第3話

 二日後。


『ハロー、ドライゼ。聞こえてるかい』

「・・・・・・何故そんなテンションが高いんです、姐さん」

 

 通信機越しに聞こえるのは、聞き慣れた少女の声。・・・自分は頭を抱えた。いくら見目麗しい少女でも、その興奮した声(通信機の音割れ付き)は、寝不足の頭には些か辛すぎる。


『聞いてくれるか!!』

「・・・何です」

『プレゼント!!あの朴念仁がプレゼントをくれたんだ!!』

「・・・へえ」 


 きっと、いや間違いなく、数十年来のパートナーの話だろう。そしてそのパートナーは、自分の命の恩人でもあった。


「何をくれたんです」

『メドヴーハ!!酒屋のセール品!!』

「・・・それ、喜んで良いんですか」


 我が命の恩人は情には厚いが女心に酷く疎いことは、随分前から知っている。それにしても、『約四半世紀の間連れ添ったパートナーへのプレゼントとしてそれは果たして適切なのか』と、疑問を抱かずにはいられなかった。

 ・・・最も、普段クールビューティで通している彼女が、現にここには居ないのだから、成功と言えば成功なのかもしれないが。決して参考にはしないようにしよう。

 ――それよりも。


『それで・・・やれそう、ルーキー君?』

「まあ、問題ないかとは思いますが」


 ――今から大量殺人へ赴くとは、とても思えない雰囲気だ。最もこれはいつものことらしい、新参者たる自分が慣れていないだけで。


『いやあ、それは良かった。ルーキー君にはちょっとばかり荷が重いかとは思ったんだけど、任せて正解だったよ』

「・・・どうも」

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ドライゼの憂鬱 猫町大五 @zack0913

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