出会い系アプリ

三園 七詩【ほっといて下さい】書籍化 5

第1話お食事アプリ

その夜私はその場限りの行きずりの相手を探していた…


「はー…誰かいい人居ないかなぁ、後腐れなくて適度に体のしまってる人…」


便利な出会い系サイトをベッドに横になりながら眺めている。


私は意外と見た目はいいが彼氏は居ない…


まぁ作るのが面倒だから、たまにこうやって相手を見つけて食事をしたり出来れば問題ない。


そうして今日も自分の写真を取って、募集をかける。


ものの数分で百を超える募集が来た…


私はクスッとほくそ笑む…ちょろいな…



「やっぱり美味しいもの食べたいから年収は5000万円以上は必須だよね…それとハゲはやだな…年齢は20歳~25歳。デブもNG!身長はそんなに高くなくていいけど…体重は50キロ代が理想かな…」


細かく条件を絞って、プロフィールと写真を確認する。


するといい人が見つかった…しかも今夜空いてるらしい!


私はすぐに相手にメールを送った。



凄い…


私は指定されたマンションを見上げて立ち止まる…


ここは相手の自宅のすぐ側で…屋上がレストランになっているそうだ。


会員なら使う事ができて、年会費は数百万…その代わり密談にも向いている個室仕様になっている。


秘密は絶対に漏れないらしい…


エントランスに来て事前に聞いていた番号を押すと…


「お名前は…」


無機質な声が返ってくる、もちろんで教えておいた偽名を名乗ると…


「お待ちしておりました。中にお入り下さい…そのままエレベーターにお進み、40階を押してください」


そう言われると目の前の厳重な扉が開いた…


言われた通りにエレベーターに乗り込み、40階を押す。


ここまで人っ子一人会うことがない


こんなにもでかい建物にいるのはまるで自分だけの様な気持ちになる。


ポンッ…


エレベーターが40を指すと、その扉が開いた…そのまま前を歩いて行くと…


「こっちだ」


男の声がする。


見ると部屋の前で男の人が壁に寄りかかって待っていた。


「初めまして…もしかして…」


相手の人かと聞くと頷き扉を開いて部屋へと通される。


警戒しながら入ると…


「わぁ…」


目の前一面のガラス張り、夜景が広がっていた。


「凄い…綺麗です」


つい見とれていると


「早く座って、こんな夜景なんて何時でも見れるでしょ」


見ると相手の人はもう既に席に座っていた。


「すみません…」


私も席へと座ると


「えっと…では改めて、名前は…」


声をかけると、ピタッと手で制される。


黙って口を閉じると


「名前なんてなんでもいいよ、せっかくの料理が冷めるから早く食べよう。どうせなら美味しい状態で食べたいからね」


そう言うと男はさっさと既に並べられた料理を食べ出した…


男の様子をみて唖然としていると


「何してるの?食べないの?」


男は料理に手をつけない私に怪訝な顔を向けた…


「あっ、いえ…いただきます」


私は愛想笑いを浮かべると、料理に手をつけた。


ちらっと伺うがバクバク食べているし変な物は入ってないかな?


それでもあまり食べすぎないように警戒して手をつける。


「ん?美味しい…」


味はいい!驚いて思わず声が漏れると


「ふーん…まぁ味はわかる子みたいだね」


男は満更でもなさそうに笑った。


早々に男は料理を食べ終えると、お酒を用意して一人飲み出す。


ちらっと見ると


「飲む?」


グラスを向けられた。


「だ、大丈夫です…でも飲みすぎない方がいいんじゃないですか?」


私は少し心配する…酔っ払って貰っては面倒だ…


「この程度じゃ酔わないよ。それに高い酒は悪酔いしないからね」


「へー?そうなんですか」


興味深そうに見つめていると


「ところで君もちろん彼氏はいないよね?」


等々に失礼な質問をされる。


だか慣れたものだ


「はい、もちろんです。失礼ですけど…」


あなたは?と伺うように見ると


「あーそういうのはもう数年いないよ。あれって面倒だよね。まるで僕を自分の物の様に扱って…金出してるのはこっちなのに違う相手とご飯行っただけで嫉妬するしさ…」


「そうですね」


激しく同意する。確かに相手などいない方がいいと思う。


私の答えに気分を良くしたのか他にも色々と聞いてくる…私は答えられる範囲で返答すると…


「ふーん…結構いいな。よしじゃあ部屋行こっか?」


「えっ?」


何がよかったのか…急に部屋?まさかもうすぐにやるって事?


驚いた顔を見せると


「あーそういうのいいよ、どうせそれ込みで来てるんでしょ?じゃなきゃ体型やら体重なんて聞かないもんな」


男は笑うと立ち上がり私の腕を掴んだ。


「ちょ、ちょっと…」


グイッと引き寄せられるといい気はしなく顔を顰める…


「今更嫌がるなよ。まぁそれにここ俺の部屋だからね…鍵はかけたしやる事やらないと帰れないよ」


男はニヤリと笑って私を掴むと隣の部屋へと連れていった…


ベッドに乱暴に投げられると…


「いた…」


カバンがぶつかる。


「ほら、さっさと脱いで?それともシャワーなんて野暮な事言わないよね?」


男はおもむろに上着を脱ぎ出した。


その様子にムードもないなぁとため息をついて諦める。


まぁ自分もそういう気持ちで来てたからね…


「大丈夫です、最後にシャワーを浴びるタイプなので…」


私は笑うと服を脱ぎ出した…


「そう来なくっちゃ…」


男はニヤニヤと笑いながら私が服を脱ぐのを眺めている…


「すみません、服を掛けられるところあります?汚れるの嫌なので…」


私の言葉に男は笑うと後ろのクローゼットを指さした。


「あそこに入れていいぞ、しかし今までそんな事を言った女はいなかったな…」


「えっ、そうですか?女性なら汚れるのは嫌だと思いますけど…」


私はハンガーを借りて服とカバンを下げた。


「女ってのはいざとなるとビビって泣き出すか、怒るかなんだよ。その反応は初めてで新鮮だな…これで体の相性良かったらまた誘ってやってもいいよ」


男は笑いながらベッドに横になった。


私は下着姿で男の横に立つ…


「または…ありませんね。だってあなたここで死ぬから」


「はっ?」


男は間抜けな顔をして私を見上げた。


私は持っていたナイフを男の胸に突き刺した。


「あーあ、やっぱり汚れた」


男の返り血をモロに浴びて私は顔を顰める。


「でもよかった~クローゼットに入れさせてもらったからちゃんと着てきた服で帰れるわ」


男の足を縛りながら私は鼻歌を歌う。


携帯を取り出し時間を確認する…まだ男にあってから1時間もたっていなかった。


男を逆さずりにして血抜きをしながら男の引き締まった腹筋を撫でると…


「ふふ…美味しそう。やっぱり肉は若くて締まってるのにかぎるわね」


どんどん固く白くなる体にそっと触ると…舌なめずりをする。


「それにしても便利な世の中になったわ…なんせ食料が自分をアピールしながら食べてくれとばかりに近寄ってきてくれる…」


私は笑いながらお食事アプリをそっと閉じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

出会い系アプリ 三園 七詩【ほっといて下さい】書籍化 5 @nawananasi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る