第二章 過去に戻りたいのは……

6杯目 Latteのような幸せを①

ここは、『喫茶店 月日の薫り』で、俺はこの喫茶店のマスター過波 去紅舞だ。本日は、とても悩んでいる。


「店長ぉ〜、この店ってカフェラテにラテアートとかしないんで……すか?」


「悪かったな、センス無くて!」


「何キレてんすか、店長ってそんな設定ありましたっけ?」


設定とか言うな春香、


「俺には、生まれてこのかたアートセンスは皆無なんだよ!!」


「そーなんすね、そしたら、私はセンスの塊じゃないっすか。見ててくださいよっと」


春香は、俺の隣でラテアートを始めた。

数十秒後、


「ほいっ、これでも見て、学習したまえ!!」


「お前、これはっ!!」


そこには、見事に桜が描かれていた。


「これは最早才能としか言いようがないな……、綾香!!紗希!!全てのメニューにオプションでラテアートって書きたせ!!」


「OK〜!!」

「わかりました!!」


「うわぁー!!なんて事してくれるんですか、店長!!これじゃ私サボれないじゃないですか!!」


「これまでサボってた罰だ!!」


「横暴だ!!」


「それならお前は詐欺だな!!」


「てへっ☆」


「よし、そろそろお前ら上がる時間だ。帰っていいぞ」


「ちょっと〜!!無反応は流石に泣きますよ〜!!」


「試験前なんだろ、さっさと帰って試験勉強しろっ!!あと、くっつくなっ!!」


「えへへ♡別にいいじゃないですか〜、もしかして、恥ずかしいとか?」


「別に、お前みたいな貧相な身体には、欲情しねぇよ。と言うよりも、欲情して欲しければ、お前の姉貴くらいのスタイルと純情になってから、出直してこい!!」


「めちゃくちゃ言いますね!!まさか、お姉ちゃんに惚れてるとか?それだったら、めちゃくちゃ嫉妬するんですけど〜、お姉ちゃんは、私の!!なので、絶対にあげませんよ!!」


「はいはい、さっさと帰れよ!!」


俺は春香を引き剥がし、


「綾香、持って帰ってくれ!!」


「わかりました〜!!」


「待って!!今のお姉ちゃん物凄い殺意を帯びた目をしてるよ!!まだ死にたくない!!見捨てないでぇ〜、店長ぉ〜!!」


「達者でな〜!!」


俺は、春香に手を振った。


「さて、今日も始めるか……」


ここは過去をかえるための喫茶店。

と言う都市伝説があるほどの喫茶店である。

でも、実際には、過去でどの道を選ぶのかは、その人次第というわけだ。

だから、俺はいつも人の話を聞くのは好きだ。

その人の過去を知り、その結果の今を見て、俺のコーヒーで傷を癒す。

最初はあまり好きじゃなかったけど、段々と好きになっていったんだと思う。

カランコロンカランっ。

おやおや、今日も迷える者が現れたようだ。

さて、今日も過去を悔やむ人を救うとしますかね。

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