第25話


「師匠、さっきのは……」


 彼らとは離れた位置にキャンプをセッティングしながら、私は先程のやり取りについて聞いていた。


「お互いに怪しくないですよーって身分を示し合うものよ。まあ、私たちは怪しいものなのだけど」


 師匠が自虐気味にそう言うと、ライラさんが説明を補足した。


「要は、信頼に足るとお互いに判断した場合一時的に協力して夜を過ごそうって話だな。アタシたちには無縁の話だ」


 世間のカナドラに対する考えを聞けば、確かにと思わざるを得なかった。相手を判断できる材料が肩書しかない以上、それがカナドラの人だと信用はしてもらえないのだろう。

 そんなことを考えていると、ライラさんがさらに信じがたい話を始めた。


「最悪の場合、夜を安心して過ごすために仕掛けてくる奴らもいるからな。今回はすでに日も沈んでるしそんなことはないだろうが」

「仕掛けてくるって、そんな……」


 どうして人間同士なのにと、私は思ってしまう。

 村にいた頃も、そして偶然出会った師匠とライラさんにも親切にしかされてきていない私には、他人を疑うという心がいまいち理解できなかったのだ。本当に人に危害を加える人なんているのだろうかと、そう思っていた。


「一応私とライラで交互に警戒するっていうことで、今日はもう休みましょう?ペリットちゃんも疲れたでしょう?」


 確かに師匠の言う通り、一日中歩いたことによる疲労感はすごいものだった。

 私は師匠の言葉に甘えるように、つかの間の休息を堪能したのだった。

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角の生えた少女 @YA07

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