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いち

第1話 オープニング

「彼でいいんじゃないか」


 パサッと軽い音を立ててテーブルの中央に投げ出されたのは、A4サイズの紙面に写真や名前、学校名などが書かれている、履歴書や身上書のような書類の内の一枚だった。上部余白には赤く【極秘】の文字が見える。


 彼らは会議室の中央に置かれた楕円形のテーブルをぐるりと囲んで座っている。この会議室には程よい緊張感と、いよいよここまで来た、という達成感で満ちていた。長い時間、そしてこの場の全員の知力と体力をかけたプロジェクトが、いよいよ最終段階に突入しようとしているのだ。


 無駄話などは誰もしない。

 手元の資料は前日に配布されていたもので、全員がじっくり目を通した上でこの会議に臨んでいる。差し出された書類の“彼”についても、写真をちらりと見るだけで、彼らにはそれが誰だかもちろん分かる。

 提案を投げかけた男は手元に残った紙を無造作に脇へ伏せて、皆の意見を待った。


「同意」


 テーブルを囲むメンバーの一人が端的に賛同を表す。


「賛成」

「同じく」

「うん」


 その場にいた、十数名の人間が、頷首や挙手、または無言やアイコンタクトで異論のないことを表明する。反対する者は一人としていない。いつもはことごとく流れに逆らう者でさえも、視線こそ他所を向いているが、一言もなかった。


「では決定だ。会場の監督は柳下やなぎした、お前が行け」


 指名された女性は淡々と訂正した。


やなぎです」

  



┌──────────────────┐

│      このたび、       │

│  歯止めのかからない少子高齢化、 │

│   膨れ上がる社会保障費用、   │

│     減らないニート、     │

│  改善の見込みもない年金制度、  │

│    減り続ける労働力、     │

│  増え続ける国の借金等々を    │

│    抜本的に改善すべく、    │

│      日本国は        │

│ 全く新しい制度の導入に踏み切った。│

│       名称は        │

│ 名称は「新・次代の社会を担う子ども│

│ の健全な育成を図るための次世代  │

│ 育成支援対策推進法に基づく計画」、│

│  通称「良い大人計画」である。  │

└──────────────────┘


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