ユメリアの変化

ナギとユメリアと呼び名を変え、ふたりはすぐにでもこの屋敷を出ていこうと考えていた。

次の日、医師とともに姿を現したゲルバルドに、ナギは切り出した。


「今までありがとうございます。俺たち、そろそろ……」


ゲルバルドは少年のことばをさえぎり、一喝した。


「お前が倒れたら、誰があの娘を守るんだ」


――まだここにとどまれと言うことか……。


「ゲルバルドさんもこう言っているんだからさ。ゆっくり治しなよ。君もまだ本調子じゃないし。出ていくなら、この子のケガもしっかり治してからのほうがいいよ」


ユメリアの指に包帯を巻き直しながら、医師が口を挟んだ。


「あれ、痛い?」


ユメリアが首を振った。


「……ごめんなさい」


その表情に、ナギは目をとめた。


――作り笑い……?


その日から、ゲルバルドの真意のほかにも、ナギには気になることが増えた。

ユメリアが、あまり笑わなくなった。

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