第四章
第26話 不自由の対価は
薄い緑色のカーテンの隙間から入る日光の眩しさ。まず初めに感じたのはそれで、その次は『ここ、どこ?』
まるで映画みたいだけど、壁掛け時計が示す時間は午前10時。電子盤には火曜日と表示されている。
…………火曜日の10時。いや、講義じゃん!?
普通に寝坊しちゃってるし。足利先生、結構採点とか厳しいから、ちょっとこの欠席はキツイかも?
昨日夜更かししたっけ。頭がズキズキするから、あき君とお酒でも飲んだのかな?
あき、くん…………
何だか嫌な気分。病みそう。てか、結局ここどこ。あき君の家でもないし、ラブホでもなさそうだし。え、もしかして、知らない人と…………ああ、病む。
「え!?」
引き戸を開けて入ってきたナースさん?がビックリ仰天してる。修羅場とかじゃないですよね?
「先生!!!」
うん、何となく気づいてた。ボク、いつの間にか病院に運ばれてたみたい。ホントに病んじゃったのか。
*****
「佳乃さん、どこか違和感はないかな?」
いかにも医者って感じの中年のオジサンに年頃の身体をべたべた触られるのはマジで病みそうだったけど、違和感と言えば
「ちょっと頭痛がするのと、上手く起き上がれないんです」
女の子の日だったとしても、動きたくないではなく、筋肉が言う通りに動いてくれないは今まで無かった。
もしかして、僕の身体、本格的にヤバい?
「ともかく、ご両親に」
独り言なのかナースさんに言ったのか分からない言葉を呟いて出て行った。
ま、病気なら、堅物な教授でも公欠にしてくれるでしょ。
「何かしてほしい事があったら、気にせず言ってね」
「あ、ありがとうございましゅ」
「ふふ」
呂律も回らないじゃん。いくら美人なナースさんだからって、こんな噛み方してたらただの童貞みたいで恥ずかしいよ。
というか、上手く身体が動かせないし、頑張ろうとしたらメチャクチャ大変。
かのちゃん大ピーンチ!、だよ。
「佳乃!」「良かった!!」
流れるように入ってきたのは、紛れもないボクの両親だけど、何だかとっても老けたみたい。お父さんは白髪が目立つし、お母さんもシワが隠しきれてない。
「分かるか、父さんだぞ!」
え、なにこれ。ボク、今生まれてきたの?かのちゃん、赤ちゃんになっちゃった?お母さんも号泣してるし。異世界転生とかなら、最近流行ってるらしいけど、生まれ直しって聞いた事ないよ。
「佳乃さんには、まだ」
「そ、そうですか」
大人の会話に混ぜてもらえないのは、ボクが子ども、いや、赤ちゃんだから?
…………それとも難病にかかったから?
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