第1回レットゥルトゥーア会議

《では君達に戦う為の力、超能力の幾つかを貸与したいと思う。念動力、瞬間転移、肉体強化、発火能力、精神感応の5つだ。この中から被らないように選択してくれ給え》


 ここからは戦士各人の台詞が散発するので、誰がどの発言か分かりやすくするために、発言の前に『色』を置いて区別する。


青「せっかくの顔合わせなのにリモートでなんて残念ね。猫ちゃんモフモフしたかったのに…」


赤「そんな事より服の色が気に入らないから変更して欲しいんですけどー? あたしピンクが良いって言ったじゃん。なんでそんなゴリラみたいな奴がピンクであたしがダッサイ赤なのよ?」


青「あ、なら私もピンクが良いわ。青って老けて見えるから嫌なのよね」


桃「我、黒、所望」


緑「ふっ、高貴な黒は私にこそ相応しい…」


 好き勝手に喋りだす戦士達。何だ? 地球人てのは会議もまともに出来ない連中なのか?


赤「もーいーじゃん、皆でピンクにしよーよ、可愛くなるよ」


青「そうね。統一感があった方が見栄えが良いかもね。黄色のかたもそう思わない?」


 和美に話を振られたエイミーだが、軽いノリについていけないのか困り顔で苦笑していた。


《お前ら五月蝿うるさい。今は能力の話してんの。色はもう変えられませんから! あとピンク、お前はなぜカタコト喋り? あとイエローも言いたい事があるならちゃんと言うべきだぞ?》


黄「ではあの、ちょっと良いですか?」

 そう言ってエイミーが右手を軽く挙げる。


《発言を許可する。どうした?》


 俺の言葉にエイミーは申し訳なさそうに口を開く。


黄「あの、私は日本語が分からないので、猫ちゃん以外の皆さんが何を言っているのかまるで理解できないのですが…?」


 …なん、だと…?


 俺と戦士達は念話テレパシーを通じて交感しあっている。言語は用いない。だから今までつつが無く会話が出来ていた。

 地球人が惑星統一言語を持たないとは盲点だった。そこまで未開の星だったとは……。


 仕方ないのでエイミーの思念を俺が通訳して他の4人に流すことにする。ミナレガのリサーチ不足で余計な手間が増えてしまった。


《では気を取り直して能力の配分に移りたいと思う。各人希望の能力があるなら言ってくれ》


赤「はい! あたし転移テレポートが良い! 学校まで一瞬で行けるとか最高!!」


青「あ、それなら私も転移テレポートが良いわ」


黄「私も転移テレポート…」


《被らせるなって言ってんだろ! 他の2人も転移テレポートとか言うなよ?》


緑「ふっ、全てをき尽くす紅蓮の炎使い、その名も『シャルロット・Cクリムゾン・グリンリバー』…」


桃「我、肉体強化、希望」


《…よろしい、では被った3人で話し合って決めてくれ。残るは念動力と精神感応だ》


 その後、譲った和美が精神感応を選択し、咲子とエイミーでリモートジャンケンの結果、咲子が転移テレポート、エイミーが念動力となった。


 よし、今日はこんな所だな。そろそろ侵略者ズコビェースの尖兵が地球にやってくるだろう、新たな力を試すのは本番でも大丈夫なはずだ。


 ただ、この時のエイミーがまるで世界の終わりみたいな表情をしている事に、俺は全く気が付いていなかった。

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