Ⅱ 手紙 -キースとジェシカ-

第9話 ヒモナスにて

 ジェシカ、元気でいるか?


 俺は変わりなく過ごしている。


 いま、故郷のヒモナスにいる。一日だけだが、実家に帰って、おふくろとおやじの顔が見られたよ。おふくろ手作りのポトフとミートパイをこれでもかと食わされた。いつになっても息子は食べ盛りの少年だと勘違いしてるみたいだが、俺だってもう40近いってこと、いい加減分かって欲しいものだな。そうしないと、君に次に会ったとき、俺だと分かってもらえない豚になりかねないな。

 

 そういえば、おふくろからしきりに君とはどうなっているんだと、聞かれたよ。もちろん婚約してるのは分かってるけど、いくらなんでも待たせすぎだと、小言を言われたよ。私だって早く孫の顔が見たいんだよ、とまで言われたさ。


 そうだな、考えてみれば、君と婚約してからだって、もう3年だ。従軍看護婦だった君と出会ってからもうそんなに経つのか。不思議だな。任務があれからコロコロ変わって、おかげで任地も安定しないが、戦争が終わったら、きっとジェシカ、君を迎えに行くから。


 この3年で、俺のなかでも、色々なことが変わったよ。

 でも君への愛は変わらないことをどうか信じて欲しい。


 また会う日まで、元気でいてくれ。


                               キース


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