼ「…皆さんなんだか元気がないような」


ルービル「そう、生気を失っている」


リーゼ「ここに居る皆さん、殆どの方が…同じ目をしていますわ」


アビー「集団にかける…術…?まさか、禁忌とされている…古の闇魔法か!」


ルービル「しっ、声がでかい!おそらくはそうだろう…」


アビー「だとしたら、あの禍々しい空気も納得がいく」


カーマイン「さて、ここからは王として話を進めよう。我が父ハイデンが命を落とした原因を突き止めるため、私は昼夜問わず駆けずり回った。それは、ルブラシア帝国に留まらず…他国へも…。

そして…ある1つの原因にたどり着いた。それは…ジギー。とある国から流れてきた、麻薬…ジギーにより、父上は命を落とされたのだ!!」


アビー「なっ…くそっやられた!」


リーゼ「どうしましたの?」


ルービル 「私たちを呼んだのもそのためか…」


カーマイン「その国とは…ナグラリア国!ルービル・アトマデナデナッフィオレント・ナグラリア!!…貴様の国だ…」


ルービル「…デタラメな事を言わないでいただきたい」


カーマイン「デタラメかどうかはどうでもいい。貴様の国でジギーが横行している事は既に把握済だ!!…そして、もう1つ。おいで…ナナリー」


リーゼ「ナナリー…?!」


ルービル「なっ…」



【生気をなくしたナナリーが、壇上へとあがる】



カーマイン「紹介しよう、誘拐され、長年行方不明だった我が妹ナナリーが、この度見つかったのだ…」


リーゼ「行方…不明?…誘拐?」


カーマイン「さあ、ナナリー。皆様にご挨拶を…」


ナナリー「私は…ナナリー…ルブラシア…」


カーマイン「ああ、可哀想に。誘拐された先で余程酷い目にあっていたんだろうね…。ご覧の通り、ナナリーは心を閉ざしてしまっている。そんなナナリーは、どこに居たと思う?…なぁ、リーゼ姫?」


リーゼ「…え?」


アビー「くそっ…」


カーマイン「ナナリーは、そこにいるリーゼ・マトライヤに監禁されていたのだ!!誘拐しただけでは飽き足らず、侍女として奴隷のような扱いをされ、マトライヤ国から逃げ出すことも出来ず。…可哀想に…こんな姿にされた哀れな妹よ…」


リーゼ「そんな…誤解ですわ!ナナリーは、ナナリーは!」


ルービル「…リーゼ、今は抑えるんだ」


リーゼ「ルービル様、どうしてですの?!」


ルービル「ここで事を荒立てるのは得策ではない…私達は何もしていないのだから、堂々としていればいい」


リーゼ「ルービル様…」


カーマイン「どうした?うしろ暗いことが無いなら何か答えられるだろう?ほら、ほら!」


リーゼ「…っ」


カーマイン「あはははは!!!僕の大切な家族を奪った二国には、制裁が必要だと思うんだ、そうだろう?罪には罰を…」


ルービル「何を馬鹿な事を」


カーマイン「ああ、もう賠償金なんていらないよ。お金は君たちの国から、たっぷり貰ってるしね。僕の望みはたった1つ、お前達の命さ!」


ルービル「なっ」


アビー「馬鹿な!」


リーゼ「っ…」


カーマイン「さあいけ、ナナリー。まずはリーゼマトライヤを殺せ」


ナナリー「リーゼマトライヤ…敵…」


ルービル「待て!ナナリー!」


リーゼ「きゃぁっ!!」


アビー「リーゼちゃん!!」



【ナナリーの攻撃を防ぐルービル。リーゼを背後に守るアビー】



ルービル「ナナリー!目を覚ませ!」


ナナリー「リーゼ…マトライヤ…敵…」


リーゼ「ナナリー!」


アビー「リーゼちゃん、ダメだ!逃げるんだ!」


カーマイン「逃がすわけ無いだろう?」


アビー「カーマイン…いつの間にっ」


カーマイン「アビー、僕の目を見ろ」


アビー「しまったっ!!……っ」


カーマイン「さあ、アビー。邪魔なルービルを殺せ」


アビー「…ルー…ビル…殺す!」



【アビーが操られ、ルービルを攻撃し羽交い締めにする】



ルービル「アビー?!っ…やめろっ、くそっ!」


ナナリー「リーゼ…マトライヤ…」


ルービル「リーゼ!!にげろ!!」


リーゼ「ひっ…か…はっ」



【リーゼとの間合いをつめ、リーゼの首を絞めるナナリー】



ナナリー「リーゼ…マトライヤ…」


リーゼ「ナナリー…苦しっ…」


ナナリー「リーゼ…マトライヤ…殺す」


ルービル「リーゼ!!くそっ、離せアビー!リーゼが…リーゼが!!」


アビー「ルービル…殺す」


ルービル「かはっ、この…馬鹿力…が」


カーマイン「あはははは、いいねいいね!さあ、公開処刑と行こうか。ナナリー、そのままリーゼ姫の息の根を止めろ!」


ルービル「やめろぉぉぉ!!!」


リーゼ「ナナリー…」


ナナリー「…リーゼ…マトライヤ…」


リーゼ「ナナリー…無事で良かったわ」


ナナリー「リーゼ…マト…ライ…ヤ」


ナナリー「ナナリー、貴女は…大切な…私の…家族…」


ナナリー「…リー…ゼ」


カーマイン「何をしている、ナナリー!さっさと殺せ!」


ナナリー「リーゼ…殺…す」


リーゼ「ナナリー…大好きよ」


ナナリー「…っ…リーゼ…様…リーゼ様っ!」



【正気に戻り、リーゼから手を離すナナリー】



リーゼ「けほっけほっ…ナナリー?」


ナナリー「リーゼ様っ…リーゼ様ぁぁぁぁ!」


リーゼ「ナナリー!正気に戻ったのね…良かった…う…う…うわぁぁあん!ナナリーぃぃい!!」



【泣きながら抱き合う2人】



カーマイン「馬鹿な…僕の魔法が破られただと?」


アビー「っつ…頭がっ…」


ルービル「カーマインが揺らいでる…今だ…。アビー!目を覚ませ!」


アビー「痛っ!!!何すんだよルービル!!いきなり頭突きするんじゃねえよ!!」


ルービル「正気に戻ったか、このバカが」


アビー「…どういう事だ」


ナナリー「…リーゼ様…申し訳…ございませ…」


リーゼ「ストップ!ストップよナナリー!」


ナナリー「…あの、リーゼ様?」


リーゼ「ナナリー、貴女はこの帝国の姫なのよね?」


ナナリー「そう…ですが…」


リーゼ「姫ならば堂々となさい!紳士淑女たるもの、この位で動揺してはいけませんわよ!」


ナナリー「リーゼ様…」


リーゼ「ふふふ、1度言ってみたかったのです!私は何も気にしていませんわ!」


ナナリー「リーゼ様…」


カーマイン「ありえない、何友情ごっこしてるんだよ!王の目前だぞ!ひれ伏せよ!お前らぁぁぁ!!」


アビー「ぐっ…またあの重圧だ…」


ルービル「ぐああっ…なんて禍々しい気だ…」


ナナリー「くっ…」


リーゼ「あら?どうしたの皆?」


カーマイン「何故だ、何故、弱者であるお前に効かない!!」


リーゼ「あら…なんの話し?」


ナナリー「お兄様、もうやめてください!!これ以上は…見過ごせません!」


カーマイン「うるさいなぁ、僕は王なんだ。王の命令は絶対だ…おい、お前達!!あいつらを殺せ!!」


ナナリー「…お兄様、私はリーゼ様と出会って、愛される事、愛することの大切さを知りました…」


リーゼ「ナナリー…」


カーマイン「は?何だナナリー、お前、僕に説教でもしようってのか?ふざけるな!!」



【禍々しい気がナナリーの頬をかすめ、血ががれる】



ナナリー「…っ。」


リーゼ「ナナリー、頬から血が!」


ナナリー「大丈夫です。全てを愛し、慈しみ…何があっても信じ抜く、慈愛に満ちたその心…これは誰にでも出来る事ではありません。リーゼ様だから、得られた強さとも言えましょう。」


カーマイン「だから何だっていうのさ?愛が強いだなんて、そんな愚かな事を信じるつもりか?」


ナナリー「信じる信じないは己の勝手。ですが、私は私の目で見た物を信じます!リーゼ様は強い。それがわからないお兄様に、リーゼ様を操れる訳がありません!」


カーマイン「うるさい!黙れ…黙れ!だったら僕自らお前らに引導を渡してやるよ!」


ナナリー「っ!」


カーマイン「死ねぇぇえ!」


アビー「くそっ間に合わない!」


リーゼ「きゃぁぁあ!!」


ルービル「リーゼ!!」




【カーマインがリーゼを襲う、それを制するように前に立つナナリー、2人の武器が交差する】



カーマイン「……」


ナナリー「…そんな事、させませんよ…お兄様」


カーマイン「馬鹿な…かはっ!」



【倒れるカーマイン】



リーゼ「ナナリーっ!!」


ナナリー「リーゼ様!!お怪我はありませんか?」


リーゼ「大丈夫よ、ナナリーが守ってくれたもの!」


ナナリー「リーゼ様…本当によかった」


リーゼ「ナナリー…あの、さっきから思ってたのだけれど、そのリーゼ様って言うのもダメじゃないかしらっ!」


ナナリー「へ?」


リーゼ「だって、 ナナリーと私はもう姫と侍女じゃないのよ?姫と姫だから、対等なのでしょう?」


ナナリー「はぁ…」


リーゼ「つまり、これからは…リーゼって呼んでちょうだい?」


ナナリー「っ…私を許してくださるのですか?」


リーゼ「許すも何も、私は特に何もされてないわ!」


ナナリー「リーゼ様…」


リーゼ「ちがーう!リーゼ!ほら言ってみて?」


ナナリー「リー…ゼ」


リーゼ「はーい!なぁーにーー?」


ナナリー「リーゼ、語尾を伸ばしながら話すのは、淑女としてどうかと思いますが…」


リーゼ「ふふ、いつものナナリーだわ!…おかえり!ナナリー!」


ナナリー「…ただいま…リーゼ!」


ルービル「ははは、リーゼらしい」


アビー「まったくだよ」


リーゼ「…ねえナナリー、カーマイン王は…そのっ…」


ナナリー「…大丈夫、生きてますよ。死んでしまっては罪は償えませんし。なにより、リーゼが悲しみますので。」


リーゼ「私…が?でも、私、カーマイン王とは、ほぼ初対面よ?」


ナナリー「はい。ですが、リーゼの事ですから、自分のせいで、私が兄殺しの罪を負ったと気に病まれますでしょう?」


リーゼ「それは…たしかに。」


ナナリー「それに、こんなのでも血の繋がった兄です。幼い頃は本当に優しかったのですが…ある時を境に人が変わったようになってしまい。どこで禁術を覚えたのか、その辺り、兄付きの者達を含め、徹底的に洗い出しますわ。身内の恥は身内で片付ける…そう、それが実力主義のルブラシア帝国!…お集まりの皆様!私は、現王であるカーマインを倒しました。

…つまり!現在の頂点に立って居るのは私でございます。…今この時をもって、私がこの国の女王となることを宣言いたします!!」


アビー「わーお、まじか…」


ルービル「…流石だな、ナナリー」


リーゼ「ふぇ?!ナナリーが…女王…様」


ナナリー「リーゼ姫、此度の件本当に申し訳ございませんでした…」


リーゼ「ふぇっ?!」


ナナリー「賠償や償い等は、各国の王たち、そしてルービル様、アビー様を交えまして、行わせて頂ければと思います」


ルービル「かしこまりました、こちらに異論はありません」


アビー「我が国も同意いたします」


ナナリー「リーゼ姫も…よろしいですか?」


リーゼ「は、はい!」


ナナリー「では、これにて継承の義を終わりにいたします!皆様、ありがとうこざいました!」



【人が疎らに残る謁見の間で、4人あつまっている】



ナナリー「リーゼ、ルービル様、アビー様、申し訳ございませんでした」


アビー「まったくだよ…」


ルービル「お前が言うな」


リーゼ「ナナリーが女王になっちゃった…あら?という事は、ナナリー様ってお呼びした方が良いのかしら?」


ルービル「リーゼ…」


アビー「それにしても、リーゼちゃんはよくカーマインの術にかからなかったなー、俺なんて1発でかかっちまったってのに」


ルービル「お陰で、私への被害が甚大だ」


アビー「しょうがないだろー、闇魔法の耐性なんて無いんだから」


ルービル「だとしてもだ!」


ナナリー「リーゼは、ピリトウガの実を好んで食べていましたよね?おそらくそのせいかと」


ルービル「ピリトウガ、マトライヤ国にしか実らない果実か」


アビー「あー、そういやナナリーと一緒に食べてたって言ってたな」


リーゼ「はい、少し辛いですが美味しいですよ!我が国の自慢の果実ですわ!」


ナナリー「実は、ピリトウガの果汁は、気付け薬や状態回復薬にも使われるほど、強力な辛さを持っているんです。…私もほんの一時、頂いたおかげか、兄の術に、完全には掛かりませんでした」


ルービル「なんだって?!」


アビー「…なるほど。幼い頃からずっと食べ続けているリーゼちゃんなら、身体にその効果が染み付いてるんだろうな。カーマインの術が効かないのもうなずける」


リーゼ「そうでしたの、でも、ピリトウガは本当に美味しいんですのよ?今度、皆にもご馳走しますね!」


アビー「ちなみにナナリー、ピリトウガの味は…」


ナナリー「………聞かないでくださいまし」


ルービル「……胃薬は常備しておこう」



リーゼM「こうして、ルブラシア帝国での事件は幕を閉じたのでした!その後、カーマイン達の投獄や、ジギーを横流していた商人の捕縛等が速やかに行われ、新しい女王の手腕を絶賛する声が響いていました。我がマトライヤ国とナグラリア国で取り交わした、二国間同盟ですが、新たにハルバード国が加入し、なんと、その三国をルブラシア帝国が全面バックアップするという、連国同盟が交わされる運びとなったのです!各国の特産品により、交易もより盛んになるそうで、今から楽しみで仕方ありません !

そして、ジギー中毒者達は、皆、中和剤を摂取し、徐々に快方へと向かっているとの事。

実は、ナナリーが持っていた中和剤。あれにはピリトウガの果汁が使われていたそうで、我がマトライヤ国は、ルブラシア帝国へ定期的にピリトウガを卸す事となったのです。めでたしめでたし!!

…ですが、物語はそこで終わらなかったのです。」



【ルブラシア帝国の庭にて、皆が集まりお茶会と言う名の会議を行っている】



アビー「…って事で、ナナリー、俺と結婚してください」


ナナリー「謹んでお断り致します」


リーゼ「ナナリー!素直にならなきゃだめよ!」


ナナリー「いえ、これが素直な私の気持ちです、こんな適当な流れでプロポーズなんて有り得ません。出直してらっしゃいませ、アビー様」


アビー「そう来るだろうと思った!…リーゼちゃん、ちょーっとナナリー借りてくよー!」


リーゼ「はいどうぞー!」


ナナリー「リーゼ?!ちょっ離しなさい!こらっアビー!」


アビー「お、昔の呼び方に戻ったな」


ナナリー「だから離しなさいってば!」


アビー「おーっと!その攻撃は効かねえよ!!」


ナナリー「このっ…ガードするなぁぁぁ!」


アビー「こんなじゃじゃ馬の相手ができるのは、俺くらいだぞー?」


ナナリー「うるさいっ!」


アビー「ほーら、感情がブレてるから、拳もブレッブレになってるぞ」


ナナリー「う、うるさい!」


アビー「幼少期から、この時をずーっとまってたんだ、な?俺にしとけ?」


ナナリー「あんな迷惑をかけて…い、今更どの顔して接すればいいのか…わからないのよ!」


アビー「ふむ、なんだそんな事か」


ナナリー「そんな事って…」


アビー「そりゃ、もちろん…笑顔でしょ」


ナナリー「…っ。…ばか」


アビー「んで、どうする?嫁にくる?」


ナナリー「…ほ…」


アビー「ほ?」


ナナリー「保留よ!!」


アビー「…マジか、この流れで、保留かよ…」



【少し離れた所から見守るルービルとリーゼ】



ルービル「アビーの奴やるな…」


リーゼ「ルービル様、良かったんですの?アビー様に言わなくて」


ルービル「ん?なんの事だい?」


リーゼ「ですから、ハルバード国への出資の件ですわ」


ルービル「んー、まあ…今 言うのは野暮ってモノだろう」


リーゼ「確かに…そうですわね」


ルービル「アイツらが婚約したら、その祝いとしてナグラリア国からハルバードまでの、水道管設置の件を伝えるさ」


リーゼ「サプライズですのね!わかりましたわ、私も内緒に致します!」


ルービル「ありがとう」


リーゼ「ふふ、ナナリー、幸せそうですわね」


ルービル「そうだな。リーゼ、君も幸せかい?」


リーゼ「はい!私、とても幸せですわ!」



【暖炉の前で老婆が椅子に座り、ベッドに横になっている曾孫に物語を聞かせている】



リーゼ老「こうして、ナナリー姫はアビー王子と、リーゼ姫はルービル王子と、それぞれが好きな人どうし…恋愛結婚をして、ずっとずーっと、幸せに暮らしましたとさ。おしまい」


リファ「ひいお祖母様!もう1度、お話しを聞かせてくださいませ!」


リーゼ老「ふふふ、リファは、この物語が大好きなんだねぇ。」


リファ「ええ!だって、とっても素敵なんですもの!私もリーゼ姫様みたいに、素敵な結婚にしたいですわ…」


リーゼ老「そうかい、リファならきっと幸せになれるさ…。さあ、今日はもうおしまいだ、明日は朝から大忙しだからね」


リファ「ひいお祖母様…私…」


リーゼ老「大丈夫さ…ルブラシア帝国の王子はとても優しいお方だよ…私が保証する」


リファ「そう…ですわね。私、頑張って…幸せを掴みとりますわ!そして恋愛結婚を致しますの!憧れのリーゼ姫様のように!」


リーゼ老「そうさね。さあ、もうおやすみ…ゆっくり休むんだよ」


リファ「ひいお祖母様、またお話しを聞かせてくださいませね?」


リーゼ老「ああ…約束しよう」


リファ「おやすみなさいませ…ひいお祖母様…」


リーゼ老「おやすみ…リファ」



【星空の下、1人外へでるリーゼ。月明かりの中で空を見上げながら祈りを捧げている】



リーゼ老M「みてますか貴方、私ついにひいおばあちゃんにまでなったんですのよ。それもこれも、貴方が残してくれた幸せのおかげ。そんなあの子も…あの頃の私と同じ年になり、ルブラシア帝国の王太子様と婚約を結ぶ運びとなりましたの…。これで、やっと肩の荷がおりましたわ。ふぅ…私も、もうそっちへ行ってもいいかしら」


リーゼM「…ねえ…ルービル様…」



【ふと目の前にルービルの姿を捉え、色々な思いが駆け巡り泣き出してしまうリーゼ。】



ルービル「…リーゼ」


リーゼ「ルービル…様?……っ。ルービル様っ!!」


ルービル「待たせてしまったかな」


リーゼ「いいえ…いいえ…」


ルービル「ずっと見ていたよ、本当に良くやってくれた…ありがとう…」


リーゼ「全て、ルービル様が残して下さったおかげです…私は、子供達が幸せであるお手伝いをしただけですわ…」


ルービル「ふふふ、そんな所もリーゼらしい」


リーゼ「ルービル様…」


ルービル「そろそろ時間だ…リーゼ…今度は置いていったりしない。共に行こう」


リーゼ「…え?ルービル様?」


ルービル「どうした?沈黙は肯定ととるぞ」


リーゼ「…っ」


ルービル「さあいこう」


リーゼ「…はい!どこまでもご一緒致しますわ!」


ルービル「ああ、もう離さない…リーゼ、愛しているよ」


リーゼ「ルービル様…私も、愛していますわ…」



リーゼM「こうして、リーゼ姫様は、ルービル王子と共に、永遠の眠りにつきましたとさ。めでたしめでたし」



Fin

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政略結婚したくない2人が、帝国の魔の手から逃れ幸せに暮らすまでの3日間 ねむりねずみ@まひろ @sibainu_uta

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