十九日目:恋の影武者大作戦 第一話
ゴールデンウィークも過ぎ去り、日常が戻ったある日の夜。
最近は洋一からのキツいお達しで、雪は魔法の使用を禁止されていた。
当の彼はといえば、机に向かいテスト勉強ばかりの日々。
暇を持て余した雪は、竹刀を振ったり座禅を組んだりしているものの、退屈そうだった。
「なぁ、洋一よ。このままで良いのか? 学業も大切とはいえ、お前の命も限られているのだぞ。早くそのテストとやらは終わらぬのか?」
「うちは他の学校よりもテストの回数が多いんだよ。これから毎月中旬は大変なんだから」
「ふむ、私学校というのもそれなりの苦労があるのだな」
机を占領されてしまっているドロッチャは床に置かれた丸テーブルのうえで、紅茶を飲んでいる。
「それにしてもあまり、学業にばかり精を出すのでは身体によくないですわ。息抜きにわたくしと違う『精』を出されてもよろしいんですわよ?」
一瞬だけペンを止めて、悩ましげにドロッチャを見ていた洋一だったが、頭を振って欲望を断ち、思考をテスト勉強に戻す。
魔女たちもそれきり、洋一の邪魔はせずに座禅をしたり魔法書を読みふけっていた。
その時、突然に室内の照明が切れて真っ暗になる。
「なんだよ、停電か……」
外の様子を見ようと洋一がカーテンを寄せると、近所の家は煌々と電気がついている。
ドアを開けると、自宅の廊下も明るい。
「あれ、この部屋だけだ……ってことは」
すると、ベッドのふとんの上に魔法陣が描かれ、神々しい光を放つ。
魔法陣の中心からは少女が飛び出した。
「はい、お邪魔しますよ~」
「うわ! またなんか増えた!」
洋一が驚いて瞬きも忘れて凝視していると、やがて魔法陣は消えて室内の照明も点いた。
現れた少女は雪やドロッチャよりも背は低く、かなりの童顔に見える。
癖のあるくるくると跳ねた茶髪を揺らし、服装は肩回りや胸元がややゆったりとした白のブラウスの上に刺繡のされた黒のコルセットを着けている。足首まである長いスカートは、ドロッチャのゴスロリなワインレッドとは異なる突き抜けるような原色の赤で、その上には白のエプロンを着けていた。
「おおっ! 久しいな、ロッティ!」
雪も珍しく感情をあらわに破顔すると立ち上がる。
ドロッチャも彼女の訪問はまんざらでもないのか、笑みを浮かべて紅茶を飲んでいた。
「まぁ、ユキにドロちゃんまでいて、いつものでこぼこコンビじゃないのさ? こないだの始末書の件はあたしの耳にも入ってるよ。まったくホントにしょうがないからワサビ醤油だね」
「あのぅ……」
小さく挙手をして発言をする洋一。
「この民族衣装みたいな人も魔女なの?」
少女はエプロンをつまんで広げると頭を下げる。
「はい、シャルロッテと言いますの作曲シューベルト。あたしはドイツ生まれの魔女で、協会では主に魔女の勧誘や布教だけでなく、他の魔女の採点活動をしてるもんでして」
「私も日本橋のうえで、ロッティに勧誘されて魔女になったのだ」
「お雪の身の上話にでてきた、南蛮の魔女ってこの人だったんだ」
シャルロッテは雪と契約した人間の少年を、興味深そうに観察する。
「お雪が剣術道場でドロちゃんが貴族の娘でしょ。シャルロッテさんもそんな感じで魔女になったんだ?」
「あたしは見たまんま猫マンマ。バルで給仕のアルバイトしてたら、協会の上司から勧誘されて魔女になっちゃったりしちゃったもんだから」
それにしても、彼女が現れてから雪はずいぶん笑顔が多い。
以前、雪は成績が思わしくないため魔女になったことを後悔した、という発言もしていたが、シャルロッテ個人とは良い仲を築いているのは、洋一にもよくわかった。
「それで、今日はシャルロッテさんは何の用事なんですか?」
「今日はちょうどユキの活動状況を確認しにきたのです。ちょうど良いタイミングだからドロちゃんも記録しておこうね荷物、運べにスズシロ春の七草なんつって」
「活動の確認って、星いくつとか上位魔女とかに関係するっていうアレですか?」
「あら人間、よくご存じですね。あたしは素質のある者を魔女にならないか勧誘してるんだけど、基本業務は魔女たちの活動が上手くいったかどうかの判定をして、上層部にビックリ、ドッキリ、マル秘報告しちゃったりなんかしちゃうんだから」
なんとなく発言が不安定というか、妙なダジャレや語尾が不穏な感じで、話が頭に入りにくい魔女だ、と洋一も困惑する。
そこで彼女の説明にドロッチャが補足をした。
「ロッティ自身は活動ポイントは貯まりにくいけども、業務を長くこなしていけば着実に出世はしますわ。いわば公務員みたいなものですわね」
「お雪から聞いてた話では、リクルートしてくれた魔女ってもっと普通っぽい話し方だったような気がするんだけど、シャルロッテさんは喋り方が変じゃない?」
シャルロッテは頬を膨らませて、洋一の鼻先に指を突きつける。
「まだまだ愚かな人間ですね。あたしも協会所属の魔女ですから。TPOはわきまえて、ちゃんとこうして勧誘用の喋りもできるのですよ? いわば親愛の証とお考えなさい」
不快そうに鼻を鳴らしたシャルロッテはバインダーを取り出すと、間に挟まったメモ覧を見ていく。
「ドロちゃんはこないだ、よその国で会ったもんべつ北海道、冬はカニ鍋、美味いかに? 無事に契約を完遂して、いまは召喚待ちってことでいいわね」
「えぇ。わたくしの能力なら当然ですわ」
ドロッチャは自慢げに雪を見ると、また紅茶を飲む。
「よその国って、ドロちゃんは北海道で活動してたの? だったら日本じゃない」
「はい、次でーす」
洋一の突っ込みは無視してシャルロッテは紙を数枚めくり、雪の項目を確認する。
「それでユキはいま、この人間と契約しているかの母さんなごりユキ。会えてホロリと涙酒。契約はまだ実行中で、彼が幼馴染と付き合いたいってことだったよね」
「うむ、この洋一という男は本当にだらしなくてだな」
「なるほどですね。『ヨーイチだらしない』……っと」
「いや、そこはわざわざ書かなくてもいいですよ。あとやっぱ話し方、変ですよ」
「営業マンで『なるほどですね』って話す人、嫌いじゃないですか? ケーハクそうで」
「なんの話をしてるんです?」
ぱたんとバインダーを閉じたシャルロッテは、洋一のベッドに腰を下ろす。
「さて、これを本部に魔法で転送すれば終わり。どうせならあたしもお休みとって、ユキの近くでのんびりさせて貰おうかなって思っちゃったり思わなかったりなんかして」
「そうだな、ロッティがそばにいてくれると嬉しいぞ。なぁ、洋一?」
「えっ、また増えるの? テストが近いんだから、せめて邪魔しないでよ」
シャルロッテの登場ですっかりテスト勉強を忘れていた洋一は、魔女たちを放置して改めて机に向かう。
だが、途端にワイワイと雑談を始める魔女たちの声に気が削がれていった。
彼は大きく咳ばらいをしてから、いらつきを抑えきれない低い声で注意する。
「ちょっと、お雪。勉強したいんだけど」
「そうであったな、すまぬ」
素直に反省した雪と静まった西洋の魔女の様子を見てから、洋一がふたたび参考書に向かうと、魔女たちが机の周りをずらりと取り囲む。
「あー、そこの公式が違うんだってばは名古屋の中村区」
シャルロッテが我慢できずに突っ込む。
「あきらめないで頑張ったらごほうびですわよ?」
ドロッチャは洋一の肩を人差し指で怪しくなぞる。
「手を休めたら叩くぞ」
雪は竹刀を床に突き立てて、鋭く睨みつける。
「うっさいよ! 邪魔しないでって意味で言ったんだよ!」
洋一は怒りを抑えきれずに、教科書と参考書を乱雑にカバンにしまった。
「明日からは図書館で勉強してくるから! 三人で勝手にここで休んでていいから、絶対に邪魔しに来ないように!」
「しかし、魔法はよいのか? 三枝亜耶も寂しがっているのではないか?」
「同じ学校なんだから、亜耶だってテストだよ! とにかく今は禁止!」
洋一は部屋の電気を消して、就寝した。
しぶしぶ魔女たちも雑談を終えて、大人しく眠ることにした。
いつものごとく雪は壁にもたれて休み、ドロッチャはクローゼットの中に隠れた。
そして、ベッドの上で横になる洋一の隣には、いつの間にかシャルロッテが眠っている。
「これ、どういうこと?」
緊張と興奮で眠れぬ長い夜は過ぎていった。
翌朝。
玄関先で待つ亜耶と合流し、学校へと向かう。
「ところで洋一は、テストの勉強はどう?」
「騒がしくてぜんぜん集中できないよ」
「ゆうべはそんな工事とか騒音はしてなかったけど?」
亜耶は昨晩のご近所の様子を思い返し、首を捻る。
「でも、テスト前だと部活ないから、ちょっと安心するんだよね」
「うちは騒がしいから、図書館で勉強することにした」
「そしたら、あたしも家じゃなくて洋一について行って勉強を教えてもらおうかな」
これぞ王道デート。
期せずして雪の魔法も使わずに距離が縮まるイベント発生に、洋一も前のめりになるが、照れ隠しで素っ気ない態度を取る。
「まぁ別に構わないよ。こっちも勉強しながらだと、そんなに教えられないけど」
とはいえ相談しあった結果、図書館だと私語や会話が難しいので、放課後は校内の図書室へ向かうことにした。
しかし、テスト前であるせいか、ここもなかなか盛況であった。
二人は静かにイスを引き、そっと腰を下ろす。
亜耶は口元に手を添えて声を抑えたまま、洋一に向けてささやく。
「なんか、会話しにくいね」
「それでも多少は物音や会話もあるし、同じ学校で同じ時期にテストする生徒同士だし、図書館みたいにピリピリした所よりいいじゃん?」
洋一と亜耶は教科書を広げて、テスト勉強を始めた。
しばらくはそれぞれ単独で問題とにらみ合うが、どうしても解けない問題があった亜耶が、洋一の肩をつつく。
「ちょっと、数学でここの公式の意味を教えてよ。すんなり入ってこないの」
「あぁ、ここはさ……」
洋一が説明しようとしたところ、教科書にすっとペンが置かれる。
その指先から顔まで視線をたどると、学級委員の有栖川だった。
「これは中学で習った二次方程式でまず分解してから、複素数で求めていくのよ」
静かな声で淡々と解説をしていく。
「わかったかしら、三枝さん?」
「……うん。ありがとう、有栖川さん」
突如、割り込んできた『氷の姫』に、二人とも驚いて彼女の顔を見ている。
有栖川は、そのまま洋一のノートを覗き込むと、鼻先の眼鏡のフレームを指で押し、垂れた前髪を耳に掛ける。
「榊原くんはさすがね。テストも頑張ってね。あと図書室は静粛にね」
洋一の肩にそっと手を置くと、カバンを持って出ていく有栖川。
そんな彼女の背中を茫然と見守る二人だったが、亜耶がおもむろに疑問を投げる。
「ちょっと、いつの間に有栖川さんとあんなに仲良くなったのよ」
「ぜんぜんわかんない……最近、ちょくちょく声を掛けてくるんだけど……」
「ふーん、そうなんだ。勉強できる人達だけのハイレベルな世界はいいよね」
洋一も有栖川の真意が理解できずにいたが、それでもやはり、話題の『氷の姫』と会話ができると、少しだけ優越感もある。
そんな二人を見ていた亜耶は心なしか、おとなしくなってしまった。
『これって、もしかしてまた、亜耶と有栖川さんが僕を取り合う、いわゆるライバル展開なのかな? 魔法も使わずにこれはヤバいんじゃないの?』
洋一はうすら笑いを堪えるように、深く教科書を覗き込む。
問題を解いていた亜耶は、わずかに視線をあげてひとり喜ぶ洋一を見ていた。
やがて、時間もすっかり遅くなり、勉強を切り上げて帰宅することにした。
自宅へ戻る最中、亜耶が突然に聞いてくる。
「ねぇ、洋一はウチの学校にある招待制SNSって知ってる?」
「あぁ……なんか電算部の部長たちから聞いたな。裏サイトみたいなやつだろ?」
「あたしも他の女子から聞いたウワサなんだけど、有栖川さんもいろいろ書かれてるって話らしいの。もしかして、有栖川さんも自分の評判が悪いのを見たから愛想よくしだしたってことなのかな?」
「……知らないよ、そんなの。直接言う勇気も根性もないやつがやってるだけだって」
洋一も平静を装うが、女子生徒の中でも目立つ有栖川や亜耶が学校SNSのネタにされていると聞くと、その存在と噂が想像以上に大きいことに内心ざわめく。
「でもさ、有栖川さんが洋一に急に声かけてくるっておかしいじゃない?」
「そうなのかな……そうなのかもしちゃったり、しれなかったりなんかして」
「何それ? なんのお笑い芸人のマネ?」
シャルロッテの個性的な語尾が記憶に強く残ってしまった洋一は、思わず口をついて出てしまったことに焦り、その場を取り繕う。
「そんな感じかなって思ったけど、そうじゃないかもな、とも思う表現だよ」
「洋一も気をつけたほうがいいよ。有栖川さんは可愛いし、勉強もスポーツもできるけど、やっぱり彼女の態度のせいか、あんまり評判もよくないみたいだからね」
それは普段の冷淡な有栖川を見ていると、いじめサイトでなくてもそうだろうな、と納得しつつも、最近になって突然に彼女が距離を縮めてきたキッカケもわからず、悩むばかりの洋一であった。
洋一が帰宅すると、魔女たちはテーブルを囲い飽きずに歓談している。
雪は日本酒を、ドロッチャはブランデーをいれたティーロワイヤルを、シャルロッテはビールを飲んでいた。
酒に酔ったのか、頬をほんのりと桜色にした雪は愛想よく手を上げる。
「洋一、遅かったな。勉強のほうはどうだ?」
「ちょっと、お雪。お酒飲んでるの? 最初に契約した時、魔女になる前は十九歳って言ってなかった? 未成年じゃん。お酒は二十歳からだよ?」
「不老不死とはいえ、私も三百歳ちかくだぞ? それに、当時は江戸だ。おのこもおなごも、元服したその時から立派な大人となれるのだ」
「いや、お雪。そのカッコ全然女の子らしくないじゃん……」
洋一は通学カバンを床に置くと、今度はドロッチャとシャルロッテを見る。
「二人はお雪よりももっと見た目が若そうだけど、問題ないの?」
「ドイツは十四歳からビール飲めるよ?」
「そもそも、わたくしたちが生まれたのは中世ですわよ? その時代に求められた物なら、食べ物も飲み物もあるがままなのは当然ですわ」
「案ずるな。洋一は未成年ゆえ酒は分けぬぞ。魔女は法や規律にはうるさいからな」
なんの言い訳なのか、洋一も呆れたように魔女たちの宴会を眺める。
「それにしたって魔女ってヒマなの?」
「わたくしたちは召喚と契約があってこそ活動できるのですわ。年中忙しそうにしてたり、かと言って、ずっと暇を持て余してるわけではないのですわよ!」
ドロッチャの説明も、それにシャルロッテが大きくうなずくのも理解できず、魔女との会話を諦めてベッドに腰かける洋一。
すると、シャルロッテがビールグラスを持ったまま彼の隣に座ってきた。
「聞いたよ、ユキから。アヤと付き合いたいとかなんとか言っちゃって。それでいてもう一緒に寝ちゃったりしてホントいやらしいなぁ、これ。ちょんちょんなんだから」
シャルロッテは下品な笑みを浮かべながら、肘で洋一を小突いてくる。
「寝たって、お雪たちのせいでお泊まりしただけじゃん」
「お泊まりとか言っちゃって。ヨーイチもお楽しみだったんでしょ。ちょんちょん。言うなってば」
「ロッティは、なんか古いテレビでも観たの?」
「お父さんにでも聞いてごらんなさい。きっとわかってる、わかってるんだから」
魔女の中で一番クセの強いシャルロッテとの会話は、洋一に激しい疲労感をおぼえさせた。
それは江戸生まれの雪すらも超越するジェネレーションギャップだった。
洋一は魔女たちは放っておき、机に向かうとまた参考書を開く。
「しかし、ヨーイチも魔法を頼ってテストを受ければいいのに、独学とは無駄ですわね」
ほんのり紅茶とブランデーの香りをまとったドロッチャが寄ってくる。
「おかげで、私はすっかり開店休業だ」
少し腐った様子で、ちょこに酒を注ぐ雪。
「こればっかりは学生の仕事みたいなもんだからいいんだよ。それに僕は勉強は嫌いじゃないし」
「まぁ、努力を怠らぬという洋一の姿勢は立派だと思うがな……さて、洋一も戻ってきたことだし、ここでお開きとするか」
彼が帰宅して勉強を再開したため、魔女たちの宴会は終わった。
有栖川の不自然な行為も気になるし、なにより彼女が言っていた亜耶に気があるという木下のことを考えると、対抗心を燃やして彼には敵わない成績を少しでも良くしようと、一心不乱に参考書を読み続ける洋一。
やがて日付をまたぐ頃になり、ドロッチャもシャルロッテも眠りについた。
洋一の様子を見ていた雪が、近くに寄ってくる。
「あまり、根を詰めるな。契約の……すなわち三枝亜耶とのこともあるし、学校の試験も集中しすぎて体力を失っては身体に堪えるぞ」
「お雪だって、江戸の頃は剣術を必死に頑張ってたんでしょ? その時にもういいよって言われて、じゃあ素直にやめて、剣を極めることができたと思うの?」
洋一の正論に、雪も口をつぐむ。
勉強を続ける彼の姿は、剣術の道に打ち込んでいた愚直な自分の若い頃を見ているように感じた。若い頃とはいっても魔女になってから年齢を重ねることはないが。
部屋の電気が消えても、洋一は卓上灯だけで机に向かい、勉強を続ける。
それからさらに、時間が経過した。
あくびとともに背伸びをして、壁の時計を見る。
「そろそろ寝るかな……」
はっと何かに気づきベッドの上を見ると、今日はシャルロッテが完全に占拠していた。
潜り込む余地もないくらいだが、逆にこちらが潜り込んだり、わざわざ起こしてどいてもらうのも、あらぬ疑いがかけられてしまう。むしろドロッチャあたりは喜びそうだが。
仕方なしに机に突っ伏して、そのまま眠ることにした。
洋一の気配が動かなくなったところで、雪が静かに目を開く。
足音も立てずに歩み寄ると、机で寝息をたてる洋一に毛布をかけた。
「風邪をひくぞ、まったく」
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