第12話 ラスト・レター

 愛するジェシカ、元気でいるか。


 先の手紙で夢の話をしたが、今回もそれを綴らせてくれ。


 最近も、君の夢を相変わらずよく見るよ。俺たちの子どもの夢もな。

 だけど、やっぱり、起き抜けの薄ら寒い気持ちは変わらないんだ。

 それだけ俺は君に飢えているってことだろうが、俺はそれ以上に思うんだ。

 俺にそんな夢みたいな、そうだ、文字通り、夢みたいな、生活を送ることが、許されるのだろうかと。

 なんでそんなことを思うのか、君は不思議に思うだろう。

 だけど、その理由は、ここには書けない。


 ジェシカ。

 俺は君が思っているような立派な男じゃない。

 それでも、君は俺を受け入れてくれるだろうか。

 いや、優しい君のことだから、受け入れるわ、って即答してくれることはすぐ目に浮かぶ。


 だけど、人間とは、優しい君には想像も付かぬほど、醜くもなれるのさ。


 それでも、俺は自分の生き方を後悔しては居ない。

 そうしなければ生きていけないだけの理由があった。

 それに、全ては俺が決め、望んだことだ。


 だけど、ジェシカ。君に出逢えたことは、俺にとって、そして君にとって果たして幸せだったのだろうか。

 君が惜しみなく俺に注ぐ愛は、果たして、俺に適切だったのだろうか。


 すまん、なにがなんだか分からないことを書いているな、俺は。

 酒のせいだ、許してくれ。さっきスコッチを一瓶、空けちまった。

 君が見たら酒量が過ぎると、きっと怒るだろう。

 だが、今日のヒモナスは、いつも以上に冷えるんだ。


 それでも、俺は永遠に冬が続くこの星が好きだけどな。


 愛してるよ。愛してる。ジェシカ。狂おしいほどに。


                                   キース





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