序盤は主人公の女の子と同じように二階の秘密にドキドキして、中盤以降は女の子の内面に触れていく構成が読みやすくて面白いと思いました。
古都京都を舞台に、母親から離れてひとりで暮すことになった思春期の少女が、魂の飢えに苛まれながら学生運動をさまようひとりの過去の娘との触れ合いを通じて、自身の明日へ踏み出して行く姿をていねいに綴りあげた純文学系ジュブナイル。ファンタスティックでヒューマンな圧巻のラストの感動を知るには、読者がじっくりと腰を据えて主人公と共に歩んで行く必要がありそうです。文章もレトリカルな装飾性の少ない素直なもので、内容を妨げません。何だか思わせぶりなタイトルの印象が、良い意味であっさりと裏切られました。