7話 その魔女、『嫉妬』につき。

「な、なんてこと・・・だ...」

 全部枯れているなんておかしい!育て方まで調べて、水やりの分量も間違えていなかったはずなのに・・・まさか、ベルの仕業か!いや、でもあいつがそんなくだらないことをするとは思えないし・・・くそ!分からない。

 まあ、いいかとりあえずベルに聞いてみよう。





「はあ?私があの薬草を枯らした?そんなわけないじゃない。大体、どこに植えてたかも分からないのに...」


 容疑者1のベル氏の証言である。よく考えてみれば、あいつにどこに植えたかなんて話していないな。すこし育って葉っぱが出てきてるとはいえ、あいつに雑草と見分けがつくとは思えない。なんせバカだからな。こいつは一旦保留だ。

 だとすれば、一体だれが...ラーグとは最近会ってないし、ハーバルさんもわざわざ枯らしに来るとも思えない。うーん....

 犯人捜しに集中していると、突然、玄関のベルが鳴った。


「はーい、今行きまーす」


 こんな時に客人とは、まったく面倒だな。

 急ぎで玄関まで向かい、ドアを開ける。


「どうしまし・・・た?」


 言葉に間が開いてしまうのも無理はない。目の前には、黒いローブを纏い、口には微笑を浮かべるいかにも魔女といった見た目の女が立っていたのだから。


「人違い、いや家違いですー」


 そう言い、ドアを閉めようとするが、ドアが閉まらない。いくらひ弱(自分で言っちゃう)系男子でも、ドアくらいは閉められる。なのに、どれだけ力を入れても閉まるどころか、動きさえしない。

 THE HI〇H LOWSばりに開かないドアに悪戦苦闘していると、その女性もとい魔女が


「なんで逃げようとするんですかディア―さん。私、あなたに会いたくて来たんですよ。待って、逃げないで!」


「いやいやいやいや逃げます。普通、逃げますから!怖いですもん!そんな恰好で家の前に立ってるとか!」


「お願いです、話だけでも聞いてください。そうすればそのドアにかかった魔法を解きますから!」


「大体、人の家のドアに魔法をかけるとかおかしいから!王国だったら犯罪だから!」


「そんなことはいいんです!お願いします、話だけでも!」


「いやだねっ!だって怖いもん!」


 精神年齢が10歳ほど低下するほどには恐怖を覚えていた。ホラー映画ですよ、これ。対象年齢15歳以上とかにしなきゃ映倫に目をつけられるよ。

 

「さっきから騒がしいけど、ディア―あんたなにしてんの?」


「ちょうどいいところに来た!頼むからお前もこのドアを閉めるのを手伝ってくれ!」


「どういうこと?ちょっと意味が分からないんだけど・・・」


「ごたごた言ってないで手伝ってくれ!お願いだベル、いやベル様!」


「ま、まあそこまで言うなら手伝うけど・・・ってあれ、あなたあの時の・・ミラさん?」


「あ、ベルティアさん!お願いですから、お話だけでも聞いていただけないでしょうか・・・」


 ん?なんでこいつら親しげなんだ?シンプルな疑問なんだが・・


「お前ら知り合いだったのか?じゃあ、ベル頼む!こいつにお引き取り願ってくれ!」


「いやよ。だってこの人私に、ディア―を紹介してくれた人だもん」


 そこで俺に電流走る―—!


 そういえば、初めて会ったとき、たしか、誰かに俺を紹介してもらったような言い方をしていたな!いや、でも俺はこいつを見たこともないし、名前すら知らない。なんでこいつ、俺のことを知ってたんだ?

 あれか、幼少期に親が離婚して離れ離れになってしまった系の妹だったりするのか?それとも。実は幼馴染だったとか―—


「いやいや、そんなわけないじゃないですか。夢見すぎですよ。気持ち悪い」


 なんで俺、初対面のやつにそこまで言われなきゃいけないんだ?意味が分からない。


「じゃあ、なんでお前は俺のことを知っているんだ?会ったこともないし、ましてや俺はお前のことをなにも知らない」


「ああ、それはですね、私の加護の力ですね」


 すると、横から食い入るように、ベルが割り込んできた。


「その加護ってどんな加護なの?」


「ここから先は、あまり他人に聞かれると面倒なので、家の中に入れて頂けませんかね?」


「ちょっと待て、そんなの俺がいくらでも検索でき・・」


「どうぞー汚い部屋ですがあがってください」


「それじゃ、お邪魔しまーす」


「おい!なに勝手に入れてんだよ!俺の許可はどうした!」


「だって、この家のお金払ったの私だもん!それくらいいいじゃない」


「ぐう・・」


 ギリぐうの音は出たが、それ以上はなにも返せなかった。



「わあ!外から見たときも思いましたけど、やっぱり広いですねー」


「そう?まあ、適当な椅子に掛けてちょうだい」


「失礼しまーす」


「で?話ってなんだ?手短に話せ」


「ちっ」


「舌打ちするな!」


「ちっ」


「くそ!ムカつく!」


「ディア―、あんた少し黙って」


「スイマセン」


「それで、話ってなに?」


「私の加護『嫉妬』の能力についてそこの『強欲』に聞きに来たんです」


「ちょっと待て。なんで俺の加護をお前がしってる?」


「それについても今から話すから少し黙っててください」


「俺の扱いひどくない?俺、これでも一応主人公だよ?ねえ、知ってる?」


「うるさい豆柴」


「それじゃ、話しますよ。すこし長くなるかもです」


 そう前置き、ゆっくりと話し始めた。いつかの俺のように・・・

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その大罪、『強欲』につき。 ~戦えない加護をもつ男は異世界で怠惰姫とスローライフを送るようです~ 水理さん @MizuRe

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