外伝

魔法少女ドロシー

 私はエイミー・イエローブリック。シニアハイスクールの1年生。USアメリカ海軍ネイビーで働く父親が沖縄に転属になったので、家族ともども引っ越してきたの。


 実は私は日本のマンガやアニメが大好きで、ケーブルテレビやインターネットで昔のアニメとかを見るのが趣味だった。そのおかげで友達からはweeaboo日本オタクなんて呼ばれたりもしたけど、むしろ勲章だと思って日々布教活動をしていた。


 そして父の転属でついに憧れの日本の大地に立つ事が出来たのだ。ありがとう海軍ネイビー! ありがとうUSA!


 日本語はまだまだ挨拶くらいしか分からないけど、いつかは字幕無しでアニメを見られるように、これからガンガン勉強するつもり!


 そしてそして、日本に来てから1週間程した頃かな? 夢の中に喋る猫が現れて私に「悪の侵略者から地球を守る戦士になれ」って言ってきたの。

 とっても興奮したわ。だって憧れの日本に来て早々に、こんなアニメみたいな展開が起きるなんてとっても不思議! まるで夢みたい!!


 まぁ夢だった訳だけど、夢でも私は凄く嬉しかった。「日本の漫画の世界」の主人公になれた気分でその日1日ゴキゲンだったんだ。


 それから3日程してから、あの夢で見た猫ちゃんから再び連絡があった。夢じゃなくて本当に私は戦士に選ばれていたのだ。

 猫ちゃんからは「公言するな」と言われていたので、父にも母にも打ち明けられないのは辛かったけど、これもヒーローの宿命なんだよね。


 …そして私は『念動力』の力を手に入れた。

 いや、嬉しいのよ? スーパーパワーと素敵なコスチュームを貰えた事はとても嬉しい。でも、でもね…? 


『特殊能力無しでどうやって沖縄から関東の事件に出撃しろ』っちゅーねん! いちいち飛行機や船に乗れってか!? 着く頃には終わっとるわ!!


 なんて心の叫びを抑えつつ、私は猫ちゃんから『仕方ないから』と別命あるまで待機を命じられた。


 しかも待てど暮せど別命とやらは送られてこない。信じられない事に私は更に1ヶ月近く無為に放置された。


 ずっと待機というのも暇なものだ。そこでふと気付いてしまったのだ。『能力ちからはあるのだから、沖縄こちらでソロ活動すれば良いじゃないか』とね。


 何度か練習してみたが、私の念動力は『手を触れずに10m以内の凡そ5t位までの物体を動かせる』というの物らしい。ちょっとしたヒーローの真似事としては十分すぎる能力だ。


 もらったコスチュームは、全身黄色のレオタードに戦闘服らしい胸甲や女の子らしいフリフリした飾りが付いているが、顔は丸出しの仕様だった。

 ここは悩んだ。USA式に顔を出すか、日本式に顔を隠すか?


 本来良いことをしようとする者は、後ろめたい事がある訳でも無いのに顔を隠すべきでは無い。しかし、私が下手に米軍関係者だと分かると父の仕事にも差し支えるし、国際関係にも影響するかも知れない。


 それにせっかく日本に来たのに、強制送還なんて目にでも遭ったら死んでも死にきれない。

 という訳で変装用のヘルメットを後で自作しようと思ったの。


 正義のヒーローだから名前も考えないとね。最初に思いついたのは『魔法少女マジカルエイミー』だったのだけど、『エイミー』だと即バレするよね。あと何か舞台で手品とかやりそうだよね。


 何としてもバレは回避したい。でも何となくエイミーだという自己顕示欲も捨てがたい。


 そこで思いついたのが『魔法少女マジカルガールドロシー』だった。

 私のファミリーネーム『イエローブリック』は「オズの魔法使い」で主人公達がエメラルドの都に行く時に進む道の名前。

 そしてその主人公の名前が『ドロシー』だ。因縁がありつつもエイミーだとは分からない絶妙なネーミング、自分でも超気に入ったよ。


 よし、そうと決まれば明日から早速決めポーズの練習よ!


 魔法少女ドロシー! 華麗に人助けしてみせるんだから!!

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