この物語ほど具体的な人生の教科書を私は知らない。

中学生くらいの頃、皆一度は悩んだんじゃないだろうか。
将来どんな仕事がしたい?
結婚って楽しい?
子供って? まだ想像も付かない!
勉強って何のためにするの?役に立つの?
夢ってかなうの?……

人生の先のことに不安を感じつつ、具体的に「じゃあ将来のためにこれしよう!」とハッキリ決められない時期。
なんで不安なんだろうか。
それは、知りたいって思ってる先のことが複雑で難しいから。
でもいちいち調べるのもめんどくさいし、まぁ時の流れに身を任せていればなんとかなるのでは?

本当はそれじゃだめなのは、わかってるんだよ。
だけど中学生ってそういう生き物!
丁度大人と子供の狭間に生きる、ゆらゆらした時期!

じゃあ政府が代わりにあなた方に大人の人生がどんなものなのか教えてあげようじゃありませんか!!!
指南役は通称「うさ衛門先生」!
子供たち一人一人の心のケア役に「ケアウグイス」!
これらはAIで、子供たちの柔らかい部分に敏感になりながら、プライベートを守りつつ人生に必要な事柄や考え方を教えてくれる。
ケアウグイスは一人一人に配られる小型AIで、親友のように親身にいろんな場面で助けてくれる。

うさ衛門先生やケアウグイスの導きで、中学生の僕たちは、今まで知りたくても知らなかった人生のいろんなことを直接教えてもらえるのだ!

よく≪いろんなことを教えて≫くれる話はあるが、この物語ほど具体的な話を私は知らない。

例えば、
「君たちには結婚してもらいます。以下のことを二人で話し合ってください」
と、恋愛~結婚~性行為~妊娠出産、離婚や親戚づきあいに関する項目について、(相手に不満はあれど)カップルになり、自分たちが思っている様々な意見をぶつけ合う。
もちろん、二人が結婚したこと前提の話をしてもらうわけだけど、そこで、皆の意見は結構バラバラなんだと、彼らは思い知る。
自分の思っていることは、きちんと口に出して伝えないと相手には伝わらない。話し合いや客観視の重要性を知ることが出来るのだ。


これらのエピソードは、全て作者が資料を揃え、たくさんの登場人物やAIを動かして作者自身が語らせている。
半分ほど読むとわかるが、その資料は膨大な量だ。
そこに、作者の作品へ込めたメッセージが強く表れている。
ライトノベルの雰囲気を醸した人生の教科書と言っても過言ではない。

最後に、うさ衛門先生のセリフを抜粋して終わります。

「人生には予め想定した方がいい、重大なイベントがある。それが、結婚、子育て、仕事、病気、そして死だ。どんなことが起きるのか予想はできないが、どんな場合でも知っていた方がいいことがある」
「おのれを知ることだ」
「私たちはみな、おのれを知らない。どんなものを好み、どんな行動をしがちなのか知らない。そして、おのれが他者からどのように見えているのかを知らない」
「先に挙げたイベントはすべて、私たちがどういう人間なのかが重要な問題なのだ」
「自分を知ろう」