無名兵士
紙季与三郎
第1話 無名兵士
一、在りし日の夢のひとひら。
何処とも言えないレンガの路上に鐘が鳴る。
カンラァァン、カンラァァン。
夜の帳にも似た星と時の欠片が煌く世界、夢の最中に居る様子でアルドは佇む。
そこに突如として雷鳴を鳴り響かせ、広がるは時空の穴。
幾度も、幾度も通り抜けた殺された未来を救う旅の始まり。
夢心地の浮遊感の中で、アルドは何かに苛まれているような男の声を聴く。
「鐘の音が聞こえない……また、まだ、聞こえない」
「……お前じゃないのか。俺は、いつまで……いつまで待てばいい」
周囲に首を振り、その声の主をアルドは探した。
しかし声の主はレンガの路上の何処にも居ない。
残るは、眼前にある何処に繋がっているかも解らない時空の穴のみ。
アルドは一気呵成に時空の穴に飛び込んだ。
そこで、夢は終わる。
フィーネ「お兄ちゃん、お兄ちゃんったら‼ そろそろ起きて‼」
アルド「ん……ああ、ふああ。おはよう、フィーネ」
朝の微睡みとの幕間を引き裂くように、アルドの妹であるフィーネがアルドの肩を揺らし、穏やかな朝の陽ざしにアルドは目覚め、呑気な欠伸を漏らす。
フィーネ「おはよう。大丈夫? なんだか、うなされていたみたいだけど」
アルド「うなされていた?」
けれどフィーネは不穏な表情で、起こしたてのアルドの様子を伺って。
フィーネ「うん、なんか『鐘の音が聞こえない』って……苦しそうに」
アルド「鐘の音……?」
知る由もない眠りの一幕、心当たりの無い自らの言動を妹から指摘されアルドは戸惑う。
止めようもなく煙のように、霞の如く体から抜けていく記憶。
フィーネ「まぁ見た夢を覚えてないなんてよくある事よね。朝ゴハン出来てるよ、それから、お爺ちゃんが頼みたい事があるんだって」
呆けるアルドの様子を確認したフィーネは、安堵の息を漏らし用件を伝える。
アルド「爺ちゃんが? 分かった、直ぐに行くよ」
フィーネ「あ、二度寝しちゃダメだからね?」
部屋の出入り口に歩み、ふと思い出したように訝しげなフィーネの視線を浴びて頷くアルド。しかし、
アルド「……鐘の音、か」
心に引っ掛かる言葉が穏やかな朝に不穏な予感を抱かせて。
***
二階建て家屋の木製階段を軋ませながら降りると、アルドが住むバルオキー村の村長にしてアルドとフィーネの兄妹を拾い育てた養父が腰を曲げている。
アルド「おはよう、爺ちゃん。俺に頼みたい事があるって聞いたんだけど」
村長「おお、アルド。昨晩、村に着く予定だった行商人が今朝になってもまだ到着しておらんと騒ぎになっておるんじゃ」
村長に声を掛け、フィーネから言伝で小耳に挟んでいた用件を尋ねると村長は振り返り、事の詳細を口伝し始めた。
村長「どうやら月影の森を抜けて来るという話じゃったそうで、すまんが少し急ぎで森の様子を見てきてはくれんか?」
月影の森。その名の通り、昼ですら月の影のような暗がりの森には、獰猛なモンスターが息を潜ませ、森に立ち入った村人や通行人に襲い掛かる危険な森である。
そんな不穏な響きがある森の名に、不安の二文字。
アルド「分かった。任せてくれ、直ぐに行って様子を見て来るよ」
バルオキー警備隊に属するアルドも、事を性急に進めなければならない事を察し、村長からの依頼に二つ返事で頷いて。
村長「うむ、頼んだ。くれぐれも気を付けていくんじゃぞ」
信頼を肩に乗せる村長の見送りを背に、こうしてアルドの旅は再び始まる。
意味なき出会いか、意義ある戦いか。
その答えを、いや問い掛けすらもアルドは、まだ知らない。
***
かびたキノコの薫りがする湿りけに溢れる森。懐かしくも寂しげな色合いの森に足を踏み入れたアルド。この森で、幼い頃の彼らは村長に拾われた。
アルド「行商人か……何事もなきゃ良いんだけど」
そして殺された未来、因果に歪んだ時空を救う旅が始まった思い出の深い場所でもある。
不穏に静寂を極める森の中で左右に首を振りながら感慨に耽るアルド。
その時、森の奥から突如として慌ただしいさざめきが聞こえ始める。
行商人「急げ‼ もうすぐ森を抜けられる‼」
傭兵「くそ……なんなんだ、アイツらは‼」
森の奥から駆けてくる商人のような風体の男と、荒くれ者の生き方が滲み出る戦士のような格好の男たち。一目して、何かに追われているような様相なのは間違いない。
アルド「なんだ⁉ どうしたんだ⁉」
唐突な状況の変化、錯綜に戸惑うアルド。するとそんなアルドを見つけた商人風の男がアルドの前で立ち止まる。
行商人「もしやバルオキーの警備隊か‼ 君も早く逃げるんだ‼ あの化け物は我々の手に負えない‼」
戸惑うアルドに形容しがたい危機感を何とか伝えようとしながら、行商人の足は恐怖に急かされるが如くアルドの背後へと進む。だが、アルドは視線を行商人に向かわせる事が出来ない。何故なら、
傭兵「来るぞ‼ 急げ‼」
行商人の後を追う荒くれた傭兵たちの足音と声に混じり、森の茂みの奧から巨大な何かがガシャリガシャリと迫ってくる音が聞こえたからである。
アルド「アレは……まさか‼」
そしてそれはアルドにとって予想外もしない存在でありながら、予想できてしまった存在。
傭兵「おい、商人の旦那を守るぞテメェら‼」
傭兵「おおよ‼」
アルドと横並びに腰の剣を抜いた傭兵たちの眼前に姿を現したのは、現代ではなく遥か未来において人類の脅威となるはずの機械の荘厳な姿。アルドが住む時代では、その基軸となる『機械』という概念すらまだ存在しないそれが、さも当たり前のように数体、森に住む獣のように並び立つ。
アルド「待て‼ そいつらと戦うのは危険だ‼」
真に恐れるべきは無知である。アルドは、その機械の獣に戦いを挑もうとする傭兵を諫めつつ、自らもまた剣を抜き誰よりも先に前へと踏み出す。
アルドだけが、事の異常性を明確に知り得ていたのである。
——機獣との戦闘。
アルド「くっ……この数はキツイ」
かつて歪んだ時空に迷い込み、辿り着いた未来の世界にて幾度も戦った機械の相手とはいえ、数体に囲まれたアルドは徐々に押し込まれ苦戦を強いられていた。
アルド「ここは俺に任せて先に行ってくれ‼」
故に彼は、機獣たちの撃退ではなく足止めに徹し、背後に控える傭兵たちに檄を飛ばす。守る事——バルオキー警備隊としての自負心と良心によって自己の犠牲を良しとする。しかし、
傭兵「なに言ってんだ‼ 俺達の仕事は商人の旦那の護衛だ、馬鹿にすんじゃねぇ‼」
傭兵「おおよ大将‼ 傭兵にゃ傭兵のプライドがあるってんだ‼」
依頼人である行商人を守る傭兵もまた然り。アルドの声掛けがむしろ矜持を逆撫でて数人の荒くれ者どもに一気呵成の勢いを付けさせてしまう。
アルド「……次が来るぞ‼」
後悔も束の間、今なお戦いの最中、省みる時間など無い。アルドは直ぐに気持ちを切り替え、頭の中で全てを守る最良手を探し始めて。
その時だった。
機獣「……‼」
僅かに機獣たちの動きが止まり、男の声が刹那の静寂の中を突き抜ける。
???「見つけた……‼」
その後、瞬く間に駆け寄り現れる銀色の肢体。或いは鈍い銀光を月影に燻らせる刃。
アルド「⁉」
???「うらああああああ‼」
アルドの瞳孔が開くその一瞬の内に刀を振り下ろし、男は機獣を一刀の下に伏す。
傭兵「……す、すげぇ」
傭兵「助かった、のか?」
そして残りの機獣一体に激しい連撃を加え、その光景を目撃していた傭兵たちを気迫で圧倒し唖然と脱力させる始末。
???「……」
完全に静寂の帰還した月影の森に、銀色の肢体の男は刀を肩に担ぎ佇んで。
アルド「アレはまさか……合成人間? いや……」
???「聞こえない……これでもまだ聞こえない」
既視感を覚えるアルドを他所に、顔を上げ薄暗い森の天井に光を探す男の呟き。
傭兵「おい、アンタ……何言ってんだ?」
そんな不可思議な男に傭兵の一人が近づいた。
パキリ、落ちていた枝葉の砕け散る音。
するとその瞬間、
???「お前では、無い‼」
鬼の如き形相で銀色の男が目を光らせ振り返る。アルドは本能で危機を察した。
アルド「危ない‼」
銀色の男に近付こうとした傭兵の一人を押し退け、咄嗟に剣で銀色の凶刃を防ぐ。
アルド「誰だ、お前は‼」
確固たる殺意。刃に籠る瞭然たる敵意に、思わずアルドは声を荒げた。
???「お前ではない……まだ聞こえない」
ギリギリとアルドの剣を押し返す銀色の男の刃。
同時に、呻くように男は声を漏らす。
アルド「アレは……⁉」
混迷を極める状況、そこに更に追い打ちをかけるように銀色の男の背後の情景がアルドを驚愕させる。
雷鳴を打ち鳴らし歪んでいく空間。時空の歪み、災厄の予兆。
様々な混沌をアルドを始めとする世界にもたらした時空の穴の出現。
すると、そんな災厄の出現に対し銀色の男はアルドに向けていた刃をあっさりと引いた。
???「まだ俺は……まだ……」
そして時空の穴へと導かれるようにアルドらに背を向けて歩き出し、周辺の機獣の残骸と共に宙に浮いて。
アルド「あ、おい待て‼」
あまりに唐突な状況変化に頭が追い付かず呆然としていたアルドは、そこでようやくと時空の穴に吸い込まれていく銀色の男に手を伸ばした。
行かせてはならぬ、直感する本能。
しかし時すでに遅し、銀色の男はアルドに見向きもしないまま時空の穴に吸い込まれ、ここ数刻の異常の全てと共に月影の森から消え失せる。
傭兵「……き、消えた?」
傭兵「とにかく今は旦那の護衛だ‼ 村に急ぐぞ‼」
静寂唖然のひと時に、何も知らぬ傭兵たちの戸惑いが灯り、やがて消えゆく。
そしてアルド。伸ばした手には何もなく、心にはただ謎ばかりが突き刺さっていた。
***
村長「おお、アルド。無事に帰ったか。色々大変じゃったそうじゃな」
行商人たちとは少し遅れてバルオキー村に戻ると、行商人らと話をしていた村長が振り返り帰還したアルドへ声を掛ける。
アルド「……」
しかし心に抱いた謎と先々への不安で満たされたアルドの胸中が、村長への返し言葉を遅らせて。
村長「ん、どうかしたかの?」
その違和感に育ての親であるっ村長が気付くのにはそう時間は掛からなかった。
アルド「(アレは……合成人間に似ていた。けど……)」
隠し事は出来ない。けれど全てを語る事も難しい。月影の森で経験した出来事について思考を巡らすアルドは瞼を閉じ、やがて決する。
アルド「爺ちゃん。俺、少し出掛けてくるよ。気になる事があるんだ」
村長「うむ、そうか……なんにせよ、無理はせん事じゃ」
バルオキー警備隊の仕事を差し置き、真剣な眼差しを村長に向けるアルド。そんなアルドから何かを感じ取り、村長は何も聞かずに頷いた。
アルド「(よし。取り敢えず、次元戦艦に会いに行ってみよう)」
困難へと向かう旅立ちの空は、やはり青く、広い。
二、時空混走。
アルド「やあ、次元戦艦。今日は聞きたい事があってきたんだけど」
次元戦艦「……アルドか。聞きたい事とは我らの仲では少し不粋な気がするな」
旧知の仲とは言えずとも、かつて敵対していた過去を乗り越え、空の大海を征く。
豪快な戦艦を肉体として持つ次元戦艦の眼前へと辿り着き、挨拶を交わしたアルド。
次元戦艦「まぁいい……話して見ろ」
アルド「実は……」
そして次元戦艦は皮肉めいた冗談を自らで収束させアルドの話に耳を傾ける。するとアルドは月影の森で起きた出来事について次元戦艦へと語り始めたのだった。
***
次元戦艦「なるほど。正体不明の合成人間か……偶発的に時空の歪みに巻き込まれた兵器というのも無い話では無いが……合成兵士と敵対している合成人間とは確かに興味深いな」
月影の森での顛末を伝え終え、次元戦艦が状況を整理する中、アルドは腕を組む。
アルド「ああ。その合成人間が少し気になったんだ。それに、あの声……どこかで聞いた事があるような気がして」
次元戦艦「ふむ……私のデータベースに照会してみるが、ヘレナに聞いてみてはどうだ」
次元戦艦「アレでもガリアードに代わって合成人間を束ねていた女だ、何か知っているかも知れない」
アルド「そうだな。ヘレナに聞いてみるよ、今どこに居るんだ?」
そして怪訝な顔色で真剣に物事を話し合い、頼りがいのある次元戦艦の助言を受けてアルドは強い信頼を寄せる笑みを溢す。
次元戦艦「恐らく、工業都市廃墟に居るはずだ。連れて行ってやろう」
アルド「ああ、頼むよ」
頼りになる仲間たち。こうしてアルド達は問題解決に向け、新たな仲間を探しに行くのだった。
***
現在と未来、途方もない旅の空の色から暫し身を隠し、未来の天井と外壁は暗い鉄色で廃墟の色合い。ほんのりと光る人工光源の灯りが殊更に儚く、寂しげ。
アルド「ヘレナ。やっと見つけた‼」
そんな中、通路の端で物想いに更ける女性の背を見掛け、声を上げたアルド。
ヘレナ「あら、アルド。どうかしたの?」
するとそんなアルドへ機械仕掛けの魂が機械仕掛けの肢体を動かし、半透明の仮面越しに大人の微笑み。合成人間のヘレナは、顎に手を当てアルドに言葉を返す。
アルド「実は、俺が住んでいる時代に合成人間が現れたんだ。その事についてヘレナの意見を聞きたくて」
ヘレナ「合成人間が……? 詳しく聞かせて」
そして明滅する光源が不吉を匂わせ、時を超えた珍客の言葉がヘレナの興味を引く。
アルド「うん。ソイツは、すぐに時空の穴に消えて行っちゃったんだけど……なんか気になってさ」
ヘレナ「……アナタの感想は聞いてないのだけど」
アルド「あ、ゴメン。ええっと……そうだな。まず、俺の住んでる村近くの森で……」
冷静な表情で事を一つ一つ整理する構えのヘレナに、アルドもまた一から順序立てて事の経緯の説明を始めたのだった。
***
やがてアルドが説明を終えると、顎に手を当て直し状況を咀嚼するように考察を深める様相のヘレナ。
ヘレナ「……なるほど。話は大体わかったわ。でも、おかしいわね」
アルド「おかしい? なにかおかしな事があったか?」
ポツリポツリと問題点を炙り出していくかの如き声色で、泡を浮かせるように首を傾げる。
ヘレナ「ええ。アルドから聞いた合成人間の特徴……刀のような形状の武器を使う合成人間は聞いた事が無いわ」
まず一つ。
ヘレナ「物理攻撃の出来る合成人間は斧や腕力で戦う場合が多いし、それに……」
アルド「それに?」
そして二つ。
ヘレナ「その合成人間……話を聞いた印象によると、時空の穴に自ら吸い込まれていったのよね。まるで、その穴が時空を超えられる事を知っているみたいに」
確信めいて理路整然とアルドが話した事柄に抱いた疑問点を共有させようと語る。
アルド「あ! 確かに、そういえば……そんな感じはあったな」
ヘレナ「最悪の場合、時空の穴の発現は偶発的では無く、次元戦艦のように人為的に発生させている可能性すらあるわ」
ヘレナ「調べてみる必要はあるかもしれないわね。とても嫌な予感がするもの」
ただの不運、偶然が運命であるかの如く感じさせるヘレナの口ぶりに、アルドは事の深刻さを増して感じ取り、ヘレナもまた不穏な気配に息を吐く。
アルド「うーん……でも、手掛かりがな。もう一度、月影の森に現れるとも思えないし」
ヘレナ「いえ。もう一度その月影の森に行ってみましょう。時空の穴の出現によって残った時空の揺らぎを計測できれば、何か手掛かりになるかもしれない」
アルド「そうなのか……? まぁ、もしかしたら他の手掛かりもあるかもしれないし」
アルド「それじゃあ、月影の森に戻ろう‼」
省みて覚束なかった事後の処理に後悔の色を滲ませつつ、アルドは頼れる仲間のヘレナと共にまたあの兵士と出会った森へと向かう決心をした。
僅かな可能性に望みを抱き、それが希望であるかも知らぬままに。
***
ヘレナ「月影の森……静かに物を考えるには良さそうな森ね」
合成人間が出現した月影の森の地に再び立ち、傍らのヘレナのふとした呟きにアルドは戸惑う。陽が沈み切った直ぐの淡い紺の景色を思わせる星の微睡みに似た静やかな雰囲気にヘレナはご満悦で。
アルド「そ、そうかな……? 結構、危険な魔物も出るんだけど……」
しかし印象とは乖離している実態と現況に対し、些か緊張感に欠けるのではないかと危惧しつつ、それでもヘレナなりの冗談かとも思い頬を掻くアルドである。
ヘレナ「ここで、例の合成人間らしき兵士が戦ったのね」
そうしていると、纏う雰囲気を一転してヘレナは観光から調査に気持ちを切り替え、真剣味のある声色でアルドに確認しながら周囲を改めて眺めた。
アルド「ああ。一太刀交えただけだけど、かなりの手練れだと思う」
そんなヘレナに呼応して、アルドもまた真面目な顔色に至り、かつての記憶を呼び起こして力を込めたのは眉の根。敵であったのだろう機獣の巨体を軽々と薙ぎ倒す剛腕と精錬された動きの速さ。表情に滲み出るのは汗と不穏。
ヘレナ「……破壊された機体の残骸が一つも無いようだけど」
仲間として実力的には疑いようのないアルドが危機感を抱く様子を横目で視認しつつ、それについては深くは追わないヘレナ。今はまだアルドと出会った合成人間と敵対するかは不透明、彼女は情報の収集に徹する。
すると、
アルド「うん……時空の穴に全部を持っていかれたのかもしれないな」
ヘレナ「……いえ。見つけたわ……これは恐らく、兵器の破片ね。少し解析してみるわ」
アルド「ああ、頼むよ」
本格的に情報の捜索に参加し始めたアルドを他所に、早速とヘレナは手掛かりを見つける。小さな金属の鉄片、すぐさまヘレナは鑑定を始めた。
一方、早速と暇になったアルドは他にも何かないかと鉄片をヘレナに任せ更に森の中を見回して。
アルド「……あの機械たち、向こうから来たんだよな」
ふと森の道の先、行商人と傭兵たちが走り込んできた先に思いを馳せる。
ヘレナ「これは……‼」
そんな神妙な回顧をまたしても早々に切り裂くヘレナの驚愕が漏れた声。
アルド「どうした? なにか分かったのか?」
答えは知りつつも敢えて疑問形で言葉を掛けるアルド。その答えは彼の瞳に映る口をつぐみ思考の迷宮に足を踏み入れたヘレナの様子からも伝わってくる。
嫌な予感、真に恐れるべきは無知である。幾度もの旅の中で直面した危機は無知に手を引かれてやってきた。歴戦の勘が、これからの戦いの銅鑼を打ち鳴らすように心臓を鼓動させている気さえして。
ヘレナ「……正確な事は、詳しく調べてみないと分からないけれど。もしかしたら、アルドが遭遇したという合成兵士たちは……存在していないかもしれない」
そしてしばしの沈黙の後、長い時間使っていなかったようにヘレナが重い口を開き、自身すらも、にわかに信じ難いと言った口ぶりでアルドへ説明を始める。
アルド「存在していない……? どういう事なんだ?」
ヘレナ「この兵器の残骸は私達の知っている未来……少なくとも、そこでは使われていない金属が使用されている可能性があるわ」
アルド「金属……?」
ヘレナ「とにかく、詳しく調べてみましょう」
未だ科学が不確かな時代に生きるアルドにとって、それは無知ではなく未知の領域。
故に慮り、事の詳細を省きヘレナは話を進める。
ヘレナ「ええっと、そうね……ここでは無理だから次元戦艦に行きましょう。あそこなら設備も整っているはず」
アルド「分かった。じゃあ次元戦艦の所へ……」
しかし、有無もなくアルドが未知を受け入れる覚悟をした矢先の事。
アルド達「⁉」
ヘレナ「鐘の……音?」
カンラァァン、カンラァァン。
風もない月影の森に運ばれる盛大な鐘の音が響き、不穏な空気の振動を感じさせる。
そしてバチリ、バチリと雷鳴が弾け、アルドが先程まで見通せていた景色の先が歪んでいく。時空の穴、異空への道。
アルド「‼ まさか、また……⁉」
咄嗟に予想したアルドの思考は的中し、そこから這い寄るように姿を現すのは騒動関与の起因となった機獣の姿。続々と、続々とヘレナとアルドの前に現実を突きつける。
ヘレナ「……丁度いいわ。サンプルは多い方が良い、それに……このまま放っておくわけにも行かないでしょう」
アルド「ああ! 戦うぞ、ヘレナ‼」
抜かれた剣、構えられる杖先は煌く。
——機獣との戦闘。
流石は歴戦の傑物同士といった所か、
アルド「よし‼ このまま押し切る‼」
巧みな連携を難なくこなし、機獣に応戦するヘレナとアルド。幾つかの機獣を行動不能へ抑えつけ、やがて勝利の結末も視覚として見え始めて。
だが、そんな折の事。
未だに歪み続ける時空の穴の向こうから、アルドの耳に不穏な声が微かに届く。
???「……聞こえない。まだ、聞こえない……」
アルド「この声は……‼」
思わず振り返るアルド。戦慄の視線の先にまず見えたのは銀の刃。
そしてゆるりと肢体を進ませる鋭い眼光。
合成人間。間違いなく、記憶にあったそれと一致する、異端の兵士。
それからは瞬く間の事であった。
???「うらああああああ‼」
時空の穴から近い機獣から順々に、豪傑の咆哮と共に空へ舞い上がらせられる機獣の群れ。圧巻の戦闘に、機獣の群れも無視は出来ず、アルド達を傍らに置き突如として現れた銀色の合成人間に攻撃を徐々に集中させていく。
そして——、ヘレナは初めて出会う合成人間を目撃し、驚愕する。
ヘレナ「……ありえない。そんな、まさか……‼」
アルド「ヘレナ? どうしたんだ⁉」
それが強さに対してではない事は直ぐに分かった。一瞬も油断できない戦いの最中に手を止め、真っすぐに合成人間を見つめていたから。自身を襲う機獣の襲撃をアルドに守られても尚、揺るがない所を見るとその驚愕の大きさも多少は計れて。
ヘレナ「アルド‼ 彼を止めるわよ‼ いいえ、止めなくては‼」
アルド「あ、ああ……わかった‼」
そうして何かを決意したが如く杖を構えたヘレナ、体では無い何処かの悲痛を叫ぶようにアルドに懇願する。杖の先が指し示すは、今もなお最後の一体となった機獣との戦いに没頭する銀色の合成人間。尋常ならざるヘレナの様子に、アルドもまた尋常ならざる事態を直感する。
そして時を同じく、名も解らぬ合成人間は最後の機獣の額を刃で貫いた。
???「聞こえない……まだ聞こえない‼」
何度も何度も機獣の頭上に乗ったまま、貫いては刃を引き抜き、また貫く。
やがて完全に意気が途絶えた鉄の残骸から降り、雨粒を落とす天を恨むが如く叫び、刀の先を地に向け虚脱する。
狂気、明らかに正気では無い雰囲気。じりりと、アルドとヘレナは彼の佇む光景に対し畏敬を込めて武器を握る手の力を強めた。
その瞬間の事、ようやくといって良い程に銀色の合成人間はアルド達の気配に首を動かし、そして敵と即座に認定する。
足の太腿が、はち切れんばかりに一瞬で膨張した事をアルドは悟った。
アルド「くっ⁉ なんて力だ‼」
咄嗟に防ぐ合成人間の豪剣。剣撃を打ち鳴らす音の余韻を感じる暇が無い程に苦悶するアルド。力勝負では勝ち目がないと早々に感じたアルドは二撃目を前に一度身を引き、合成人間との間合いを取るべく後方へと回避する。
しかし、怒涛。
二撃目を躱されたそのままの体勢で、合成人間は肩を主戦力に置いた体当たりを敢行する。
???「お前じゃない‼ お前じゃない‼ お前では無い‼」
そして体当たりを受けた事で僅かに態勢の崩れたアルドの隙を突き、剛腕による豪剣を次々とアルドの剣に圧し当て、アルドの守備を悉く崩し始めていく。
ヘレナ「このっ……止まりなさい‼」
反応に遅れたヘレナもアルドと合成人間の戦いに参戦し、杖先から魔法のような力を放出する。しかし爆発するエネルギー弾は地に当たり、けたたましい音を弾けさせるが合成人間の身のこなしを捉える事は出来ない。
けれどもアルドの体勢を整え、激化する戦闘を振り出しに戻す事には成功した。
すると間合いを取った合成人間は傍らに持つ刀に殺意の表情を浮かべさせ、アルド達には分かり様も無い覚悟を口にする。
???「鐘の音が……まだ聞こえない‼」
アルド「鐘の音? 何を言ってるんだ‼」
???「俺は……いつまで俺は……戦えばいい‼」
アルド達「⁉」
明らかに正気を失している合成人間の言葉にアルド達は言葉を返すが、やはり声は届かず合成人間は改めて突進し刀の刃を認識した敵に振り下ろす。
再び始まる剣劇、終わりが無いとすら思えるアルドの剣と合成人間の刀の応酬。
拮抗する両者の刃の傍ら、そこにヘレナが杖を強く握る。
ヘレナ「止まりなさい‼」
一見、タイミングを見計らい戦いに参入したエネルギー弾を機に更に戦いが激化するかに見えた。
ヘレナ「きゃっ……‼」
だが、二対一をものともしない合成人間の機敏な動きでヘレナの肢体が捉えられ、体を吹き飛ばされてしまう。
アルド「ヘレナ‼ 大丈夫か⁉」
その光景にアルドも油断した。ヘレナを気遣う優しくも致命的な油断。
???「うらぁああ‼」
アルド「くっ‼」
その隙を見逃さなかった豪剣の振り上げは剣で防御したアルドの足を宙に浮かせ、その勢いのまま月影の森の木々にアルドを叩きつけさせる。
そうアルド達を退けた謎の合成人間だったが、ここで追い打ちをかける事もなく唐突にダラリと体を虚脱させ、刀の先で地面を細やかに撫で斬る。
するとその時、合成人間の後方にあった時空の穴が再び活発に活動を始め、雷鳴を打ち鳴らす。そして、
???「俺は……いつまで、戦えばいい……」
合成人間の男は、何者かに呼ばれているが如くブツブツと言葉を呟きながら時空の穴へと吸い込まれ、彼と共に時空の穴は機獣の残骸までも吸い取り月影の森に静寂を戻していく。
アルド「……また時空の穴に」
剣を杖代わりに立ち上がるアルド。心を合成人間の男に惹かれながらも先に吹き飛ばされたヘレナの元に足を進める。
ヘレナ「……アルド。次元戦艦に行きましょう」
すると、ヘレナも起き上がり既に月影の森から消え去った合成人間に向けて心に残しながらアルドに向け提案を起こした。
アルド「大丈夫なのか……?」
ヘレナ「ええ、問題ないわ。急ぎましょう、一刻も早く彼を救わないと……‼」
慟哭。ヘレナは知った。同じ合成人間に思えた謎の存在の秘密を。
その事実の名を絶望だと悟り、心の追い付かぬ体を動かしたのである。
三、求声、或いは救声。
月影の森の空に待機させていた次元戦艦に戻ったアルド達一行。
次元戦艦「ん……その顔は、何かあったようだな」
ヘレナ「……」
すると早速、遠くに見えるミグレイナ大陸を彩る青空に似つかわしくない曇った表情のヘレナに次元戦艦は気付き、声を掛けた。
アルド「ああ……また例の合成人間が現れてさ。それで、その合成人間に壊された機体の残骸を調べてみようって話になって」
次元戦艦「それだけでは無いだろう。そこのヘレナの顔を見れば分かる」
合成人間に出会った後から起きたヘレナの不調、異変を慮るアルド。しかし次元戦艦は別方向からの優しさで合理的に彼女を気遣う。すると、ようやく心の整理が付いたのかヘレナは重い口を開き始める。
ヘレナ「……次元戦艦。アナタの意見も聞きたいわ」
次元戦艦「……言ってみろ」
ヘレナ「生体反応の無い合成人間は、果たして合成人間と言えるのかしら。少なくとも私たちが出会った彼は、私の観測では生きていなかった」
アルド「え⁉ どういう事なんだヘレナ⁉」
共に合成人間と戦いを交えたはずのヘレナの衝撃の発言に、傍らのアルドは驚きの声を上げる。生きていない、その言葉の意味を一瞬では理解出来ぬ程に。
次元戦艦「……つまり死体が言葉を喋り、動いていたという事か?」
一方、外聞でしか状況を知らない次元戦艦は疑いを含む客観視で言葉の意図を整理していく。それは或いはアルドの為、だったのかもしれない。
ヘレナ「ええ……信じ難いけど彼に命というものを数字の中では感じられなかった」
ヘレナ「けど生きていたのよ。間違いなく、私達の前で叫び苦しみ、武器を振るっていた」
ヘレナ「情報隠蔽の為の細工が施されている可能性も考慮したのだけれど、その反応すら……見つけられなかった」
しかしヘレナは尚も言葉を続けた。自身が疑いようのない事実の蓄積、科学による申し子の一人であると自覚しながら不確定な迷信めいた言葉を放っているという葛藤。ヘレナの中で、知識と未知が軋みながら鎬を削る。
今のヘレナにはアルドを気遣う余裕が無かったのである。
次元戦艦「ふむ。確定している事は言えないな……しかし、手掛かりはある」
すると、そんなヘレナやアルドを見かねてか、次元戦艦は瞼を閉じるような声色で心を一旦落ち着かせ、一縷の希望を指し示す。
次元戦艦「実は、お前らが森に降りている間、時空の歪みを計測していた。その結果、そのおかしな合成人間とやらの次の行き先を割り出す事に成功している」
アルド「⁉ それじゃあ‼」
その次元戦艦の言葉は、アルドに期待を抱かせる。次元戦艦からすれば首の皮一枚の心許ない道標の光明。
次元戦艦「ヘレナの疑問は、直接本人に聞いてみればいい」
それでも謎の合成人間について答えを持たなかった贖罪代わりにアルド達の役に立てたかもしれないと次元戦艦は誇らしさを抑えながらも微笑んだようにも見えて。
ヘレナ「……そうね。言葉が通じればいいのだけど」
次元戦艦「場所はBC二万年、ゾル平原だ」
再び、或いは彼らは旅を始める。
明確な目的とそれぞれの想いを抱えて、時を再び駆け巡り始めたのである。
***
ゾル平原。アルド達からすれば途方もない時を遡った古代、未開拓の地が溢れるこの時代に広大なその平原は広がっていた。
アルド「……ここにアイツが居るのか?」
途方もない時間を掛けた進化の途中、環境への適応。アルドの住む現代やヘレナ達の未来ではあまりお目に掛かれない植物や動物たちの景色を眺めながらアルドは息を飲む。
ヘレナ「ええ。また時空の穴で転移していなければ……だけれど」
アルド「なぁヘレナ。さっき言っていた話なんだけど……」
それは次元戦艦の船上、或いは謎の合成人間と出会った時から黙し続ける重い雰囲気のヘレナへ質問をぶつける為である。気落ちしているのだろうヘレナに気を遣い、顔色を伺うようにアルドは尋ねた。
するとヘレナは、
ヘレナ「生体反応の話かしら。科学によって作られた私達が幽霊の話なんて非科学的な事、確かにおかしな話よね」
予想に反し、普段の冷静な彼女のように言葉を紡ぐ。しかし自虐混じりの冗談を、彼女らしくないと表現するならば或いは予想通りでもあって。
アルド「いや……俺は実際に剣を交えたしな……アイツが本当は死んでるって言われても」
そんなヘレナの鉄塊に似た重さの皮肉に僅かに怯み、面食らったアルドは言葉を詰まらせたものの、彼女の自虐を否定しつつ誤魔化すように腕を組み、険しい顔で話を進める。
ヘレナ「けれど事実よ。体温も、その他のエネルギーも生命が持っているはずのそれらを何一つ感じ取れなかった」
ヘレナ「私も、自分の故障を疑ったわ」
一方のヘレナは、やはり不自然と思えてしまう程に平静な声色で、無理矢理に作った感情で本心を覆い隠しているような違和感を滲ませて。
アルド「動く死体って奴か……まぁ魔法とかなら、そういうのも見た事はあるけど……」
ヘレナ「どちらにせよ私は彼を止めたいわ……彼の叫び……覚えている?」
それでも尚、隠し切れない動揺が言葉の端々に漏れ出ていた。
アルド「……ああ、『いつまで戦えばいい』だよな」
ヘレナ「アレは……誰かの命令で戦う事を義務付けられているのかもしれない」
ヘレナ「彼に命令を下す者と別れたまま、ずっと……」
ヘレナ「その最後の命令を果たそうと、命を失っても尚、戦っている……」
謎の合成人間。同じ合成人間として抱く想いは、アルドの察するソレとは異質なものなのだろう。ゾル平原の原始の光景にあって、遥かな未来、或いは過去を見つめるヘレナのガラス越しの瞳には、燃え広がる凄惨な焔が燻っているようにも思えた。
ヘレナ「ふふ……そんな気がするの。私が、こんな曖昧な事を言うのもおかしいかしら」
しかしアルドには、やはり大人びて笑う。不肖な朴念仁と時には揶揄されるアルドにすら勘づかれる程に、下手くそな強がりで。
アルド「ヘレナ……そんな事ないさ‼ 俺だってそう思う‼」
ヘレナ「さぁ、彼を探しましょう。人に作られた者同士……私は彼を止めて上げたい」
優しい仲間の握った拳、ガラスの仮面に映る人の温かみにヘレナは少し微笑みを取り戻し、それでも強がって先へと進む。
***
ゾル平原は広大である。けれどアルド達の探し人である謎の合成人間を見つけることは意外にも容易な事であった。
激しかったのだろう戦闘の残り香、残骸。それが、この時代に存在しようもない機械の鉄や油の匂いならば尚更の事である。
???「……」
謎の合成人間がアルド達の視界に入った頃合い、機獣の残骸に囲まれながらも彼は放心しているかの如く空に首の先を向けていた。
アルド「……もう戦った後みたいだな」
ヘレナ「この数を一人で……」
静寂ではあったが、激しい戦闘の余韻がゾル平原にコダマする。沈黙を貫く勝者を他所に、謎の合成人間の圧倒的な強さを改めて認識するアルドとヘレナ。
しかしその次の瞬間、そんな合成人間の強さよりも驚いてしまう事態に二人は直面する事になった。
???「空が青い……ここはどこだ」
アルド達「……⁉」
謎の合成人間の、初めて聞いた気さえする穏やかな声色。明らかに、これまでの戦闘時の獣の如き声とは比べ物にならない生きた人間の音声。言語。
ヘレナ「正気を取り戻している? 今なら……」
高鳴る鼓動。ヘレナはグッと、息を飲む。
ヘレナ「ねぇ、アナタ。少し話を聞かせてもらえないかしら?」
???「……次の相手、か」
アルド「ま、待てって‼ 俺達は敵じゃない‼」
温和に会話を交わそうと試みたヘレナ。しかし早々に不穏な気配、謎の合成人間の持つ刀の鍔が、カタリと鳴って。
アルドは慌てて一歩前に飛び出て戦意が無い事を合成人間に伝えるべく腰を剣も抜かず、両掌を見せつける。
???「しかし鐘の音が聞こえない……戦う理由は、それで十分だ‼」
だが、謎の合成人間がアルド達に対する警戒を解く事は無く。機獣を無数に切り刻んで尚、鋭さの衰えを感じさせない刀剣の煌きを構えて。
すると、そんな謎の合成人間に耐えて耐えかねてヘレナの心が破裂する。
ヘレナ「アナタの戦う理由なんて、ここには無い‼ もう戦いたくないなら、アナタは戦わなくても良いのよ‼」
???「問答無用‼」
心からの悲痛、届かぬ言葉。意味も意義もなく無情に跳ね返されるヘレナの願い。謎の合成人間が纏う気配を変え、黒いモヤが彼の体の中から噴き出し、アルド達を威圧し、ヘレナのそれらを吹き飛ばす。
アルド「くっ……やるしかないのか‼」
ヘレナ「……戦わなくても、いいのに‼」
本物の殺意から身を守る為、仕方なく抜かなければならない各々の武器。悔恨の重力で殊更に重く。歯噛みしなければ持ち上がらぬ程に。
その時だった——、
少女「きゃあああ‼」
一同「⁉」
火山も近いゾル平原に吹き降りる熱帯の温風よりも速く、空気をつんざく少女の悲鳴。
アルド「なんだ⁉」
声のする方向に体を硬直させたアルドは戸惑い、その声の主を探す。
しかしその最中の事、
???「……‼」
アルドよりも、無論ヘレナよりも先に、起きた異変に行動を開始したのは謎の合成人間であった。
アルド「あっ!」
行先は、声のした方向。恐らく少女が危機に面している現場。これまでの印象から思いもよらなかった謎の合成人間の行動に、再びアルドは一瞬、気を取られる。
ヘレナ「行くわよ、アルド‼」
結果的に、アルドは誰よりも遅く急を要するだろう事態に足を進めたのであった。
***
アルド「居た‼ あの女の子だ‼」
???「目標捕捉、戦闘開始」
一歩と半分、出遅れたアルドが恐竜の魔物に襲われている少女を発見したのと時を同じくして、謎の合成人間は凄まじい加速で一直線に巨大な魔物を斬りに掛かる。
アルド「そこの子、こっちに来るんだ‼」
少女「う、うん‼」
ヘレナ「アルドはその子の保護を‼ 私は彼に協力するわ‼」
一方、アルドとヘレナが優先するのは少女の救助。慌ただしく錯綜する状況の中、ゾル平原に響き渡るのは恐竜の咆哮と、合成人間の威嚇。
そして——、
???「うらああああ‼」
カンラァァン、カンラァァン‼
それらに紛れるような鐘の音。決して穏やかでは無い嫌な予感。
アルド「……鐘の音?」
アルド「アレは‼ まさか‼」
???「……」
雷の嘶き、恐竜との睨み合いに集中する合成人間を他所に暗雲立ち込めるような風が吹き荒れ始め、現れる最悪の予兆、時空の歪み。
ヘレナ「聞こえないの⁉ これがアナタの望んだ鐘の音でしょう⁉」
全てを吸い込み始める時空の穴の眼前で、戦いを続ける合成人間にヘレナは叫ぶ。
すがるように叫んだ。手を伸ばす先には、空中で交錯する恐竜と謎の合成人間。
アルド「ヘレナ‼ それ以上は危険だ、時空の穴に飲まれるぞ‼」
そんなヘレナにも迫ろうとする危機に、アルドもまた叫ぶ。何処に通じているかも分からない不透明な穴の向こうに引きずられつつある仲間を放っておく事など当然できはしない。
しかし、アルドも伸ばした手の先で、ヘレナは息を飲む。
ヘレナ「……私は、行くわ‼」
アルド「ヘレナ‼」
時空の穴が起こす螺旋の風に、腰元の噴出口からエネルギーを射出したヘレナ。彼女を止めようとしたアルドの手は、すんでの所で躱され、虚無を掴む。
アルド「くっ……」
悔恨。悔恨。閉ざされた時空の穴は素知らぬ顔で普段のゾル平原の光景に戻り、不甲斐なさという名の怒りで拳を握らせて。
だが——、
少女「……あの人たち、何処に行っちゃったの?」
少女「私を助けてくれたから?」
悔しさを世界に当たり散らしたい感情を抑えさられたのは、恐竜に襲われていた少女の寂しげな声があったからである。恐怖を超えた後、救われた後に込み上がる罪悪感。
アルド「ううん。違うよ、君のせいじゃない」
そんな優しい少女を責める事などアルドには出来ない。そもそも、彼女が責任を感じる事など一つも無いのだから。
アルド「二人は大丈夫。でも、直ぐに迎えに行かなきゃならないんだ」
アルド「だから急いで君を近くの村まで送らせてくれないか?」
諭すように少女の前に膝を落とし、アルドは少女にお願いをする。心惹かれる後悔を心の内で抑えながら、優先すべき事に一つ一つ丁寧に向き合う。今のアルドにとってそれは、少女に微笑みを投げかける事であった。
少女「う、うん。あの……二人に会ったらアリガトウって言いたいの」
アルド「ああ、必ず二人を連れて君に会いに行くよ‼」
アルド「(次元戦艦なら、二人の行先を調べていてくれるはずだ)」
心を急かす緊急事態、それでもアルドは少女と共にゆっくりとゾル平原を歩き始めた。
***
だが、少女を近くの村に送り届けた後ならば、とにかく次を急ぐ。
アルド「次元戦艦、緊急事態だ‼」
戦艦のデッキを何の躊躇いもなく駆けて、声を荒げる。
次元戦艦「やはりか。ヘレナの反応が無くなった時点で、状況は概ね理解している」
次元戦艦「時空の歪みの推定転移先は、大樹の島だ。行くかどうかは聞くまでも無いな」
アルド「ああ‼ 急いでくれ‼」
そして彼らは挨拶も省略し、早々に次の時代へと歩を走らせたのだった。
***
次の目的地、大樹の島。ゾル平原から二万年の歳月を経て、未来の天空に浮かぶ謎の島である。名前の通り、その島を象徴する大樹が長い時を経て尚も生命を息づかせていて。
アルド「見つけた‼ ヘレナ‼」
そこに、彼女は居た。
ただ静かに、人類が滅びゆく世界に立ち尽くすようにそこに居た。
ヘレナ「……アルド。迎えに来てくれたのね」
アルド「アイツは⁉ それから、あの魔物は……」
駆け寄ってくるアルドに振り返るヘレナ。ヘレナの無事を確認し、アルドは次に周囲の状況の確認を急く。すると、
ヘレナ「……魔物は倒されたわ。彼は、向こうよ」
慌てるアルドとは対照的に静寂に溶かすようにヘレナが呟く。その視線の先には確かに謎の合成人間の姿があった。
アルド「……‼」
???「……」
鋭い刃の先をヘレナに構えたままの姿勢で動きを止めている合成人間、その光景に彼の生命力を数字として認識できないアルドですらも実感する。
死んでいた。死んでいる。
ヘレナ「もう死んでいるわ。魔物を倒し、次は私に刃を向けてそのまま動かなくなった」
アルド「……そうか。あの助けた子に連れてくるって約束したばかりだったのに……」
生命の覇気の一つすらも無い合成人間の気配に疑いようもなく、無力感を抱きながら力なく俯くアルド。
ヘレナ「名前も聞く事が出来なかった……戦いに囚われた名もなき兵士」
ヘレナ「作られた者の宿命……私たちも、一歩間違えば彼のように……」
アルド「……ヘレナ」
捧げられる黙祷、謎の合成人間の魂なき肉体に唯一残るは、戦いへの妄執。それを同じ合成人間として自身の過去に重ねたヘレナは、他人事では無いと自らの肩を抱き寄せる。
傍らのアルドもまた、彼女の過去を知っているが故に、憐憫の心を寄せて。
ヘレナ「お願いをしていいかしらアルド。彼を、せめて最後は戦いの無い静かな場所で弔ってあげたい」
アルド「……ああ、モチロンだ」
しかし彼女の声は普段通り、自らの心内を他者に悟られまいとする強がりで平静を装う大人びた言い回しで話を進める。
ヘレナ「彼が望んだ鐘が聞こえる場所があれば良いのだけれど……むずかしい話ね」
アルド「……鐘、か」
そして話題は、哀れな謎の合成人間をどこに弔うべきか。悩み始めたヘレナの横で、アルドもまた考えを巡らせる。過去、現在、未来、様々な時代、次元、大陸を旅した記憶を遡り、相応しい場所はないかと腕を組み、心当たりを探す。
しかし、その余裕は直ぐ様に薙ぎ払われて。
???「き……えない」
アルド達「⁉」
微かに、呻くようにアルド達の耳へ他の音に紛れて届く男の声。
大樹の島に居るものは、今はもうアルドとヘレナの二人だけのはず。そんな先入観が、最悪の予感と成って一人の男へと視線を向けさせた。
???「鐘の音が……聞こえない」
最早、憎悪に近い絶望の嘆き。刃を構えていたままだったはずの謎の合成人間の姿勢が両腕をだらりと垂らし、黒いモヤを纏わせ動き始める。
ヘレナ「そ、そんな……今度は間違いなく確認したのに……‼」
アルド「動く死体……‼」
二人の驚愕を他所に合成人間は首の骨を鳴らし、死に固まっていた肉体を徐々にほぐしていく。
そして——、
???「鐘の音が、聞こえない‼」
アルド「ヘレナ‼ 危ない‼」
腕の具合を確認し終えた直後、驚きに体を強張らせていたヘレナやアルドに気付き、合成人間は狂気の瞳を刹那ほどの間合いで煌かせ、刀を振り上げ飛びかかる。
アルド「くっ……‼ やっぱり強い‼」
強烈な剣撃、たった数秒前に死から帰還した者とは到底思えぬ速さと重さ。それらがもたらす威力と言えば、咄嗟にヘレナを庇うべくその凶刃を剣で受け止めたアルドが靴の裏で後方の地面を削る結果となる程である。
更にそこからも合成人間の怒涛の連撃は続く。
???「殺し! 殺して! 殺す……‼」
狂い咲く絶望に水を叩きつけるように合成人間の口から洩れる殺意。
ヘレナ「もうやめなさい‼ アナタは、もう……‼」
耳を塞ぎたくなる悲痛な声に、ヘレナは戦いに乱暴に杖を振って割って入り、アルドと合成人間を引き離す。しかし、
???「戦い続ける……あの鐘の音が、もう一度鳴り響くまで‼」
無情。誰も望まぬ戦いが、本格的に唸りを上げる。
——???との戦闘。
???「ぐぅ……‼」
戦いの決着、否、それは一つの区切りではあった。アルド達を抑え込んだ豪剣も流れに煽られ、敗戦の色を濃厚にすることとなるだろう分岐点。アルドの一太刀を浴びた合成人間の膝が崩れる瞬間が訪れる。
アルド「もう止まれ‼ 俺達が戦う理由なんて無いはずだ‼」
その隙を突いて叫ばれるアルドの願い。戦いの無い未来。
???「お前では無い……お前ならば、あの鐘の音が聞こえるはず……」
だが斬られた傷口を抑えながらも、合成人間の言葉は狂気の域を出ず要領を得ない。
すると、タイミングを狙い澄ましていたが如く——またも嫌になる程のあの音が世界に響き渡る。
カンラァァン、カンラァァン。
荘厳な鐘の、音。
ヘレナ「また……この鐘の音‼」
アルド「時空の穴が現れるのか‼」
因果の音色に嫌悪と怒りすら滲み始めるヘレナとアルドは、その音の出所を無意識に探すが、当たりは着かない。
???「聞こえない……鐘の音が聞こえない」
そして鐘の音を探す気すらない執念の呻きが、鐘の音の出所を調べる事を阻害する。
ヘレナ「聞いて‼ 今、アナタが望んだ鐘の音が響いている‼」
???「嘘だ……鐘の音が聞こえない……」
俯き、傷をおった体で立ち上がる怨念めいた合成人間。ヘレナは必死に語り掛けて。
アルド「この音が聞こえないのか。ちゃんと、鳴っているぞ‼」
追随し、合成人間をアルドも諭す。
しかし、
???「聞こえない……まだ戦わなくては……まだ現れない」
もはや言葉は一切届かないようであった。ただ合成人間の内にある何かが彼の体を突き動かし、心すら引き摺るばかり。進むのは、大樹の島の崖の端、無神経な時空の穴。
ヘレナ「駄目、そっちは……‼」
???「いずれ……巡り合う、約束の時……」
無論、アルド達は彼を無理矢理にでも羽交い絞めにし、止めようとした。だが、その時に起きた異常は、再びアルド達を混迷へと陥れる。
アルド「なんだ……この穴の数は‼」
カンラァァン、カンラァァン。
更に打ち鳴らされる鐘の音を機に、一つでは無くなった時空の穴。無数に周囲の空間を歪ませ、雷閃が時空に次々と穴を穿つ。
運命が、宿命が、作為的に彼とアルド達の接触を阻むが如く。
???「それは……お前らでは無い。邪魔を、するなぁぁあ‼」
アルド「くっ‼」
ヘレナ「きゃあ‼」
時空の穴の複数同時出現に虚を突かれたアルド達の隙は、謎の合成人間の命絶え絶えの風体にも関わらず放たれる強靭な刃風に抉られ、アルド達の肢体は軽々と退けられて。
???『ああ……その時まで、望まれるままに俺は戦おう』
そこから起き上がる頃には、遠く、或いは近く——時空の穴の向こうから合成人間の声が空気に溶けて消えていく。そして、合成人間を吸い込むと瞬く間に収束し始める時空の穴が、アルド達に「ざまあみろ」と笑っているようにさえ思えた。
アルド「……くっ。急いで次元戦艦に追跡してもらおう‼」
またしても悔恨。届かなかった言葉、掌。僅かの間、膝を地に着くアルドではあったが、直ぐ様に起き上がり、共に倒れていたヘレナに声を掛けて。
しかし——、
ヘレナ「……いえ。もう彼を追うのは止めましょう」
地に足を付けたまま、中々に起き上がらないヘレナの心は折れていた。
アルド「どうしてだ‼ ヘレナだってアイツを止めたいって言っていたじゃないか‼」
そんな彼女が放った弱気な発言に、思わず熱くなるアルド。あの合成人間を取り逃がした悔しさ。いつの間にか彼の中であの合成人間もまた、これまでの旅で出会ってきた助けたい人間の一人になっているのは明白で。
それでも尚、立ち上がっても尚、ヘレナの心は折れたまま。
ヘレナ「あの数の時空の穴……流石の次元戦艦でも次の彼の行き先を特定するのは不可能だと思うの」
アルド「けど……放っておく訳にも行かないだろ⁉」
無理難題を課せられた情理の狭間で俯くヘレナ。一つ一つ言葉を重ね、それはまるで自分に言い聞かせているように。
ヘレナ「いいえ。恐らく放っておいても問題は無いわ。こちら側が敵意や戦意を向けなければ、きっと彼は戦わない」
ヘレナ「覚えているかしら。ゾル平原で戦いを終えていた彼の意識が戻っていたことを」
アルド「……」
その様子は言葉を積み重ねる度に増々とアルドにも虚栄に見えてくる。
あの合成人間に、会わなくても良い理由を探しているのではないかと思う程に。
ヘレナ「その後、彼は目の前に居た私達や襲われていた少女に目もくれず、魔物と戦闘を開始した」
アルド「まぁ……確かに、女の子を守ったようにも見えたけど」
そのヘレナの異変にアルドも徐々に冷静さを取り戻し、理論的なヘレナの言葉を飲み込みながらも釈然としない別の感情も湧き上がらせていく。
すると、そんなアルドが感じているのであろう違和感を察したのか。
ヘレナ「分かっているわ。それが、あまりに都合の良い希望的観測である事は」
自らを自嘲する微笑みをヘレナは見せた。ヘレナ自身も解っていた、らしくない言い訳を自らが行っている事を。
ヘレナ「それでもごめんなさい……私には、彼を壊してまで止めようという覚悟が、まだ出来ていないの……」
ヘレナ「次に出会う時も、きっと戦いになる……彼を止める為には、壊すしかない」
ヘレナ「そんな予感が……不確定な曖昧な希望に私をすがらせようとしてくる」
同じ合成人間として、同じ合成人間であるにも関わらず、あまりにも不憫に思えた存在の行く末に寒気を感じるように彼女は自らの肩を抱く。
震えていた。震えている。
アルド「ヘレナ……」
ヘレナ「私は……いつまで経っても、考えて迷ってばかりの臆病者のまま……間違わないように言い訳ばかり、人に任せてばかりで」
その口から恐怖を口にした弱々しい彼女の精一杯の強がりな微笑に、どんな言葉を返せばよいかアルドは言葉を詰まらせる。
彼もまた、残酷な可能性に気付き、その答えを持たずに居る。
しかし、アルドはそれでも、だからこそ拳を握った。
アルド「……ヘレナ‼ 俺達は仲間だ‼」
ヘレナ「⁉」
アルド「悩んでいるなら仲間を頼ればいい、人任せじゃなく、皆で考えて、皆で解決する方法を探せばいい」
数多くの困難をもたらした時空を超える旅の中、
困難に挑む度に数多くの者を掴めた掌、取りこぼしてしまった掌。後悔と再起の両方を知るそれを強く握り締め、感じてきた全ての感触を思い出す。
アルド「一人で全部を背負って、解決しなきゃいけない事なんてないさ‼」
アルド「確かに俺は頼りないかもしれないけど、仲間は他にも沢山いるじゃないか‼」
幾度となく辛い現実に打ちのめされ、それでも幸福な未来を想い、願い、握り続けた拳。
アルド「エイミやリィカ、セバスちゃん、今は次元戦艦だって居る」
アルド「ガリアードが悩んでいた合成兵士との全面戦争を止めたのは、誰か一人の力じゃなかったはずだ」
アルド「皆が平和を願って力を合わせたからこそ、あの戦争は止められた」
双肩にのしかかってきた様々な人物たちの想いがアルドの背を押し、次はヘレナの折れかけた心を繋ぎ止めようとする。
アルド「願いがあるから、結果があるんだ‼」
アルド「だからきっと、あの合成兵士を壊す以外で止める方法も見つけ出せるさ‼」
どこまでも、真っすぐにヘレナの心に楔を打つアルドの瞳。根拠など無いはずの過信とも言われかねない頼りない希望ではある。
けれど——間違いなく、それは光に見えた。とても輝かしく、眩しく、
未来を照らす光。
ヘレナ「アルド……そうね。また私は諦めて、あの時と同じ過ちを繰り返そうとしていた。ただ……立ち尽くすだけで」
開かれつつある光明の先、行く道を信じて見たくなったヘレナ。心から零れる微笑みは、アルドが放つ陽光に溶かされた雪のようで。
ヘレナ「ふふ、協力してくれる? 死して尚、戦い続ける彼を救う手立てを」
アルド「ああ‼ もちろんだ‼ 俺だってそうだったらいいなと思うさ‼」
大樹の島、天空に浮かぶ孤島にて静かな決意が固く結ばれ、長い時の中で背を伸ばした大樹と共に育った緑に無色透明の華が咲く。
アルドとヘレナ、二人の間に笑顔の約束。
その後、ふとヘレナは謎の合成人間が消えた大樹の島の崖の先に遠い目を向ける。
ヘレナ「……今度はきっと、あなたを戦いの連鎖から解き放って見せる」
ヘレナ「そうしたら……アナタの名前を聞かせて。名も知らぬ兵士さん」
蒼海の空、もはや届く事は叶わない次元の向こうへ言葉を紡ぎながら立てる誓い。
そして願い。優しいヘレナの声には、とても強い覚悟が漲っていたようである。
偶然か、或いは運命か——アルドの出会いから始まった旅路に、祝福の鐘が鳴り響くのはいつになる事か。それを知る者は、まだ居ない。
彼の者の放浪は尚も続く。
無名兵士 紙季与三郎 @shiki0756
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