誰でも魔法が使える「魔薬」が炙り出す人間模様。

 主人公は「魔薬」を取り締まる部署にいる男だ。「魔薬」とは、誰でも魔法が使えるようになる「違法な薬」の事である。つまり、魔薬取り締まり班の一員が主人公である。
 あるサーカス団で違法魔薬が使われているという情報で、主人公は相棒の刑事とサーカスを実際に見に行く。そこで目にしたのは、動物の大きさを変えられる猛獣使いや、紫の炎と戯れる踊り子などの特殊なものだった。あきらかに魔薬の気配がする。しかし、決定的な物は抑えられず……?
 主人公は公園で、サーカス団の踊り子に憧れる一人の少年と出会う。そして主人公はこの少年の事を、サーカス団の踊り子に教える。自分を目標にひたすら頑張る少年に、踊り子は……。
 
 「違法麻薬」という単語から「違法魔薬」と読み替えて、世界観を構成する物語に、目を見張りました。こんな発想は、誰でもできるわけではないので、感服でした。また、薬に魅了された人々と、主人公のやり取りが、人間の本質的な部分を炙り出し、ラストに至ったのは、本当に素晴らしかったです。


 是非、御一読下さい。

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