第59話 だーれだ
幸せとは何だろうか。
その答えだが幸せとは.....多分何も無い事を幸せと呼ぶのだろう。
俺達は雪代先輩を奪還してから。
特に何事も無く過ごしていた。
だけどこの先も警戒はしなくてはならないだろう。
ずっと、だ。
あの大男が手を出してくるとは思えないが。
だけどそれでも。
「.....明日も平和に過ごせるとは思えないよね。何が起こってもおかしく無いから」
「そうだな。明日が平和なら明後日が平和とは限らないしな」
俺達。
つまり俺と千佳は公園に居た。
近所の公園である。
その場所で.....近所で買ったジュースを飲んでいた。
タピオカジュースである。
俺はパインジュースの中に浮いているタピオカを見ながら眉を顰める。
そして溜息を吐いた。
「.....全くな。何でこうも上手くいかないのやら」
「そうだね。.....ゴメンね。主にだけど私の親が.....」
「お前の親は関係は.....無いとは言えないけどそれを使ったのは雪代先輩の親だ。.....だからあくまで俺は勇以外にも問題があるって思ってる。千佳は何も考える必要は無いだろ」
「.....うーん。そうなのかな」
「ああ。俺は絶対にお前は悪くないって考えているから」
「有難うね。いーくん」
言いながら俺の手を握ってくる千佳。
俺はその姿を見ながら柔和に笑みを浮かべる。
それから千佳の手を握り返した。
今は.....これぐらいしか出来ないけど。
でも将来はもっと色々な事をしてあげたいものだ。
全てが解決してから、だ。
そんな事を考えていると背後に人影が。
それから俺の目を覆ってくる人影。
「だーれだ?」
「.....どう考えても雪代先輩ですよね。どうしたんですか」
「ちぇっ。面白く無いねぇ。千佳も何か言ってやってくれよぉ」
「もー。雪代先輩。私達は巫山戯れずに悩んでいますよ」
「.....そう思ってね。来たんだよ」
雪代先輩はそう話した。
それから俺達を見てくる。
真剣な眼差しだが柔和な感じで、だ。
俺達は、?、を浮かべて雪代先輩を見る。
すると雪代先輩は、君達には随分とお世話になったよね。だからお礼がしたくてね。みんなにもそうだけどお礼して回っているんだ、と話した。
その言葉に俺達は目を丸くする。
「はいこれ。有名なお菓子なの」
「.....これは.....嬉しいですね」
「確かにね。いーくん」
「君達に金や銀をばら撒いても良いけど多分受け取らないだろうからこれにしたよ。マイナーな感じのお礼だけどね」
「.....いえ。雪代先輩。十分です。これで俺達に気持ちが伝わってきます」
俺達は顔を見合わせて笑顔を浮かべる。
そして雪代先輩を見る。
そうか、と雪代先輩は笑みを浮かべる。
それから、時にイスカ。君には本当に感謝しかないよ。連れ戻してくれて有難うね。私なんかを、と言ってくる。
やはり私はこちらの世界が好きだ。
日の当たる世界がね、とも。
「.....雪代先輩にも腹立ちますよ。俺」
「分かってる。何の相談も無く行ってしまった事が、だろう。すまない。頭を下げても良いぐらいだ。土下座でもね」
「.....そこまでしなくても良いですが.....でも相談してほしかったです。そんなに頼りになりませんかね」
「正直.....怒りに塗れていたからね。だからそんな隙が無かったんだ。ゴメン。本当に信頼しているけど.....でも君達を危険な目に遭わせたくはなかった」
「そうですか.....」
俺達は雪代先輩を見る。
雪代先輩は、ベンチに座っても良いかい、と言ってくる。
俺達は席を空ける。
すると雪代先輩は草木がくっ付いたものを払ってから。
そのまま俺の横に腰掛ける。
「イスカ。君に特に迷惑をかけたく無かったんだ」
「.....え?」
「君はもう中心なんだよ。私なんかよりもみんなの心の中心だ。だから君に死なれては困るんだよね。だから敢えて相談しなかった、とも言えるんだ」
「相変わらずですね。雪代先輩は」
「そうだね。.....まあ.....これが私だから」
雪代先輩は苦笑する。
俺達も苦笑しながら雪代先輩を見た。
雪代先輩は、でもイスカ。今ならしっかり言えるよ。もし良かったら照魔もそうだけど守ってほしい。私もそうだけどね、と話してくる。
その言葉に俺は深く頷いた。
「当たり前です。俺達は守りますよ。雪代先輩を。大切な仲間として」
「.....有難うね」
「私も過去を反省して守ります。貴女を。雪代先輩」
「千佳も有難う。本当に感謝しかないよ」
そんな感じで言葉を交わしながら。
俺達は話していた。
すると雪代先輩は、勇と私の親父は同級生か何かだった様だ。だから信頼していたんだろうな。技術とかの面で、と言い出す。
俺はその言葉を重く聞く。
「正直。私の拘束用具まで影響してくるとはね勇は。変な方向で天才だね」
「お父さん.....じゃなくて勇はまだ拘束用具を作ってました。だからまだ出て来るかもしれないです。電流が走る装置とか」
「何でそっち方面で天才になっちゃったのかね。ハハハ。その力はきっとみんなを助けれると思うのに」
「分からないですね。.....確かに」
悪は結局、悪にしか力を使わないんだろうね。
と言いながら目線をズラす雪代先輩。
俺達はその姿を見ながら顔を見合わせる。
そうしていると俺のパインジュースを雪代先輩は強奪した。
それから一気飲みする。
オイ!?
「まあ暗い話をしてもしゃーない。何か進展があったらまた言うよ。アハハ」
「雪代先輩。それ俺のジュースです」
「良いじゃないか。ハッハッハ」
それから俺の頭の髪の毛をグシャグシャにしてくる雪代先輩。
そして満面の笑顔を浮かべた。
俺達は苦笑しながらその能天気な顔を見る。
澄み渡っている様なそんな顔だった。
何だか安心感がある。
「何も迷惑を掛けない様にする。だけどいざとなったら宜しく。私1人じゃ対応出来ない可能性があるから」
「.....はい」
「ですね」
そして俺達は暫く駄弁ってから。
そのまま見合っていた。
笑みを浮かべながら、だ。
とにかく何も起こらない事を祈りたいものだ、と思いつつ。
義妹の友人の家庭教師になった俺、義妹に嫉妬される。.....何でか分からないんだが? アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou
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