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私のせいなのだろうか。
救急病院のロビーにはG藤とW倉の二人しかいなかった。たまに看護師が通りかかっては、気の毒そうな表情でこちらに一礼する。
私のせいなのだろうか。G藤は自らに何度も問いかけた。自分の小説のせいでL希が死ぬ? いや、ありえないありえない……文芸にそれだけの力があるとはとても思えない。
W倉もまた、柔らかいベンチに座りながら自らに疑問を投げかけ続けた。
こいつのせいなのだろうか。
G藤もW倉も、文芸の力というものを疑っていた。小説によって人間が死んでしまう、という事態がどうしても納得できなかったのだ。
しばらくしてG藤は、私のせいではない、という結論に達した。それから程なくしてW倉も、こいつのせいではない、という結論に達した。そもそもL希は初めから精神が不安定だったのだ。こいつの小説はせいぜい引き金となったに過ぎない。問題は火薬にこそある。彼らはそう自らを納得させたのだ。
そのとき、集中治療室から疲れ果てた表情のドクターが現われた。連日の夜勤のせいで顔が生白くむくんでいる。おそらく彼にとってはこの類いの騒ぎなど日常茶飯事なのだろう。
彼は二人に一礼すると、
「幸い命に別状はありません。明日には意識を取り戻すことでしょう」
と告げた。
「ありがとうございます!」
W倉は安堵の表情を浮かべて頭を下げた。続いてG藤も。
明朝。L希は、白いベッドに横たえられた自分の身体を発見した。四肢が動かない。私は死んだのか……いや、血の巡りが感じられる。生きている。
点滴の液体が体内に冷たく染み込んでいく。L希は重い身体をなんとか起こし、周囲に広がる病室を見回した。南側に窓が取り付けられている。窓の外には世界が広がっている。
外界をじっと見つめ、L希はそれを
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