一流の探索者を目指す巨乳エルフ剣士の『アイシア』は、レアアイテムが眠っているとされる難関ダンジョン『第十三迷宮』を目指す。攻略のため、『迷宮探偵』を自称する頼りなさそうな中年男『シクヨロ』や、天才少年魔導師『マルタン』、そしてケモノ女騎士の『ヴェルナ』に協力を依頼し、凸凹パーティは迷宮の深淵へと足を踏み入れる――!
個性的なキャラクター達が生み出す、軽快でユーモア溢れる会話劇や、突飛な展開が魅力の作品でした。
「本作の面白さや魅力は?」と聞かれた時に、読者達が『キャラ』『テンポ』『ギャグ』の三本柱を満場一致で挙げることができるだろう、というのは優れた作品である証拠です。明確に『強み』をアピールできるのは、とても素晴らしいと思いました。
迷宮内のモンスター達と戦ったりなど、ダンジョンものとしても王道な内容や展開だったと思います。
それでいてゲームブック形式のエピソードやらTSやらメタネタやら下ネタやら、キャラ達と同じく作り手も好き放題やっている部分が良かったです。作者さんが楽しく書いて、読者も一緒に楽しむことができる。ある意味でWeb小説の理想形だと思いました。
ただ、世界観や設定の部分で、彼らがゲーム世界の住人なのかVRのように没入している人間なのか、曖昧なのが気になりました。
「意図的に隠している」とのことでしたが、終盤で明かされたり効果的な伏線になっているわけでもないので、単に読者を混乱させたり疑問を抱かせる要因にしかなっていません。作品にとってプラスとなる意図はあったのでしょうか。
違和感や疑問やモヤモヤを抱えたままだと、せっかくの魅力的なキャラ同士の掛け合いや、面白いギャグに100%集中することはできないでしょう。それは非常に勿体ないです。
『ギャグ作品であること』や『ゆるふわコメディ』『軽いノリ』というのは、「世界観や設定がガバガバでも大丈夫」「細かいことは気にするな」「読者が勝手に想像すれば良いでしょ」といった、『作者が楽をするための免罪符』にはなりません。むしろギャグ作品こそ、そういう土台作りや『ノイズ』を減らす作業は、シリアス作品よりも重要になってきます。
『設定の緻密さ』は物語の面白さに直結しませんが、『設定の甘さ』は評価を減らす原因に直結します。かく言う私も、不条理ギャグ満載なデビュー作でその辺を意識しておらず、さんざんツッコまれた結果一巻で打ち切り、という憂き目に遭っているので……。同じ轍を踏んで欲しくはないですね。
次回作以降はギャグであろうとなかろうと、シッカリと土台作りをした上で、多くの読者達を物語の世界に惹き込んで欲しいと思います。
逆を言えば、そういう粗さや違和感を排除すれば、後に残るのは純粋な『面白さ』だけです。他には短所が思いつきません。これは実に凄いことです。
ですのでダンジョンものや軽快なコメディ作品が好きな人には、オススメの作品となっています!