パッヘルベルのカノン

本屋紙魚

第1話カノン、宇宙にあっては風となり地上においては黄昏となり世界を終わらせるもの

前書き

 パッヘルベルのカノンには大きく分けて二つの性質があると思う。それは宇宙の風である事と黄昏、その意味は終わらせるという二つが大きな要素だと考えられる。以下の文ではそれを考察していきたい。これを考えるきっかけとなったのは、前々から明るい曲だとは思いつつもどこかに寂しさや、やるせなさが潜んでいて相反する二つが同時存在するのが不思議に思えたからである。



 様々な楽器や歌声で演奏されるが、特に高い音色を持った楽器と相性が良い。その理由はやはりニ長調という明るい曲調だろう。二長調は、祟高な精神を表現するときに好まれて使われるようだ。人々を昂揚させ温かい気持ちにさせてくれる。

 しかし一方でどこか悲しげに感じるのはなぜだろう。それはこの曲の流れが一切止まらず、次へ次へを繰り返していくからだ。

 それはこの地球が自転をし、朝から昼へ昼から夜へと流れていくのにとてもよく似ている。

それだけじゃない、宇宙では銀河はまわり新たに生まれていく星、それと同時に死んでいく星々、大きな時間が常に前へ前へ押し進めていく。まさに流れがこの曲の姿そのものと言っていい。

 しかしそれは同時に終わりというものに近づいて行っていることに他ならない。だからこの曲には終わりを意味する黄昏があるのだ。

 これは我々人が普段は感じているけれど気付くのが難しいことなのだ。我々は大きな一つの流れの中にいて、すべては関わりあっているのだとこの曲は教えてくれる。



 カノンは前へ進んでいく力があるこの力の正体はなんなのかといえば、それはハーモニーということになるだろう。そしてこのハーモニーは同時に風の性質を備えている。

 ではカノンの出すハーモニー、風はどこから来るのだろう。それはこの宇宙から届いているのだ。特にこの太陽系においては太陽が風を起こしている。カノンはいくつもの音が重なりあい音が循環し進んでいく。

 この循環というのは太陽とまさしく同じで、太陽の中では原子がぶつかり合い融合と分裂を繰り返す。その結果弾かれた原子は風となり宇宙を漂い地球へと到達するのだ。到達した元素は肌に触れたりもしくは小さすぎて貫通したりしていく、わずかな変化だが少しずつ変わっているのだ

このよく似た性質のカノンのハーモニーも同じように、我々の肌や心に届くき変化を与えている。

よって太陽の風とカノンのハーモニーは似た性質をもち風であることが分かる。


 ここまでカノンの特性について見てきたがまだ最初の問いが残っている。それは明るさと寂しさの相反する性質が同時に存在することだ。これまで考察してきた問いの答えを合わせれば、おのずとわかってくる。

 はじめは明るさだ、この明るさがカノンが前へ進む風の性質といえるだろう。次に寂しさは世界には始まりがあるけれど終わりも必ずある、すべて終わってしまうということなんだ。この二つの性質が合わさることでカノンはできている。

 カノンは永遠の輝きを持った憂いなのだ。



あとがき

 今回、考察したことでこのカノンが宇宙の神秘や我々の生活にかかわり深いことが分かった。カノンが持つ温かさや寂しさは、人が本来持つもので懐かしさを感じ明日への希望を夢想する曲だということが分かった。

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