魔力過多と道具屋 〜「私、詠唱が使えません!」「こちらの魔術道具がおすすめデス」「二人で儲けをざっくざく!!」〜
108 「私、もっと仲良くなりたいです!」「こちらで初デートはいかがでショウ」「ふたりそろってドッキドキ!!」
108 「私、もっと仲良くなりたいです!」「こちらで初デートはいかがでショウ」「ふたりそろってドッキドキ!!」
ウォーレン歴9年 緑風の月16日 朝
あれから日が流れて、私とアレンさんは王都から出てフォアの町に戻ってきていた。今日は祈りの日だから教会で礼拝に参加して、食堂で朝ごはんを食べて、町に出る。
「エスター、今日はゆっくり町を散策でもしませんかァ?」
「いいね、王都から出てくるのでけっこう疲れたし。もう急ぐ旅でもないしね」
「そうと決まれば私にお任せをォ、まずはコチラですゥ」
「う、うん……?」
アレンさんに連れていかれたのはオシャレな商店街。アレンさんはうーむゥ、とかいいながら女性ものの服屋さんに寄っていった。
「エスターにはこういうのも似合うと思うんですよネェ」
示されたのは可愛いワンピース。私はいつも着替えやすさで服を選んじゃうから、こういう可愛いものはそんなに持っていない。
「えー、似合うかなあ?」
「試着しますかァ?」
「なんか恥ずかしいからなし! 次のお店見にいこう!」
「エェー……」
不満そうなアレンさんはこの際無視だ。ちらっと見えた値段もすごかったし、万が一欲しくなったときに悩みそうな気がする。
そんなこんなで歩き回って、お昼。私は小腹がすいてしまって、アレンさんのだぼっとした服のそでを引いた。
「アレンさん」
「ハイィ?」
「ちょっと喫茶店入らない?」
「構いませんヨォ。今回は私のおごりにしまショウ」
「いや、そこまでは」
「アチラの喫茶店がよさそうですネェ?」
……なんか今日はアレンさんが強引な気がする。小首を傾げながらついていくと、これまたオシャレな喫茶店に着いた。そんなに混んでいなかったようで、すぐ席に案内される。
ふたりでメニューを覗き込む。……うわぁ、どれもおいしそう。
「決まりましたかァ?」
「こっちとこっちで悩んでて……」
「じゃァ両方頼んで半分こしまショウ。飲み物は紅茶ですネェ?」
「え、あ、うん」
そんなこんなで、砂糖菓子と氷菓子が運ばれてくる。あと紅茶。アレンさんが紅茶のカップを持ち上げながら肩を落とした。
「デートってェ……難しいんですネェ……」
「で、デート!?!?!?」
「だってェ、『ずっと一緒』ってそういうことでショウ?」
「そ、そ、それはっ」
全然気付いてなかった。そして気付いた瞬間顔が真っ赤になったのを感じた。アレンさんがくすりと笑う。
「まずはァ、エスターに意識してもらうところからでしたかァ」
「ご、ごめんなさい……!!」
「構いませんよォ。なにせ、『ずっと一緒』ですからネェ?」
「強調しないで!」
「アハハ」
は、恥ずかしい……!!
でもまんざらでもない自分ももちろんいて、というかむしろ大歓迎のような……?
味がしないままお菓子を半分こして(これも気付くと恥ずかしかった)、喫茶店を出る。
人混みの中を並んで歩いているアレンさんの横顔を見上げて、思い切って、手をつないでみた。
「……エスター?」
「その……ずっと一緒だよ、アレンさん」
「ハイィ、ずぅっと一緒ですヨォ」
なんとなく恥ずかしいまま、でもつないだ手を離さないまま、私たちはにぎわうフォアの町を一緒に歩いた。
心の中はちょっとずつ変わっていっても、私たちはこれからも凸凹コンビを続けていく。ずっと、ずっと――。
了.
魔力過多と道具屋 〜「私、詠唱が使えません!」「こちらの魔術道具がおすすめデス」「二人で儲けをざっくざく!!」〜 梅谷理花 @UmeyaRika
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