63 ほんと判りやすい
ダイアナはタバサの側面に飛び込む。サマンサの反対側、タバサを挟む位置取りだ。
タバサだけに狙いを定め、攻撃を繰り出す。
サマンサの移動にあわせ、タバサのみをターゲットにする。
相手もダイアナの狙いに気づいたようで、できるだけ離れた位置に移動する。
それでもダイアナはタバサのみを攻撃対象にした。
連続攻撃はさほどの有効打にはならない。
だがタバサは常に狙われている焦燥感をあらわにし始めた。
サマンサが移動攻撃の超技を仕掛けてくる。素早さの属性に見合った移動力だ。
回避はせず、腕でがっちりとブロックする。
攻撃力もかなりなもので、腕どころか体までもが衝撃に悲鳴を上げる。
それでもサマンサを無視してタバサを狙う。
何度かの攻防でサマンサの攻撃がかなり体にこたえる。
だがここで作戦変更をしてはただ不利になっただけだ。
ぐっとこらえ、チャンスを待つ。
タバサが大きく後退し、飛び道具を放ってきた。
待ってましたとばかりに「反射」を発動させ、タバサの闘気をそのまま叩き返す。痛みと悔しさを訴えるうめき声が上がった。
超技の隙を狙ってサマンサが跳び込んできたが、これも腕で受け止めてしのぐ。
ダイアナがサマンサに向き直ると、回復のチャンスと見たのだだろう、タバサが大きく息を吸った。
それも計算のうちだ。
サマンサを見据えたまま横っ飛び。タバサの腹に肘うちを見舞う。
連携ありきで動く相手には、一点集中で連携を崩してやればいい。
ダイアナの戦法が功を奏し始める。
それでもタバサを倒しきるまでは油断はできない。
基本的にサマンサには向かわず攻撃を仕掛けてきたらしのぐ、を繰り返す。
じりじりと追い詰められてタバサの顔から今はすっかり余裕が消えている。
ダイアナに蓄積しているダメージもかなりのものだが、根競べで負ける気はない。
痛みを振り切るように、にぃっと笑う。
やがて大きな――予想外の効果があった。
サマンサの攻撃が性急になってきた。
構ってもらえないのを騒ぎ立てる子供のように激しく、荒い。
無視をされてプライドが傷ついたか。
ならば、とダイアナはサマンサにニヤリと笑って言ってやる。
「ザコはおとなしくしておきなよ。厄介なヤツを無力化してから遊んでやっから」
「このわたしが、ザコだって!?」
「あんたの攻撃なんてちっとも効いちゃいない。アタシがタバサを相手にしているのにあんたがアタシを倒しきれないのがいい証拠だよ」
サマンサの顔がみるみる紅潮する。
「落ち着きな。判りやすい挑発に乗るんじゃないよ」
タバサが冷静な声で相棒をたしなめる。
ここで落ち着かれては困る。
「そんなに構ってほしいなら、ほら、幻影でも相手してろ」
「分身」を発動させた。サマンサの周りに三体、タバサの横に一体。
「そんなもの、全部吹き飛ばせばいい!」
サマンサは闘気を一瞬で増幅させ、解き放った。
ほんっと、判りやすい。
闘気を引っ込めたダイアナは上階を見上げながら笑いそうになるのを堪えた。
敵の周りに作ったのはすべて分身体で、本人は吹き抜けの下に移動していた。
ダイアナを見失ってうろたえる女達。
ダイアナは再びデイビッド作「跳躍補助靴」を作動させ、タバサのそばに浮き上がって蹴り飛ばした。
この調子なら、隠し玉である超技を使うまでもないなとダイアナは戦局を見積もった。
「サマンサ、落ち着きな。仕切りなおすんだよ」
タバサがサマンサに声をかけるがサマンサは聞く耳を持たない。
「うるさいよ。こんなヤツ、わたしひとりで十分なんだ。戦闘力の低いあんたはひっこんでな」
たしかに、タバサよりはサマンサの方が攻撃力がある。戦いに慣れているのも彼女の方だろう。
だがサマンサ一人では、ダイアナには勝てないという事実から目をそらしている。
「プライドだけ高すぎる相棒は厄介だね」
気の毒に、とタバサに皮肉を込めた笑みを送ってやる。
この一言が決定打となったようだ。
逆上したサマンサは持てる闘気をすべて解放した。彼女の体の周りが今までよりも明るい空色に包まれる。
これは、
ダイアナは素早くタバサの後ろに移動した。
タバサを盾にすればいくら何でも技を引っ込めるだろうと踏んだのだ。
だがサマンサの闘気は収束するどころか増幅している。
こいつ、仲間も巻き込むつもりか。
どうする? また下に逃げるか?
いや、この闘気量では下手をすると床が崩れる。
「あんたも身を守れ!」
タバサに忠告をして、ダイアナは来るべき衝撃に備えた。
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