第3話
今日、陽平はある人に気持ちを伝えようと心に決めていた。クラスメイトの月本光――陽平が片思いを続けている人だ。
高一の時に同級生になり、えくぼがチャーミングなチョイポッチャリ系の彼女に直ぐに一目惚れ。彼女が友人と話す口調、ノートやプリントを手渡す際の細やかな気配り等、知れば知るほど惹かれていった。二年次のクラス替えで、彼女と同じクラスになれた時の喜び様は語るまでもない。
――タイミングは放課後――。
「二号館の屋上に来て」
LINEで手短にメッセージを送って、彼女を屋上に呼び寄せ、後は気持ちを伝えるだけと脳内シミュレーションを行い、心の準備をする。
――全ての授業が終わり、放課後。陽平は足早に屋上に移動して、LINEを送る。
「頑張れ~俺~」
自らを『詩』で激励し、気持ちを整えようとするが、心臓の高鳴りだけはバクンバクンとどうにもならない。
「太田君、どうしたの?」
数分後、月本さんが屋上に来てくれる――陽平が大好きな笑顔を振り撒きながら。
「あのさ、伝えたい事があって……」
「何かな?」
「す……す……好きです……」
「えっ、何⁉ 何て言った?」
陽平は言葉で上手く気持ちが伝えられずに悪戦苦闘していた。滝の様な冷や汗を掻きながら、良い方法はないかと思案した結果、やはりこれしかないと迷いを捨て、能力を発動――。
「貴方が~~~大好き~~~~~」
陽平はありったけの気持ちを込めて、力強く大きな声で『詩』を発動させる。
「うん、いいよ!」
月本さんから快い返事を貰った陽平は、胸の高鳴りと、能力発動による代償の相乗効果で、心臓に大きな影響を与えてしまう。
「ドキン、ドキン――」
張り裂けんばかりの心臓の鼓動が治まらない。
そんな状態でも、陽平は全てを成し遂げられ、心が満たされていた。
何故なら、太田陽平の気持ちを、好きな人に真っ直ぐに伝えるのは『詩』、それ以外の方法は見つからなかったのだから――。
『詩』で伝えた気持ちは本物⁉ @janu118kamo
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