グリッターズ

あんちゅー

ほら、光るよ

「ほら僕を見てごらん、キラキラ輝いて見えるでしょ?

 美しきもの他になし

 グリッターONE 美無最(みなも)」


「バラの花には刺がある、私は持たないそんなもの

 全てを等しく愛することこそ望まれるべき美しさ

 グリッターTWO 愛望美(あとみ)」


「筋肉こそが力の象徴、筋肉こそが美しい

 我が肉体こそ象徴としての美を備えたまった彫像よ

 グリッターTHREE 美偶像(みくぞう)」


「えっと・・・・・・

 あ、空を見て、星のような美しさ

 ぐ、グリッターフォー 美星(みらい)」


「ふむ、よし3人はもう自由にしていいぞ。

 ただし、美星だけ残れ。解散」


「ありがとうござました。」


 3人は今日も楽しかったね、なんて会話をしながら明らかな嘲笑を向けながら、僕の後ろを横切っていく。


 分かってる、分かってるんだ本当は。


 彼らが僕を見下していることだって。

 わざわざ後ろを通って行くのは僕を影で笑ってることを分かりやすく隠している証拠だ。


 直接いじめられないだけよしとしよう、とかそんな話じゃない。

 陰口や知らないところで笑われる。それも言われている本人が分かっているということがどれだけストレスなのか、あの3人はまるで分かってない。


 全然美しくないじゃないか。


「どうした?美星、お前はもっとできる子だ。自信が無いか?」


 長官はそう尋ねる。


「そんなものありませんよ」


 即答する。

 それはそうだよ、悔しいけれど僕がここにいられるのは名前に美って文字がつくからだ。それだけで選ばれた人間だなんて言われて、ちやほやされてここに連れてこられて、僕はそんな人間じゃないのに。


「何を弱気になる。お前は選ばれた人間なんだ。」


 近代から現代にかけて、人は美しさをしばしば探求することに精を尽くした。

 その結果大勢の孤児や大量の不出来と銘打たれた芸術品が生まれた。それらはその他多くの美が洗練されると同時に吐き捨てられた産物だ。

 美を追求するということはそれ以外の価値観の廃棄である。

 結果、廃棄されていった多くのものの人権や価値が無いに等しいものとなった。


 それは生活が困窮する人達を容易に作りだした。


 彼らはある先導者によって導かれて、多くの国で戦いを始めた。その火が美しくないと烙印を押されたもの達の導火線に瞬く間に火をつけたのだ。

 それが各地で戦火として燃え上がった頃、ようやく世界は間違えに気がついた。


 何年も続いた戦いは先導者の死という形で集結したものの、一度ついた火が消えることはなく、各地ではことある毎に暴動が起きた。


 現在、多くの犠牲を出しながらも目立った暴動は大方収まっている。というのも、対策として世界単位での今後一切の美の追求の禁止とそれらの営利目的での使用の禁止。世界中で美しさを認可性にすることが決まったからだ。


 そんなもの簡単に決まるものかとも思うのだが、要はひとつの終点を目指した思想では一極のみの結果へと収束するのだ。

 つまり、一人勝ちにしかならなかったわけだ。

 となれば、1人の莫大な利益と引き換えに不利益を被る割合層が大きくなるのは自明だろう。

 故に不当だ、と世論の禁止派が多数を占めたのだった。


 紆余曲折を経て、この日本では名前に美という文字を入れることで、美しさの証明とした。


 名前に美を入れるには多くの国民からの承認が必要となる。

 やり方は多様であるが原則、人口の3分の2程が認めねばならない。

 過半数以上の割合が美しいと感じたもののみがようやく美しいと認められるのだ。

 要は限られたものだけが美を名乗れるという訳だ。


「お前は美しいのだ」


 自信を持てと、肩を叩いてくれる長官に僕は頭が上がらない。それでもやはりこれだけは無理だと思う。


 自分のことが美しいなんて考えたことは1度もない。


 他の3人を僕はいつも美しいと感じる。

 勿論、僕に対する扱いは美しくないが、それ以外は本当に惚れ惚れしてしまう程だった。


 それぞれにそれぞれの美しさを持ち合わせているのは勿論のことながら、それ以外のことであったとしても美は遺憾無く発揮される。


 美無最はそれだけで美しく

 愛望美はいるだけで美しい

 美偶像は揺るぎなく美しい。


 たぶん、美しい人は何をしても、どう見ても、どこで見ても、誰が見ても美しいのだ。


「やはり引き取るのが遅かったか」


 長官はそうこぼして僕に自分なりの名乗りを考えるよう言うと、静かに肩を怒らせて出ていった。


「勝手だよ」


 僕は小学校を卒業してから長官に引き取られた。だから両親のことや兄弟のことをある程度は覚えている。

 ただ長官はそういったことをそもそも弊害だと考えている節がある。


 証拠に僕以外の3人を見ればわかる。

 彼らは幼少期の間に引き取られていた。

 そして、ほとんどの教育がこの施設にて行われていたのだ。

 ここは指導者と3人のみの空間で、他の介入が極端に遠ざけられていた。

 それは自分たちが美しいという自覚を植え付けられるようにするためだと、長官は言っていた。


 結果、彼らはそれぞれ自身のアイデンティティの確立と自己の美的意識の認識に秀でた人間に成長していた。


 可哀想な話だと思う。


 そもそも子供の名前に美をつけようと親はこのご時世そうはいない。

 何より純粋に利益がないからだ。


 確かに国の人口3分の2の人達に認められるという栄誉はあれど、それによって補償される生活は皆無だ。さらには、その美しさを用いて営利を働けばそれは罪となる。

 よって様々な方法で人口の3分の2の人々の認可を受けたとしてもその見返りは愚か補填すらされず、ただ名誉としての美という称号が残るだけなのだ。


 僕の両親は結果的に自己破産となり、僕が小学校を卒業する日に首を括った。


 その後引き取って育ててくれた長官には感謝しているけれど・・・・・・


 彼ら3人の両親も大方そういった経緯で彼らを手放したのだろう。


 そして最終的にここに引き取られた。


 何がそこまでさせてしまったのだろう。

 彼ら、僕らの両親達はどうしてそこまでして僕らに美しいという1文字を与えてくれたのだう?


 僕はそんなもの要らなかった。

 僕は美しくなくていいから、4人で暮らしたかった。


 それだけなのに。


 僕は暗い廊下を抜けて部屋に戻り泣いた。

 もう今年で23歳だ。情けないながら、それでも僕はいつも泣いていた。

 来年には引き取られて12年が過ぎようとしている。

 いい加減、僕はどうするべきかを考える時かもしれない。




「美星はさ、どうしてここにいるんだい?」


 翌日の朝食中に手を止めてそんなことを美無最は聞いてきた。


「え、どうしてって・・・・・・」


 分からなかった。

 簡単に答えられることかもしれない。

 でも僕には分からなかった。

 なんでここにいるのか、なんでここに?

 ここにいることが当然なのだと思っていた。


「ここしか居場所がないから」


「ここがお前の居場所だと、本当に思っているのか?」


 抑揚のない重たい声は美偶像の声だった。

 彼は僕の方など一瞥もせずパンを口に運ぶ。

 ひと口ずつちぎって口に運ぶ様はその隆起した筋肉に似つかわしくないほど繊細だった。


「あは、は、違うかな?」


「ええ、違うと思うわよ。あなたはここに居るべきじゃない」


 愛望美は真っ直ぐ僕を見てそういった。


「それは・・・・・・」


「君には似合わないよ」


 美無最はそう言ってまた食事に戻った。


 食事に際する全ての動作が無駄なく洗練されて、必要ない異音を全く感じない。

 食事のみに制約されたその空間では僕の発する音だけが異音として認識された。


 彼らは完璧以上に完璧である。


「マナーを守ることは最低限。


 そしてその最奥に美しさとはあるのだ。

 マナーを守ることだけが美しさの全てではない。

 そういった点では君たちはまだまだだ。」


 長官はそう言っていた。


 けど、ここまで洗練された食事がまだまだと形容されることにとても違和感があった。


 僕はまたしても何故ここにいるのかの問いが頭の中を逡巡した。




「グリッターONEありがとー!」


「いえ、お怪我は無いですか?お嬢さん」


「きゃーー」


 黄色い声援が飛ぶ。

 辺りを人の渦が占拠してしまいそうになる。けれどそれを軽くいなしていく美無最。


「大丈夫かしら?そうやって悲観しないでり

 あなたはきっと愛されています。なぜなら私もあなたを愛しているんだもの」


 彼女の微笑みは聖母の微笑みだよと野次馬は言う。

 それなら、微笑まれた本人はそれ以上の感情が昂るのだろうか。


 彼女はまた1人、身を投げようとする人を助け出した。

 彼女の美しさは絶望する人を愛で包む。


「むん」


 彼が動く度筋肉の脈動が聞こえてくる。

 力を入れる度に皮膚の下を満たしている筋繊維1本1本がはち切れそうになる音が聞こえる。

 工事現場で倒れてしまった足場を1人で組み上げていく彼は最早人間ではないのだろう。


 ひとつひとつの動作が全て古き時代から求められてきた強き力の具現化である。


「これで終わりだろうか?それでは失礼する」


「ありがとうございます。

 グリッターTHREE!」


 素っ気ない態度すらも彼を魅入ってしまう一助であった。

 大勢の男たちが美偶像の全てに憧れを抱き、美しいというため息を吐いた。


 僕達、いや、彼らは毎日を人助けに費やしている。


「皆様、グリッターズをどうぞよろしく。」


 その日の終わりに長官はそう言って深深と頭を下げた。


 グリッターズ。


 キラキラと光るほど美しい人達という意味だ。


 長官が僕らを引き取った理由はここにあった。

 彼は誰かのためになる、大勢のためになる事がしたかった、誰かを救いたかったのだとよく言っていた。

 そして、多くの道すがら美しいという概念がある意味嫌悪されていることすら救いたかったという。


 彼は美しさの犠牲者である僕たちを引き取り、その矢面に立たされている僕らが自ら人助けに興じることで相互の救済を提言したのだった。

 勿論あくまで慈善事業であるから利益などはないのだが、それでも彼は僕らを育てあげ、慈善活動を行った。

 それは実を結び今では多くのボランティアの方々がそのフォローをしてくれるまでに至った。

 彼らの名前を知らない人はいない。


 そして、僕はあろうことかそのメンバーの最後の一人である。

 使い物にならない、何一つ取り柄のない、美星が僕だった。




「よくやったお前たち。本当にお前たちは私の誇りだよ」


 夕食の席で長官はそう言った。


「美星も今日はなかなか様になっていたぞ。この調子だ、この調子で自分らしさを見つけるんだ

 お前は選ばれた人間だからな」


 彼は僕にそう笑いかける。


 あまりの重圧に吐きそうだった。


 僕の小さなプライドがまるで大きな動物の爪で引き裂かれたように心からズタズタにされていっている気がする。


「美しいことは素晴らしいなぁ」


 長官はそう言って笑った。

 周りを囲む彼らを同じように笑った。

 彼らの活躍は何より誇らしく、それでもその笑いは多分僕はを貶す笑いでもあるのだろう。


 僕はもう耐えられそうになかった。


 僕は美しくなんてない。



 気がつけば、屋敷の隅の長官の部屋の前で足を止めていた。

 もう無理だと言おう、そう決めていた。


「ここから出て・・・・・・出て何をするんだろう?

 両親が残してくれた名前しかない僕が、何をするのかな?」


 哀れで、哀しくて、哀されない。


 それでも、ここを出て僕は自由になろう。


 僕には向いてなかった世界なのだ。


 分かりきったことをそれでもめげながら耐えてきたのも、今日でお終いだ。


「長官お話があります。失礼します」


 待ちきれず返事を待たないまま部屋に入った。



 ドアを閉めると同時に揺れていたカーテンが静かになった。


 部屋の中はすっかり真っ暗だ。


 長官の部屋は誰の部屋よりも小さかった。

 しかし誰の部屋よりも月明かりがよく入る部屋であった。


 たまに呼び出された時、長官は開け放った窓を背にして小さめの椅子に座ったまま僕と話をした。

 片手には安い発泡酒の缶を持って、少し酔いどれ気味に月明かりに照らされた彼は笑い、僕を優しく叱った。


「カーテンを閉めるなんて珍しい」


 そう思い部屋を見回した。


 真っ暗な部屋も次第に目が慣れていく。


 本当に何も無い、強いていえば多くの本が本棚を埋めているだけで、それ以外はほとんどものがない。

 それだけ質素な生活を彼は送っているということだ。


「長官、居ないんですか?

 少しお話があるのですが。」


 呼びかけるが返事はない。


 どうしたんだろう、そう思った時に風が強く吹き込んだ。

 僕の後ろ手にあったドアが空いたからだ。


「おい、成功したのか?」


 ドアから入ってきたのは美偶像だった。


「え?あ、美偶像??」


「な、美星!」


 開け放たれたドアのせいで向かい側のカーテンがひらひらとたなびく。

 すると月明かりが部屋の中を照らした。


 視界が開けて、今まで死角になっていたドア側の壁隅に誰かがいることがわかった。


「まさか、美星がこのタイミングで来るなんてな」


 月明かりに照らされて見えた、そこに居たのは美無最だった。


 そして、その足元に何かが畳まれたように転がっていた。


 僕はそれを見た時にいくらかの時間が必要だった。

 確かに好きではなかったが感謝するべき12年を共にすごした人だったのだから、やはり落ち着くのに大きく時間がかかる。


「長、官?」


 心臓が飛び出してしまうのではないかと言うほど心拍数が跳ね上がった。

 口にしたものと目にしているものの相違点が多すぎて、それがすんなり自分が何であるか理解出来ていることに驚きすら感じてしまう。


 一方僕の呟きを無視して美偶像は口を開く。


「すまん美無最、俺が迂闊だった」


「いや仕方ないさ、こうならないように長官と美星の距離を遠ざけ、できるだけ接触の機会を減らそうとしてきたし、ここから早く逃げ出すようにと思って接していたのに、まさかここまで律儀だとは。やはり彼の美しさは本物だよ」


「そうだな」


 2人は首を縦に振りあって、美無最が僕に話しかけてきた。


「美星、落ち着いて聞いてくれ。

 これは君のためでもあるし、そして僕たちのためでもある。」


「へ、え、わからない、え、あ?」


 頭が上手く回らない。

 言葉まで忘れてしまったように正しい受け答えすら出来なくなる。


「どうする?理由は聞くかい?」


 聞いてしまえば戻れなくなることは分かっていた。けれど、僕は頷いてしまう。


「長官はね、僕たちの両親を殺したんだ。」


 美無最はゆっくり話し始めた。




「考えたことはあるよね?

 なんで両親は見境もなく僕たちに美の1文字を入れようとしたのか?

 生活苦を抱えながらそれでも美を持つことになんの意味があるのか?」


 彼はゆっくりと窓の方へと歩いていき、ひらひらとなびくカーテンを全開にした。


「僕達もそうさ、顔も見た事のない両親が、そうした理由がある時知りたくなった。

 そんな時に見つけたのがこれだよ」


 本棚の裏に手を伸ばした彼が持っていたのは一冊の本だった。


「これは長官の日記さ。おおよそ僕らが産まれる前のね」


 パラパラとそれをめくり始めて彼は読み始める。


 ゛2054年10月3日

 今日は数年ぶりに子供に美の文字を充てられた。これからが私の計画のスタートだ。

 あの人のように大勢を扇動するための、先導するための説得力が必要なのだ。゛


 その日付は美無最の誕生日だった。

 彼はパラパラもページをめくる。


 ゛2055年12月9日

 ようやく、ようやくだ。ようやく信用を取り付けた。これであとは不自然のないように事故死に見せかけるだけだ。そうすればあとはあの赤ん坊を引き取るだけだ゛


「こういうことだよ。僕達はこうやって、全くの事故でも、偶然でもなく、意図されてここに連れてこられた。

 全てはこいつの計画のためだ」


 嘘だ。


「俺も信じたくはなかったが、やはりどこかおかしいと感じた。あの人の言動の全てがどこか抽象的なふうに見せかけて独善性に富んでいたからだ。

 本当に慈善の心を持っているのなら、それにしては酷く克己心に満ち満ちていたからな」


 美偶像の後ろから愛望美も顔を出してきた。


「何より可哀想なのはあなたよ、美星」


「あぁ、君の両親は本当に惨いことをされて・・・・・・

 あの男は能力のなさを棚に上げ、君を上手く隠しあげたご両親を悪人にしたてあげた。何人かの彼の友人を使い拷問に掛けて・・・・・・」


「俺たちは許せなかったんだ」


「何より美しいあなたがそんな仕打ちを受けてなお、彼の元で甘んじていることがね」


 頭の中を両親の顔が巡っている。

 今でも思い出す両親の顔。けれど、その最後の顔が思い出せない。

 彼らの最後を聞かされたその前に見た、彼らの顔を僕は思い出せなかった。


 美無最は続けた。


「ごめんね、今まで君をどうにか逃がそうときつい言葉を掛けてきた。そうすれば逃げ出してくれるかと思ったんだが・・・・・・

 けれど、ここでこうやって悪の元凶を殺すことが出来た。

 帰ってこない日常はどうしようもないが、それでもこれから僕たちを導いてくれないか?」


「お願い美星、あなたは星のように美しい人。あなたのその心は、誰よりも美して気高くて、あなたが今日までここに居続けられたことこそが何よりの証拠。」


「俺はお前を守る肉壁となろう、彼らはお前を守る全てになろう、だから俺たちで長官抜きで、またいつものような生活を送ろう」


 焦げ臭かった。

 頭が焼けるように痛い熱を帯びてくる。


 忘れていたものが全て起きあがり、脳の中を目まぐるしく回っていく。

 全てが絡み合い溶け合いひとつの大きな渦になって、僕の頭の中を高速でまわっていく。


 意識が焼ききれてしまいそうだ。


 気を抜けば溶けてどろどろの熱い何かにりそうだった。


 形を保つのは自分だけ、自分の気持ちだけがこの世界で僕を保ち続けるための全てだ。



 父の最後の顔を思い出す。

 母の最後の顔を思い出す。


 楽しかった旅行の帰り、突然車の前列の左右のドアが開いた。


 母と父は真っ黒な誰かに引っ張られる。


 怖かっただろう。気味が悪かっただろう。痛かっただろ。悔しかっただろう。叫びたかっただろう。


 でも、2人はそれでも笑顔を浮かべて、僕に同じことを言った。


「大丈夫、必ず助かる」


 あぁ、ありがとう2人とも。




「それではこれより、結成の儀と相成ります」


 目の前には3人の友人がそれぞれこちらを向いて片膝を付く。


 その後ろで数十人の人間が列になりこちらを臨む。


「顔を上げて」


 僕はそう言った。


 3人の顔が上がる。


 彼らの目には涙が溢れている。


 僕の隣にいる小太りの小さい男が仰々しく手に持った紙を広げ、それを読み始めた。


「美しさは罪なのか?


 罪であるべきなのか?


 罪は罰で贖うべきだ


 それならば罰は何を持って贖うのか?


 罰は罪を持って贖おう


 罰は美しさを持って贖おう


 私利私欲に美しさを用いる罰を


 美しさを持って贖おう」


 空は月を称え、その明るさに敬意を表する。

 しかして、月は星の明るさを引き立てるために空を照らしているのだ。


 星は何より美しく、星は月よりも美しい。


「僕達は星、星は全てを繋ぐ無限の恒星。

 これから世界を照らすまで、光り続ける畢生よ。

 グリッターFOUR 美星」


 さぁ、世界を壊そうか

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グリッターズ あんちゅー @hisack

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