探索編

異世界に来ました(ただし魂のみ)

 意識が戻った時最初に見えたのは美しい緑の葉たちであった。


 あれ?冬場にこんなに葉を付けてる木なんて近場にあったか?


 ぼんやりする意識が鮮明になると、すぐにその違和感に気づいた。

 とりあえず立ち上がろうと地面に手を着いた瞬間コケた。


 いや、正確には手が地面を貫通して自分も地面に埋まったのだ。


  !?


 地面の中の様子が見えてパニックを起こしながらアワアワしていると、体がふわっと浮き上がった。


 明らかにおかしい現状に取り合わず冷静になろうと自分の状態を見てみる。

 

 服装は某衣類量販店で売っている安物のスウェットとドテラ。

 雪国の冬場の普段着だ。


 それは良いとして、なぜかそれらが透き通っているように見えるのだ。

 今度は手を見てみる。同じく透けている。

 恐る恐る足を見てみるが足はある。あるにはあるが地面から浮いている。


 なんじゃこりゃ~!!


 冷静に考えると、おそらく死んだのだろうな。

 スケスケな時点で幽霊になったのは確実だろうし。

 雪に埋もれたのか融雪溝に流されたのか、どっちにしろ雪国ではよくある事故死のパターンだった。


 死んだとしたらここはどこだ?天国だろうか?


 自分の姿から目を離して周りを見てみる。


 森の中のだ。

 木漏れ日が時々差す落葉樹の森のようで、命の息遣いを感じる美しい緑の葉が青々と自己主張して空まで覆いそうな勢いだ。


 木々以外には周りにないので移動することにした。


 歩き出そうと意識した瞬間にスーッと水平移動をし始めてビックリした。

 どうやらこの状態では生前のように足で歩く必要がないようです。

 木や地面に接触しても突き抜けるばかりで手応えがない。


 なんかVR世界を体験してるような感じで3D酔いするからちょっと嫌だな。


 しばらく歩く?と、道のように踏み固められた地面が見えてきた。

 それと気になるのはどう見ても立山連峰より高そうな万年雪を頂いた山々が木々の間の隙間からずらーっと視界の端から端までを占有していることだ。


 てっきり融雪溝から川に流れて富山湾近くの森にでも流れ着いたのかとおもったが周りがどう見ても夏草な気がするのであれは立山連峰では無さそうだ。


 となると、考えられるのは一つ。ここがあの世ということだろう。


 あの世って案外この世と同じような場所なんだな


  とりあえずここに居てもしょうがないので移動することにした。

  ついでに試してみたくてもう少し高い浮遊を試すと徐々に高度が上がっていく。


  自分がいた場所が森の木々で見えづらくなり、全体が見渡せるぐらい高い高い場所まで来る。


 生身でこの高さに来たらおそらく酸素不足で息苦しくなりそうだ。

 自分がいた場所は大陸の端の高い山と海に挟まれた伊豆半島?あるいはインド亜大陸やイタリア半島みたいな場所のようだ。


 大きさは比較対象が分からんがそれなりの大きさに見える。

 山の向こう側はあまり森林が見えないのでおそらくあの山脈で水を搾り取られて内陸が乾いているのだろう。


 上空から自分がいた場所を観察して、山から複数の川が合流して海に注いでいる場所に建物らしき物体が見えた。


 とりあえず天国の街が気になったので降りてみることにしたが、近づいていくと人の気配が感じられない廃村のような場所だとわかってきた。


 天国にも廃墟ってあるんだな

 結構立派な家もあるし広場は石で舗装もされているようだからもったいない


 「村」という感じの場所に降り立ってみたが村の中心の場所には草が生い茂り人の気配は無く、夏の強い日差しと僅かな潮騒が奏でる音だけがこの場所に現実味を与えていた。


 よく見ると広場の中心にある大きな井戸の周りには黒いシミのような汚れがあり、白い塊がポツポツ草の間から覗いている。


 う~んこれってあれだよな、白骨死体だよな


 そーっと近づいてみるとドクロと目があってしまった。


 驚きすぎてそ~っと後ろにバックしながら、だんだんここが本当に天国なのか疑い始めたが、確証もないのでとりあえず村の周りを飛び回って見ることにした。

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異世界でおばけになった男の内政物語 ユウユウ @yultuku

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