第10話 戦争は終わったが
愛するジェシカ、どう過ごしている?
君の住む星ではそろそろ春か。
ようやく戦争が終わった。
君が無事で何よりだ。
俺は戦争が終わったことよりも、それがいちばん嬉しいよ。
だが、ごめん、君を迎えに行くことがどうもまだ叶いそうにない。
すまん、許してくれ。今就いている任務がなかなか厄介な代物でな。
どうにもヒモナスを離れるわけにはいかないんだ。君をヒモナスに迎えてもいいのだが、雪の降り続ける陰気な惑星暮らしは、どうも君の明るさにはそぐわない気がしてしまうんだ。
だが、こう言っておいてなんだが、俺はこの故郷の、何時までも続く冬が好きなんだよな。慣れ親しんだせいももちろんあるが、なんというか、雪の中ひとり佇んでいると、いろんな憂さから、気持ちが浄化されるような気になるんだ。
もちろん、気のせいでしかないのは、重々承知なんだがな。
そうだ、あの、休暇中のささやかな婚約パーティ時に会った従姉妹のマリ-を覚えているかい? パーティの頃はちょっと背伸びした女子大生だったが、いまやジャーナリストの卵としてどこぞの新聞社に勤めているらしいよ。先日実家に寄ったとき、ちょうど彼女も帰省して、実家に顔を出しに来ていた。びっくりしたな。小さな頃からなにかと俺を追いかけて、遊んでやらんとすぐ泣くような子だったのに、一丁前にすっかり大人の女性だったよ。
そうだよな、時が経てば、人も変わる。当たり前のことだが。
俺だって、そうだ。
だけど。
君への愛は変わらないよ。
君もそうあってほしいと俺は望むのみだ。
また会う日まで、元気でいてくれ。
キース
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