naisho

@hiroto6960

第1話

naisho


「あのね.......。カイトくんナイショだよ。」


同じクラスの赤嶺ユミが夕暮れに染まる教室で僕に話した。


突然の事だから僕はほんのりと緊張をしていた。


教室の窓から差すオレンジ色に染まるユミの唇を見つめながら僕はユミの話に耳を傾けた。


突拍子も無い始まりで申し訳無い。

僕の名前は立花カイト17歳。

県立高校に通う高校生。


さて赤嶺ユミが何故僕に秘密を打ち明けたのか.......。


それは彼女の秘密に一番遠くに居る人間だからだろうか?

人と言うのは気持ちを理解して貰いたい上で話す事で得る満足感。

僕に話するのはそういう事なのか?


正直赤嶺ユミと僕はそこまでの友情関係がある訳では無い。


だからカイトくんなどと言われた僕はとても不思議な気持ちだった事をここで吐露しておこう。


赤嶺ユミの内緒話に関しては.......。


正直聞きたくなかった。

そしてこれがきっかけで僕まで巻き込まれるなんて。


聴くと中々僕には中々飲み込めない話しだった。


赤嶺ユミは

「誰にも言っちゃダメだよ?内緒。」

そう言うと唇に人差し指を持っていき

出るか出ないかくらいの声で

「シーッ」と言いいたずらに舌をペロッと

出して走って教室を出た。


僕は深く溜息をついて教室を出た。


「内緒だよ。」

そう赤嶺ユミの言葉と夕暮れに染まるユミの映像が僕の脳裏に焼き付いたまま僕は学校を後にした。


赤嶺ユミの秘密。

これを語るには少しばかり説明が必要だ。

「YELLOWJELLY」

これがキーワードになってくる。

「YELLOWJELLY」とはある団体が

開発した新薬だ。

この新薬の特徴。

僕が知っている知識としては

「感情の無機質化」

つまり何も感じ無いという事。


喜怒哀楽を感じ無いのだ。

何故そんな薬が出来たのか?

大人達は鬱や不平不満に満ち溢れた。

そして誰かが言った。

「感情を無くせばいい。」

それに賛同したある団体が新薬

「YELLOWJELLY」を開発した。

あっという間に「YELLOWJELLY」は

世界中に広まった。


しかし.......

もちろん問題や事件が絶たなかった。


そして「YELLOWJELLY」は国際的に禁止された。

考えて見て欲しい。

何も感じ無いのだ。

僕はとてもじゃなく怖くて堪らない。


カイトくん内緒だよ。

そう赤嶺ユミは

「YELLOWJELLY」を服用した.......。


「YELLOWJELLY」は即効性は無いのだ。

徐々に徐々に感情を失っていく。

怒、哀、楽、喜の順番で。


何故国際的に禁止された物を彼女が服用したのか?

考えられるのは彼女の身近な人間が

「YELLOWJELLY」の開発したとある団体の

人間なのだろう。


そして僕が家に着きテレビのスイッチを入れた時に「YELLOWJELLY」を服用した者を隠蔽した者も逮捕される法案が通った。

つまり僕はこの瞬間共犯者になった。


しかし気になるのは彼女が何故僕に内緒だよって言い「YELLOWJELLY」の話をしたのか。

全く解らない。

そしてやはり気になる。

全国で政府指導の元抜き打ち検査が行われる。

それで見つかれば勿論確実に逮捕だ。

そんな物を何故彼女は服用しようと思ったのか?


僕は母にただいまと声だけ掛け自分の部屋に入りパソコンに電源を入れ「YELLOWJELLY」に関して調べ始めた。


開発者の中に

赤嶺姓を見つけてしまった。

やはりそうだったのか。


そして感情が無くなる事による事件なども

ご丁寧に一覧にされていた。


そして「YELLOWJELLY」を服用し

感情が無くなった者が元に戻る方法は無い

としての記載を見つけ僕はうなだれた。


そう赤嶺ユミはもう2度と感情を取り戻さない。


僕は今まで気にもしなかった同級生の事を考えながら眠りについた。


翌日。

僕は重い足取りで学校へと向かった。

赤嶺ユミの後ろ姿を見つける。


「赤嶺!!おはよう。昨日見たか?ニュース。」


「うん。見たよ。カイトくん今日放課後一緒に帰ろ?話ししたいし。あっもちろん内緒だよ?」


そう赤嶺ユミは言うとまた人差し指を口元に持って行きさらさらとした髪をなびかせて走って校舎へと向かっていった。


放課後。


みんなが帰るのを待ってから僕は赤嶺ユミと帰る事にした。

赤嶺ユミは何の前触れも無く僕の手を握りいたずらに笑うと

「カイトくん。ごめんねぇ。結果的に巻き込んじゃって。あのね私さカイトくん好きなの。

でもカイトくんって幼馴染の坂本愛ちゃんが好きでしょ?

私はずっと悩んでた。苦しかった。そんな時にうちのおじいちゃんがYELLOWJELLYの

開発に関わったって知った。

そして私は感情を捨てる事にした。」


僕は言葉が出なかった。


赤嶺ユミの覚悟、彼女の観察力、全てに僕は圧倒された。


「ちょっと!!折角女の子が愛の告白してるのにカイトくんなんか言ってよ!!

まだ私は感情があるのよ!!」


そう言い赤嶺ユミは顔を赤らめた。


「愛の告白.......赤嶺.......

ありがとう。」

僕は赤嶺ユミの顔を見て言った。


「あのさ.......赤嶺.......。このままどうするんだ?」


「うーん。解らないわ。どっちにしたって最終的には私は捕まるんでしょ?」


この言葉を聞いて僕はいかに僕達の会話がまともじゃないと思った。


赤嶺ユミは僕の手を引き

「カイトくん守ってくれる?」と

僕の顔に近づき言った。


僕は自分の顔が真っ赤になっていくのが解った。

「僕ももう共犯者なんだ。捕まるのは僕も一緒だ。」

なんてここでは赤嶺ユミに僕は強がってみせた。


赤嶺と別れ帰路を歩いていると


「カーイト!!どうしたの??暗い顔して?」

「愛っ!!そうか??」

さっきも出てきた坂本愛。

僕の好きな人。

幼馴染。


愛はダブダブのTシャツの袖を捲ると

「よーしカイト!!えいっ!!」と言いながら僕の肩辺りを親指で押して

「元気の出るツボ!!なんちゃって」と

いたずらに笑い僕の背中をパンッと叩いた。


「愛っ!!痛いなぁー。ありがとう。」


僕が愛に恋心を抱いたのはいつだったろうか?


愛が僕を見つめる。

愛は僕の心を読むのが得意だ。


「カイト隠し事してる?」

「うん?してる。」

「何??」

「美味しいケーキ屋を見つけたけど食いしん坊の愛には内緒」


僕はそう言って誤魔化した。


内緒内緒内緒内緒内緒内緒内緒内緒内緒。


ナイショナイショナイショナイショナイショナイショナイショナイショナイショナイショナイショナイショナイショナイショナイショナイショナイショ。


naishonaishonaishonaishonaisho.......。


僕の脳裏に赤嶺ユミの姿が浮かぶ.......。


愛の家の前に着いた。


「愛またな。今度一緒にケーキ屋行こう。」

そう言って僕は愛に微笑んだ。


「もちろん!!カイト奢りだからね!!」と

真っ白な歯を見せて笑う。


しかし僕には解っていた。

この約束は果たせる事など無いと。


国際犯罪を犯した赤嶺ユミ。

そしてそれを知っている僕。


捕まるのも時間の問題。


愛が家の中に入って行く。


愛.......。

どうかどうか幸せになってくれ。


僕が今愛に対して抱ける感情気持ちはこれしか無いのだ。


家に帰りご飯とお風呂を済ませ僕は部屋で「YELLOWJELLY」に関する情報を調べていた。


そこに赤嶺ユミからメッセージが入る。


「YELLOWJELLY服用した人を探知出来る

端末が出来たらしい。カイトくん怖いよ。」


思ってたより事態は深刻だ。

いやもう万事休すと言っても過言ではない。


「解った。赤嶺。落ち着け。とりあえず

必要最低限の荷物で高谷公園に夜中1時に。」


僕の覚悟が決まった時だった。


そして僕は赤嶺ユミにメッセージ返信した。

夏休みまで後3日.......。


僕達には平穏な夏休みは来そうに無い。


高谷公園ー。

僕は今までの貯金全てと必要最低限の荷物を

リュックに詰めて赤嶺ユミの到着を待った。


赤嶺ユミもリュックを背負い現れた。

見るからに赤嶺ユミは怯えた表情だ。

まだ怖いという感情があるサインだ。


「やぁ。赤嶺。準備はいいか?きっと

僕達が行方不明になると分が悪いのは100も承知。

このまま呑気に捕まるよりかは幾分マシだろう?逃げよう。」

「カイトくん.......。」

赤嶺ユミの瞳からは涙が溢れた。


僕は赤嶺を抱きしめた。


「どこまで行けるか解らない。適わないのも解ってる。

どうせならギリギリまで足掻こう。」


僕は赤嶺ユミを抱きしめながらそう言った。

それは自分に向けた言葉だったのかも知れない。

赤嶺は鼻を啜りながら首を上下に振った。


僕達はこの街に別れを告げ2人で歩き始めた。


とは言うものの.......。


高校生が夜中に歩き回るのはそれこそ無謀だ。


深夜徘徊で即補導。そんなオチ見たくない。

僕達は朝になるまで近くの神社の下で身を隠した。

ちゃんとは眠れないが仮眠を取ることも大事だ。


僕は赤嶺に今後の予定を話した。

「とりあえずやはり地方に行く方がいいと思う。

僕の全財産持ってきた。ざっと40万くらいはあると思う。お年玉や小遣いなんかを貯めてたやつだ。」

「私もそれくらいかな?」

「後スマホはここで置いていく。居場所が特定されるかも知れない。情報が無いのは不安だけど足が付くのは避けたい。」

「うん。仕方ないよね。」


無謀だ。

解ってる。

ただこのまま黙って捕まるのだけは嫌だった。


僕は赤嶺ユミに恋をした?って思う?

答えはノー。


彼女にはただ僕が側に居ることが今は一番いい事だと思った。

彼女の全てをこれから起こる彼女の感情の無機質化を僕は見なければいけないと思った。


僕の事が原因で「YELLOWJELLY」を飲んだ赤嶺ユミ。

僕は知らないふりが出来るほど大人じゃない。

僕達は程々にして明日の朝に備え仮眠した。


早朝。

僕は赤嶺を起こし2人で近くの公園に行き顔を洗い歯を磨き2人で電車に乗った。


他の移動手段だと身分証が要る。

身分をバラすのは非常にまずい。

なので僕達の移動は電車になった。


幸いほぼ夏休みが始まる時期っていうのは功を奏した。


リュックを持った高校生が私服で朝から活動していてもさして気にはされない。

僕達は当てのない旅を始めた。


朝からずっと電車に揺られ途中売店で買ったおにぎりなどを食べまた揺られ揺られ揺られ.......


乗り換え乗り換え乗り換え乗り換え.......

.......


一日で何とか4県をまたげた。


僕達の動けない夜が来たら僕達はまた身を隠し朝を待った。


赤嶺ユミはまだ感情を無くしては無さそうだ。

僕達は色々な話をした。

幼少から高校生になるまでのお互いの話を。


僕達の県から7県超えた所で僕達に一筋の光が見えた。


僕と赤嶺が喋って居ると


「君達のどっちかドリンカーでしょ?」

短髪で顎髭を蓄え切れ長の目が印象的な男が言った。


「俺は東堂ツカサ。俺もドリンカーだ。

何故解ったか?これだよこれ。」


そう言うとスマホを取り出した。


「政府の最近開発したドリンカーの探知出来る端末さ。何故持っているかは内緒。でも政府の人間では無いのは確かだから。俺はドリンカーとしてはステージ2怒と哀が無い。」


東堂は冷静そして淡々と言った。


「君達見た所高校生だろ?逃げてるのか?

家に来るか?来るなら力くらいは貸してやる」


僕は

「信じていいのか?赤嶺。君はどうしたい?」

と赤嶺に言った。


赤嶺はニコッと笑い

「1人でも多い方が楽しいでしょ?東堂さん

よろしくお願いします。」

と頭を下げた。


東堂はニコッと笑い

「解った。じゃあ案内しよう。」と言った。


東堂は

「端末が本当に探知して俺もびっくりした。

さてどっちがドリンカーなんだ?この駅で降りるぞ」

と言い僕達の肩をポンポンと叩いた。


「赤嶺行こう。」

と僕達も東堂に着いていく。


駅を出て20分程歩いた所に東堂の家はあった。

住宅街の中道の入り組んだ所に有りいい隠れ場所と言えるだろう。


「さぁそんなには広く無いがまあ宿無しよりはいいだろう?適当に荷物その辺に置いてくれ。何飲む?」

東堂は台所に立ち飲み物を入れた。


僕達はお邪魔しますと家の中に入った。

今までの緊張からの安堵からか一気にホッとして東堂宅のリビングに僕達はへたり込んだ。


東堂とはかなりの情報を持った人間だった。

「YELLOWJELLY」を開発したとある団体とも繋がりが有り僕達に有益な情報を教えてくれた。


「YELLOWJELLY」には効くまで個人差があるらしい。

また効き方にも個人差が有り感情の起伏が激しくなり感情を無くす者も居ればそのまま本人が気付かず感情を無くすケースもあるとの事。


「YELLOWJELLY」服用者は全国で4000人程度は要ると東堂は見ているとの事。


今の所世に出回っている端末は東堂が持っている1台ととある団体が2台。

政府は発表こそしてないものの数百台から何千台は所有しているだろうと。


政府はこの端末で「YELLOWJELLY」服用者を全て確保するつもりらしい。


東堂は更にもし万が一の時の為に僕達に使える隠れ場所も数ヶ所教えてくれた。

東堂自身も何ヶ所も転々とするつもりらしい。


東堂が言う事でより僕達はリアルに犯罪者である事これは遊びじゃない事をより気付かされた。


赤嶺は話を聞く度に僕の手を握った。

その手はまだ震えていた。


恐怖は感じているんだと僕は思った。


東堂との暮らしは非常に僕達に豊富な知識と糧を与えてくれた。


炊事をやる事で僕達の出費はかなり抑えられたのも大きかった。


僕達の資金には限界がある。

僕を雇用してくれる所があれば問題は無いが.......


難しいだろう。

初めから解っていた事だが。


「確保っ!!!!!!!」


それは東堂の家で住み出して一週間が経った頃だった。


突然その声と共に東堂家のドアは蹴り破られた。


東堂は突撃してきた捕獲員達にタックルする。


「行けー!!!お前ら行けー!!!」

東堂は叫びながら捕獲員達と揉み合う。


僕は赤嶺と部屋の窓から逃げ出し無我夢中で走った。


走った。

走った。走った。赤嶺の手を取り走った。

ほとんど知らない土地で僕達はとにかく走った。


そしてそのまま電車に乗り込んだ。


呼吸も整わないうちに僕は赤嶺に言った。

「まさかこんなことになるとは。」

僕は悔しくて唇を噛んだ。


「カイトくん怖い.......。」

そう言うと赤嶺は僕の手を握った。


僕達の逃避行.......。

当てのない光の見えない旅。

東堂という救いが消えた事で僕達の中の絶望感は更に強くなった。


東堂の教えてくれた隠れ家。

そこしか僕達には無い。

しかし所持金も限られている。

ただ来る逮捕と言う現実を僕達は学校に行き夏休みを家で過ごしそれが良かったのか?


そんなのは僕はまっぴらごめんだ。

足掻いてやる。最後まで。

逃げ切れるとは思わないが行ける所までは行くんだ。


何とか東堂の隠れ家を見つけ僕達は自炊する為にキャンプ用品を買い食糧を買い込んだ。


赤嶺は手際よくご飯を作る。

予算内での食糧調達なのでそんなに豪華では無いが充分僕は満足している。


そろそろ寝ようかという時に赤嶺が言う。


「ねぇ?カイトくん私って女って思ってるの?」

僕は

「へっ??」と

気の抜けた返事をした。


「だからいつもこうやって隣に女の子が寝てるのに何も思わないの??」


赤嶺の質問を聞いて初めて僕は意識した。


そうか。

僕は女の子と毎日一緒に半ば同棲の様な暮らしをしているんだと改めて思った。


そう意識すると少し僕は緊張した。


「カイトくん。お願い。手を握って寝て欲しい。」

僕は何も言わず手を出した。

赤嶺の温もりが伝わってくる。


新天地に来て3日目。


「YELLOWJELLY」の怖さを僕は身を持って知った。


朝起きてご飯を食べた後赤嶺が急に涙を流し始めた。


そこまでは良かったのだが.......。


赤嶺はそこから3日間泣き叫んだ。


僕が幾ら名前を呼ぼうとその赤嶺の目には僕は映っていなかった。

取り押さえようと何を言おうとただ泣き叫んだ。

そして3日後涙が枯れ果てた。


「赤嶺大丈夫か?」


「カイトくん。折角だしユミって呼んでよ。」

「あ、あぁユミ大丈夫か?」

「何が?」

「いや。なんでもない。」

「変なカイト。」


「YELLOWJELLY」..............

なんて恐ろしい薬なんだ。


昨日までのあの錯乱状態のユミは何処に消えたのか。

そして目から明らかな輝きが少し消えてるのが解った。


僕はそのユミの変わりように明らかに感情を無くしていってるのを思い知った。


ただ救いなのが「YELLOWJELLY」の感情の無くし方だ。


後は楽と喜がある。

僕はとにかくユミと楽しもうと制限はある中で楽しむ事を考えた。


「ユミ!!折角だから2人で海にでも行かないか?」

「カイト!!行く!!」


僕達は海に行く事にした。

昼間の海なら大丈夫だろう。

捕まるなんて事も無いはず。


ユミが妙にはしゃいでる。

連れて来て良かった。

僕自身あの錯乱状態のユミの姿をかき消したい気持ちもあったのだろう。


ユミと水をかけ合ったり追いかけっこしたり

と楽しんだりかき氷を食べたり

周りから見れば仲のいいカップルに見えただろう。


僕はその時に思った。

ユミの感情がある間僕はユミを喜ばせてあげようと。

僕が彼女に出来る最善の精一杯の事。

それを彼女にしてあげよう。

僕はそう心に誓った。


僕達は花火を買った。

2人で花火をした。

ユミが言う。

「カイト。私なんでカイトが好きになったか知ってる?」

「うーん解らないな。」

「カイト覚えて無いと思うけど入学式の時に私走ってて転びそうになってさ。そこを通り掛かったカイトが腕を掴んでくれたんだよ?」

「何となくそんな事あったのは思い出したけどユミだったのか!!」

「そう。同じクラスって知って凄く嬉しかった。そんなカイトと今一緒に居れるなんて本当に嬉しい。」

そう言うとユミはニコッと笑った。


きっと本当なら更に続くはずだ。

愛の事。「YELLOWJELLY」の事。


ユミは言う。

「カイトあのねお願い聞いてくれる?

最後に感情を無くす前にさカイトキスして。」


僕は無言のままユミを抱き寄せそっと唇に口づけた。


そしてユミを見た。


ユミは涙を流し

「ありがとう。カイト。」と言い手で口を抑え泣いた。


そして

「カイトもう1回だけキスして。」

僕はただ頷きまたユミにキスをした。


その時だった。

ユミが舌を入れて来たと同時に何か僕は飲み込んだ。


その瞬間

「カイトまた巻き込んでごめん。でもこうしないとカイト自分を責めるでしょ?」

僕は言っている意味が解らなかった。


ユミは次の瞬間銀色に輝く鋭利な塊を自分の首にねじ込んだ。


真っ赤な液体がユミの首から飛び出る。


その液体が僕の目の前でユミとの会話をフラッシュバックさせた。


「カイトくん内緒だよ。」


「カイトくん好きだよ。」


「カイトが居るならなんでもいい。」


「カイト感情のある内にキスして。」


.......

...................................


.......


.....................


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.....................


.....................

.....................

.....................

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.....................


その場でユミは倒れ込んだ。


僕もその場で倒れ込んだ。


あぁ.......。僕はこれから感情を失って行くんだ.......。


「naisho」ー完ー

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