増殖、広範囲化するきさらぎ駅の現状について

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・増殖、広範囲化するきさらぎ駅の現状について

■きさらぎ駅の現状確認

 駅の凄さとは、ただそこにあることである。駅にはいつでもそこにあることだけが求められるのであり、何があっても動いたり消えたりすることはなく、現れたりすることなど尚更ない。

 その意味で、きさらぎ駅というのは異質だったのだ。知らない者などもはや居ないはずだが、一応説明しておくと、きさらぎ駅とは人里離れた沿線に忽然と現れた謎の無人駅という怪異だった。

 過去形にするのは、最早怪異と呼ぶべき代物であるか議論すべきだからである。きさらぎ駅は、既に日本国民の生活に必ず関わりを持つとすら言える、ありふれたものであるからだ。

 最初にきさらぎ駅が確認されたのは―もちろんインターネット上ではなく―福岡県久留米市の西鉄電車天神大牟田線上であった。

 2015年6月5日の15時45分頃、乗客35名を載せた6両編成の西鉄電車が突如制御不能となり、その後きさらぎ駅に到着した。GPS上は沿線上に滞留している様子であったが、現場で車両は確認されなかった。車両は約5分間きさらぎ駅に停止した後、再び発進し沿線上に現れた。車両に異常はなく、乗員全員の無事が確認された。

 乗客の撮影した動画が拡散されたことをきっかけにこの事は全世界で大きな話題となり、地方公共団体による大がかりな調査も実施されたものの、原因不明となった。

 再びきさらぎ駅が現れたのは、2015年6月26日の15時30分頃、今度は熊本県に位置するJR西日本沿線と西鉄電車天神大牟田線の2箇所同時のことであった。

驚くべきことに、2つの異なる位置に存在した車両は同じきさらぎ駅に到着した。今度は約15分停止した後、それぞれの車両は再び同じ位置に出現した。

 この時、乗員総数128名中乗客2名がきさらぎ駅に取り残され、一時騒然となった。しかし約5分後同沿線上を停止中の別車両が制御不能となり再びきさらぎ駅に到着、乗客2名の救出がなされた。


 その出来事後は、驚くべき速度できさらぎ駅は繁殖した。2015年末には本州の山口県内で出現が確認され、2016年6月には全都道府県でのきさらぎ駅確認が為された。同時に到着する車両の数もこれにしたがって増大し、きさらぎ駅も巨大化・広範囲化が確認された。

 現在確認されている最大同時到着車両数は、先日の2017年5月5日09時50分頃に観測された、7車両である。この時最大6車両時点からさらにきさらぎ駅が広範囲化されたことが確認され、最近の調査によると、現在の範囲はおよそ360平方キロメートルであるとされた。これは、きさらぎ駅が初めて確認された福岡県の久留米市であれば、そのまま飲み込まれてしまう広さである。

 また、広範囲化に従って、多くの商業施設がきさらぎ駅内に進出した。初期にはコンビニエンスストアなど限られた業種のみであったが、徐々にきさらぎ駅内の産業構造は複雑化し、今では第一次産業の進出すら取り沙汰されている。現在では進出の検討を表明する企業の数が圧倒的に多く、大規模な土地区画整理事業の案も出ている。

 また他には、極めて人間の流動性が高い場であるとされているものの、ホームレス等の長期滞在者による治安の悪化も懸念視されており、治安維持の方策が求められていることも事実である。

以上である。


 この文章はこの確認にしたがい、きさらぎ駅の広範囲化に伴って増大するきさらぎ駅内鉄道の必要性について記すものである。

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