第2話 転生者で召喚者。

 死んだはずのあたしは目を覚ました。

 お約束的に、読んでいた小説の世界の中に。どうせなら悪役令嬢が良かったのに、ヒロインだった。

 丁度、召還されて異世界に来たばかりだったらしい。

 この世界のことを何も知らなくても当然だと受け取られたし、質問すれば誰かが何でも答えてくれる。

 あたしは転生者で、召喚者だ。

(なんていうか、ややこしい)

 正直、そう思う。転生したことは嬉しくもなんともなかった。別に長生きしたいとは思っていなかったし、将来の希望や夢も特にはない。あえて言うなら、生きるために仕事をしなければいけないのが、しなくてすんでラッキーと思った。あたしはまだ未成年で、養育費で生きている。祖父母は離婚で傷ついたあたしを気遣って、優しかった。そんな祖父母に反発することもなく、あたしは上手くやっていた。

(お祖父ちゃんやお祖母ちゃんは悲しませてしまったかも)

 死んだことで、それだけは後悔した。だが、死んでしまったものは仕方ない。あたしは前向きに生きることにした。

 ここがあたしの好きだった小説の中なら、あたしの大好きな悪役令嬢がいるはずだ。彼女に会えることにあたしのテンションが上がる。そして、あたしには野望があった。不幸になるはずの彼女をあたしが幸せにしてあげたい。

 今のあたしはヒロインだ。あたしになら、彼女を不幸にしない行動を取れるはずだ。幸い、彼女が不幸のどん底に落とされる前までは暗唱できそうなくらい繰り返し読んでいる。これから起こるイベントの予習はばっちりだ。

(エチエンヌを不幸から救うことが出来るなんて、ファン冥利に尽きるわ!!)

 あたしは心の中でガッツポーズをした。

 彼女に会える日が楽しみで仕方ない。

 その日は召喚(転生)されて二日目にさっそくやってきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る