謝罪会見
第百三回全国高校eスポーツ大会和歌山県予選Fable Nights 決勝の共同-聖マリオンの試合において、共同のタンク高山護人選手が行った反復的屈伸運動に対し小山田道江審判長が侮辱行為として退場処分を下した件につき、全国高校eスポーツ連合は本日、これを不当な取り扱いだったとして都内で謝罪会見を開いた。共同高校による異議申し立て後、連合理事長である伊那川敬人氏が公の場で発言するのは初めて。「行き過ぎた前例主義」が今回の事態を招いたと反省し、今後へ向けて「高校eスポーツ全体のアップデートが必要」と語った。高山選手に直接会って謝罪することも、この日から始まった日中韓高校代表親善試合の期間中に行いたいとする考えも示した。以下、伊那川氏の発言や質疑応答の要旨。
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(アイボリーのスーツ姿で会場に姿を見せた伊那川氏は、37秒間カメラに向かって陳謝、顔を上げたのち、再び25秒間陳謝)
「まず初めに、今回不当な扱いを受けることとなった高山選手、並びに共同高校の関係者各位に、深くお詫びいたしたいと思います。申し訳ありませんでした」
(用意した文章を読み上げる)
「第三者委員会および内閣府からご指摘いただいた指導内容を真摯に受け止め、高山選手、共同高校、その対戦相手である聖マリオン高校、全国の学生eスポーツ協会関係者、また、内閣府をはじめとする関係省庁、さらにこれまで学生eスポーツを応援してくださった国民の皆さまに多大なご迷惑をおかけしたことを心からお詫び申し上げます。まことに申し訳ありませんでした」
「かかる試合の裁定につきましては、当初、学生eスポーツの場における教育的指導の一環と認識しており、私をはじめ理事会執行部は現状確認を怠っておりました。5月26日付けの共同高校eスポーツ部による異議申し立てを受け再調査を行いましたところ、著しく不当な裁定であったと現状を改めて確認し、改めて裁定を撤回、謝罪表明をさせていただくものです」
「8月25日の理事会において小山田審判長の解任の決議がなされ、9月3日の評議員会にて正式に決まる運びとなります。また、睾丸を対戦相手の顔面付近に押し当てる又はそれに相当する屈伸運動、所謂ティーバッギング行為への制裁禁止につきましては、不文律化している現状を重く受け止め、今後有識者会議にて規定見直しを行い、来年度の学生eスポーツ憲章にも反映する所存です」
「改めて、高山選手、共同高校に対して、まことに申し訳ありませんでした」
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(以下、質疑応答)
-第三者委員会、内閣府に指摘された事実とはどのようなものだったのか。ご自身としてはそれをどのように受け止めているか。
「両機関ともに大会運営から指導者育成に渡り多岐に及んでご指導いただいたため、ここで簡潔に詳細を申し上げるのは難しいが、大まかに言って『現代eスポーツにおいて屈伸運動を即、侮辱行為とみなすのは行き過ぎなのではないか』ということ。睾丸を対戦相手の顔面付近に押し当てる又はそれに相当する屈伸運動、所謂ティーバッギング行為への退場処分については前回適用された事例が48年前ということもあり、屈伸に侮辱的意味合いがあるということを現代の学生に一般常識として求めるのは無理がある、とのような旨のご指摘をいただき、全国高校eスポーツ連合理事会としても裁定不当で賛成多数と相成った、ということになります」
-先ごろから続く全国高校eスポーツ連合の旧態依然が招いた問題との批判の声も多い。学生スポーツ全般に蔓延る武士道精神的な考えの影響との指摘もあるが?
「このような事態を招いた以上懸念の声があるのは当然ですが、連合に武士道精神的な考えがあるとのご指摘は当たらない。皆、eスポーツを通して学生の健全な発育に貢献すべく日々邁進しております。一つ全e連に特別な事情があるとすれば、それは日本国におけるeスポーツ普及の歴史的経緯で、競技化やレクリエーション化に傾倒する他組織と比べると、学生スポーツとしての教育的実践を重視する想いが強い。2020年代のゲームバッシングの時代を越えてビデオゲームが学生スポーツとして我が国に定着した背景には、その教育的意義を粘り強く教え広めた先人の努力があり、青少年に悪影響を及ぼすと取られかねない事象については今なお強い拒否感がある。先の小山田審判長の裁定も、そのような考えによるものだったのではないか」
-連合としては小山田審判長の裁定に一定の理解を示すとのように聞こえるが?
「あくまでそのような歴史的背景があると申し上げたまでで、裁定については不当としか言いようのないものだった。その事実は揺るぎようがない。誤解を招く表現だった、重ねてお詫び申し上げる」
-睾丸を対戦相手の顔面付近に押し当てる又はそれに相当する屈伸運動、所謂ティーバッギング行為について、連合の解釈はどのように変わったのか?
「行為そのものへの解釈は変わっていない。変わったのは、どこからどこまでを侮辱行為に含めるのか、という基準。そもそも睾丸を対戦相手の顔面付近に押し当てる又はそれに相当する屈伸運動、所謂ティーバッギング行為はカウンターストライク等の初期FPS競技で見られた非紳士的行為で、一世紀ほど前には敗者に対する最大級の侮辱として広く一般に知られていた。その意味するところは『倒れた敗者の口元で複数回屈伸を繰り返すことで、まるでティーバッグをカップにつけるように相手の顔に睾丸の接触を繰り返してやるぞ』というもの。また、同時多発的な例として、大乱闘スマッシュブラザーズをはじめとする古典対戦格闘ゲームのように屈伸そのものが対戦相手を挑発する行為と見做されていたケースもある。スポーツマンシップに反する事実は疑いようがなく、また、時代性に左右されるものでもないと考えている」
-睾丸の接触を揶揄していると思われる屈伸行為と、そうではないと思われる屈伸行為を分けて裁定する、という理解でよいか?
「ご指摘のとおり。元よりこうした屈伸行為は、黎明期のeスポーツにあって操作形態が現代より制限されていたことに端を発するもの。先の初期FPS競技を例にとれば、そもそもゲーム中にプレイヤーに許される動作が移動、ジャンプ、射撃、投擲、加えてしゃがみ込み等しかなく、対戦相手に特別なメッセージを伝えようと思えば、無意味に立ち・しゃがみを繰り返すことで自らを異様に見せるしかなかった。古典対戦格闘ゲームも同様で、ゲーム中に無意味かつ異様な行動をしようと思えば立ち・しゃがみを繰り返すしかなく、制限されたゲームルールが生み出した侮辱という側面が強い。一世紀前の環境が作り出した礼儀を、環境の変わった現代にそのまま適用すれば、当然不都合も出てくる。理念を変えず、制度を変える。学生eスポーツが現代化する上で、良いものは良い、悪いものは悪いとの取捨選択は避けられない」
-侮辱的な屈伸行為とそうではない屈伸行為を分ける基準は、今後どのようにルールとして整備される見込みなのか?
「当該屈伸行為の裁定は、侮辱意図があるかないかで決まる。より正確に言えば、その屈伸行為が睾丸を対戦相手の顔面付近に押し当てることを揶揄する意図がある、もしくは客観的に見た場合にそれを模しているだろうと思われるかどうか、その点に集約される。実際の運用ではケース毎の判断になるため厳密な定義の言及は避けるが、ようはこれまでは屈伸運動に見える動作全てに注意勧告が行われるのが通例になっていたところ、これからは屈伸運動の行われたであろうその意図を各審判が判断する、ということ。ルール的には、学生eスポーツに関する規則の第76条『非紳士的行為に対する注意勧告』に、今述べたような文言が加筆される。裁定自体は同条の処分がそのまま適用される。対象となる行為がこれまでは現場の運用で不文律化していたところ、ある程度まで明文化しようという試みになる」
-説明に具体性を欠いているように思われる。例として、先の共同-聖マリオン戦における高山選手の屈伸運動について、これに睾丸を接触する意図がなかった、不当な裁定と結論づけるに至った経緯を知りたい。
「今回の処分は理事会における多数決によって支持されたもので、各理事本件に対する見方はそれぞれ異なるということをまずご理解いただきたい。その上で一理事としての私の意見を申し上げれば、先の共同-聖マリオン戦における高山選手の屈伸運動については、不可抗力によるものであったように見受けられた。聖マリオンのアタッカーの南選手が先陣を切って共同サイドに攻め込んだところ、タンクである高山選手がガード及びテイクダウン。聖マリオンはアタッカー二名体制のチームだったが、もう一人のアタッカーである矢田選手は南選手のダウンを見て自陣に急速ロールバックした。矢田選手は小柄で速く、高山選手からすれば身を屈めるのと様子を窺うのを素早く行いたかったのだろうと思う。だが結果として、それは倒れた南選手の顔面の上で行われた屈伸であり、距離をとって逃げる矢田選手に向かって行われた屈伸になってしまった。聖マリオンの監督八千代氏が即座に審判にタイムを要求したのも、客観的に見てやむを得ない判断であったとは思う」
-高山選手に侮辱意図が無かったと判断した決め手となったものは?
「5月26日の異議申し立てより1ヶ月間、高山選手及び南選手・矢田選手へのヒアリングを行った。結果から言えば、三選手ともに、倒れた敗者の口元で複数回屈伸を繰り返すことが、ティーバッグをカップにつけるように相手の顔への睾丸の接触を繰り返す行為を意味することを知らなかったから、ということになる。南選手は顔の上で屈伸を繰り返されたことについて、『負けた悔しさはあったが、顔面に相手の股間が数回接近したことについては、その瞬間は特に思うところはなかった』と回答。矢田選手は『相手の顔面付近での屈伸が、睾丸を押し当てることを意味するとは知らなかった、今回の件はとても勉強になった』と回答している。高山選手は『自身の勉強不足、屈伸に屈伸以上の意味があることを知らなかった、多くの人にご迷惑をおかけしたが、対戦相手を侮辱する意図はなかったことだけは分かってもらいたい』として、聖マリオン高校側に調停の申し入れを行い、受理されている。全e連としては、既に解決された問題に介入する権利を持たないというのが最終的な見解」
-今回の事案は全e連の過度の礼節重視が招いた出来事だったとの批判がある。市井の声に対し、全国の学生eスポーツ関係者は不安を感じている。全e連として今後のプレイマナーのあり方についてどのようにお考えか。
「まず誤解しないでいただきたいのは、全e連はあくまで全国にある高等学校のeスポーツクラブの事務作業や大会運営を行なっている組織であり、それを監督する立場にはなく、又そのような権限もないということ。全e連が行う処分はこちらの管轄下にある大会の参加規定に関するもののみで、各学校でのゲームの遊び方は各学校の自主性に任されており、当然責任を負う立場にもない。新聞各社の報道を見る限り、我々が各高校に睾丸を対戦相手の顔面付近に押し当てる又はそれに相当する屈伸運動、所謂ティーバッギング行為への厳重注意を求めていると思われているようだが、そのような事実はなく、明文化されてもいない。睾丸を相手の顔面に押し当てるような真似をしてはいけないという指導は、一部各学校でプレイマナーの一環として自発的に教えられているだけのものであり、その点だけはよくご理解いただきたい」
-責任は無いとの弁明に聞こえる。今回の事案における全e連の責任はどこにあるとお考えなのか。
「そのように聞こえたのなら申し訳ない。初めにお詫び申し上げたとおり、当然に全e連にも責任はあり、それは痛烈に感じている。まず一つは屈伸運動のなんたるかを現場判断に任せ、明確な指針を出さず、結果として学生eスポーツ憲章並びに学生eスポーツに関する規則以外のもう一つのゲームルール『暗黙のマナー』の横行を放置してしまった。和歌山県予選以降、対戦相手から屈伸運動を引き出すプレイング・睾丸が顔に押し付けられたかのように見せかけるプレイングが既に複数ケース見られ、退場処分を狙った屈伸運動を巡る駆け引きは学生eスポーツ全体に戦術として知れ渡ってしまった感がある。仰向けのままでの不要なスライディング連発や、相手をしゃがませる為だけの当てるつもりのない爆発物投擲など、見るに堪えない。全e連には、学生eスポーツの運営者として現状を是正していく責務がある」
「第二に、若者の貴重な成長の機会を損なわせてしまったこと。これについては全責任が全e連にあると考えており、忸怩たる思いがある。百年の伝統を誇る全国高校eスポーツ選手権は、日本の多くの学生eスポーツプレイヤーにとって憧れの舞台。高校3年間という貴重な青春の全てを賭してこれに臨む選手も少なくない。学生eスポーツの本分は、ビデオゲームを通じた青少年の健全な育成にある。それをあのような形で大会から退場させるということは、ビデオゲームのルールから考えても、教育的視点から考えても、スポーツマンシップにとっても、あってはならないことだった。非常に心苦しい限りだが、現場で一度下された審判は、他の選手の利益保護の観点からも覆すことが出来ない。高山選手並びに共同高校eスポーツ部の名誉回復のため、職員一同大会記録の修正をはじめ、出来うることは全て取り組んでいきたい」
「第三に、本件を通じ、全e連の言動が国民の皆様に著しく不快感を与えてしまったこと、なによりこれを心よりお詫びしたい。小山田道江審判長による『ビデオゲームは礼に始まり礼に終わる』発言や、一部理事による『無知を通せば無礼がひっこむ社会で良いのか』発言など、被害にあわれた人々の心情を理解しているとは思いがたい発言が相次ぎ、全e連全体の信頼を大きく損なう結果となった。先日既に辞任された四方田元相談役の『半世紀前なら垢BANされてSNSも炎上してた』発言が示す通り、既に半世紀前の価値観となったマナーで現代のゲームプレイを裁こうというのはそれ自体が時代錯誤。睾丸や局部の持つ意味もかつてとは大きく変わっている。これが全e連に与えられた国民の皆様からの最後のチャンス、組織変革の機会と捉え、不退転の覚悟で取り組んでいくほかないのではないか」
-伊那川理事長御自身をはじめ、執行部の進退についてはどのようにお考えか。
「現状では自身の進退につき特段の予定はない。責任を投げ出さず、与えられた職務を全うし、問題解決に粘り強く取り込むことこそが、高山選手、ひいては学生eスポーツ界に対する一番の贖罪になるのではないかと考えている。私自身、学生時代からビデオゲームが好きで、ビデオゲームのためにこれまでの私の人生があった。ネバーギブアップ。タイム尽きるまで。何事も途中で放り出すことが最も良くないことだというのが、私がビデオゲームを通して学んだ最も大きな教訓。このようなことを言えばマスコミの皆様にまた『精神論じゃないか』と言われてしまうかもしれないが、それが私の偽らざる本心。これは他の執行部役員も同様で、現状皆さんの進退について何か予定があるとは伺っていない。無論、全e連の人事は47都道府県の高校eスポーツ連合による民主的手続きで決まるもので、『伊那川はビデオゲームのためにならない』『伊那川は教育に悪い』との声が多数上がれば謹んで退任させていただく」
-現状では形式上責任をとるための処分は行われないという認識で間違いないか。
「お話が前後してしまうが、執行部役員に関して言えば、目の前の問題解決、これに粉骨砕身の覚悟をもって臨むことそれ自体が処分にあたるという認識でいる。規則上の処分ということであれば、8月25日の理事会をもって小山田道江審判長の審判長職が解かれ、降格及び6か月の停職とした処分がそれにあたる。また、本件処置の最終決定者であった和歌山県高校eスポーツ連合の新見正連合長が、一連の問題の責任をとって次期連合長選への立候補権限停止処分、および全国高校eスポーツ連合執行部役員選挙の参加停止処分を受ける予定だったが、先月20日に体調不良を理由に当該役職を引退されたため、実質的に処分は行うことが出来なくなった。これは全e連から見れば、処分対象者が既にいない。身内に甘いとのご意見を多数いただいている現状についても承知している。既にしかるべき対応は行い、現在はそれを遂行する段階にあることをご理解いただきたい」
-ビデオゲームを遊ぶ子を持つ全国の親御さんは心配している。問題解決に向けて今後学生eスポーツではどのような改善が行われていくのか、より具体的な指針を説明していただきたい。出来うる範囲で問題ない。
「有識者会議でも綿密な協議を行ったが、睾丸を対戦相手の顔面付近に押し当てる又はそれに相当する屈伸運動、所謂ティーバッギング行為が学生eスポーツの『暗黙のマナー』における氷山の一角であることは概ね理解が一致している。ようは死体蹴りはいかがなものなのかということ。教育的ビデオゲーミングは対戦相手へのリスペクトが欠ければ成り立たない。それでは、長いビデオゲームの歴史が作り上げてきた敗者へのリスペクトを欠くとされる多くの侮辱行為について、どのマナーをどの程度まで学生eスポーツの場で厳しく見定めるのか。その明文化をしなければ、大昔の知らない慣習に両の手足を束縛され、学生たちが満足にゲームが自由に遊べなくなってしまうのは火を見るより明らかでしょう。一口に死体蹴りと言ってもその意味するところは様々で、ゲームによっては有用なものもあれば侮辱でしかないものもある。その線引きを確固たるものにすることこそ、我々に課された責任と考えている」
-不勉強で申し訳ないが、今のお話の中に出てきた"死体蹴り"とは一体どのような行為を指して仰っているのか?
「あー……(10秒ほどの思案)概ねゲーム中における敗者を侮辱するような行為と考えていただいて問題ない。死体を蹴るという行為そのものではなく、なんと言ったらいいか、敗者に対して鞭を打つような、唾を吐きかけるような、そうとられても仕方がない行為全般のことだ。ビデオゲームは歴史の長い文化であり、黎明期には敗者を侮辱するために様々なスラング的行為が生み出され、文化として成熟する中で度々これを禁止してきた背景がある。中には負けた者の死体がその場に残り、アクションとしてキックが可能で、そこから転じて死体を蹴ることの出来るゲームもあった。単に設定ミスでそうなっていたものもあれば、死体を蹴ることがゲームの戦術の一部となっている場合もあり、これらを総じて許す・許さないの議論に持っていくのは繊細さを欠くため、一つ一つのゲームにおける行為の意図を再度見直さなければならない、見直していこうというのが当座の考え。これは有識者会議でもご指摘いただいたことで、我々としてもその洗い出しは今後の最優先課題だと考えている」
-今回の件を受けて、全e連が許す侮辱行為と許さない侮辱行為がリスト化される、との意思表明と捉えて問題ないか? その場合"死体蹴り"はどう判断される。
「何故そのような解釈になってしまうのか理解に苦しむ。侮辱行為に許すものと許されないものがあるという二元論ではなく、ましてやそれを我々が最上段から決めようという誤解は当たらない。マスコミの皆さんには申し訳ないが。あくまで、一般的には侮辱行為とみなされる行為が、伝統的に戦術の一部と受け入れられているゲームも存在するという事実を申し上げたまで。例えば1999年リリースの餓狼-MARK OF THE WOLVES-ではKO後も対戦相手を殴り蹴り出来るが、これは次のラウンドにゲージを少しでも稼いでおくという戦術として認められており、侮辱行為以上に相手への敬意、全力で戦っている証明ともなりうる。MOWは全国に10~20のクラブがあり、現在もなお競技会が例年開催されているタイトル。全e連としては、現在学生eスポーツに関する規則に正式種目として登録されている271の全ゲームタイトルの精査も含め、PTA・研究機関とも相互連携しながら絞り込みを行っていく」
-理事長御自身は、"死体蹴り"にもゲームルール上納得できるものと納得できないものがある、とお考えになっていると捉えて問題ないか?
「私個人の見解ではなく、全e連組織の見解として、概ねその通り。であると思います。はい。(隣席の戸川あずみ理事と30秒ほど相談)良い、悪い、ではなく。我々が善悪の基準を定めようというお話ではなく、あくまでゲームに受け入れられている伝統があると、そういった戦術を攻略法として明文化する必要もあるだろうと、有識者会議の先生方からもご提案を受けたもの。侮辱を許すとか許さないとか、これはビデオゲームに関心の薄い皆さんには違いが分りづらいことなのかもしれないが、そういうことではなく、きちんと、ゲームルールから行為の意図を読み取ろう、読み取っていきましょうというお話で。私は先ほどからそういうことを言っております。はい。(隣席の戸川理事から耳打ち)えーと、今更言うまでもないことではありますが、全e連としては、ビデオゲームにおけるいかなる侮辱行為も許すものではありません。そこだけは声を大にして申し上げたい。マスコミの皆さんには大変申し訳ないが、その、あまり"死体蹴り"という言葉の文字面を論うのはやめていただきたい」
-最後に、今回被害にあわれた高山選手、共栄高校に対してコメントがあれば。
(用意した文章を読み上げる)
「えー、 第三者委員会および内閣府からご指摘いただいた指導内容を真摯に受け止め、高山選手、共同高校、その対戦相手である聖マリオン高校、全国の学生eスポーツ協会関係者、また、内閣府をはじめとする関係省庁、さらにこれまで学生eスポーツを応援してくださった国民の皆さまに多大なご迷惑をおかけしたことを心からお詫び申し上げます。まことに申し訳ありませんでした」
(伊那川氏、原稿の取り違えが起きていることに気付かず、謝罪会見冒頭と同じ文章を1分ほど読み上げ。戸川理事の耳打ちにより取り違えに気付く)
「あっ、大変失礼いたしました。誠に申し訳ない。えー、すみません。改めて。この度の第百三回全国高校eスポーツ大会和歌山県予選Fable Nights 決勝の共同-聖マリオンの試合におきまして、共同のタンク高山護人選手が行った反復的屈伸運動に対し小山田道江審判長が侮辱行為として退場処分を下した件につき、全国高校eスポーツ連合は不徳のいたすところと深く反省し、責任を痛感しております。これにより被害にあわれた全ての皆様方へ、改めてお詫び申し上げますとともに、高山選手、共同高校の名誉回復に向けてより一層の努力に励む所存です。これまで学生eスポーツを応援してくださった関係者、保護者の皆様、そして全てのeスポーツプレイヤーの皆様方。まことに申し訳ありませんでした。」
以上
2126/08/24
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