AnYOnE

ぺるしあ

第1話

New Game...















目の前に広がる死体の海を越え、ぼくたちは国に戻ってきた。暖かな人の生活する香り。懐かしさがあるような気がするのだが、その場面を思い出せない。ぼくたちはこの生活に慣れてしまったのだろう。

『集合!!』

上官の声でみんなが集まる。上官の顔を見ると機嫌が悪そうだった。みんなもそれに気づいていたのだろう、いつもならばうるさいはずが今回は静かだった。

『我々は誇り高き帝国軍人である。それはお前らも承知のはずだ。それなのに今回の作戦ではその誇りを捨てた奴がいる。』

わかりやすく動揺している人が1人いる。ニィザか。今回の作戦では女子供も皆殺しにしろと上官に言われていた。だが、その中にニィザの妹がいたのだ。ぼくもニィザも、家族を全て奪われ、ここに入った。だから、もう悲しむ人はいないと思い戦ってきた。彼の妹も彼の記憶の中でしか生きていなかったはずだった。だが妹が生きていると知った彼は妹を逃がそうとした。案の定、上官に見つかってしまい妹は殺された。ぼくはその現場に居合わせて無かったが、射殺されたらしい。

『ニィザ、上からの命令だ。軍に逆らったとして、お前を処刑する。ファー、やれ。』

ぼくは銃を持ち上げる。今まで数えきれないほどの人を殺してきたはずなのに、今は引き金を引けない。軍の人を殺したことがなければ、ましてや戦友など殺すことができない。上官はやれなかったらわかってるなという視線をぼくに向けてくる。それでもぼくは戦友を殺せなかった。

その時、遠くから声がした。

『停戦命令だ!戦争は終わりだ!』

ぼくたちはポカンとしていた。…は?この状況を飲み込めない。この生活に慣れているのもあるが、普通の生活というものを想像できなかったのもあるだろう。そのようにボーッとしていると、銃を撃つ音がした。驚いて隣を見ると、脳を弾丸に貫かれたニィザが横たわっていた。

『戦争が終わっても軍規が無くなったわけではない。』

上官はぼくに語りかけるというより、もう動かないニィザに言い聞かせるようにそう言った。

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AnYOnE ぺるしあ @perucia_wqx

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