青木 和美

 次なる相手は青木あおき 和美かずみ。先の赤井咲子と同様にこの娘も高等学校の生徒らしい。咲子の低知能ぶりには逆に驚いてしまったが、今度はその肩書きに恥じぬ高い教養を示して欲しいものである。


 しかしこの『猫』と言う現地生物は擬態にとても適しており都合が良い。身体の機動性が高く、どこに居ても怪しまれない。現地人の反応は概ね好評で、縁もゆかりも無いこの小動物に食物を与えようとする者もいる。


 青木和美はそんなタイプの現地人だった。彼女の学校帰り、1人になった所で接触を試みた。

 肩まで伸びた髪にカチューシャを付けた、清楚な感じの娘を見つけた。彼女が和美だ。


 俺は和美の前にすとんと現れ、彼女に向けて「にゃあ」と鳴いてみる。


「やん、猫ちゃん♡」


 非常に好感触だ。初見で『きたねー野良猫』などと俺に暴言を吐いた咲子とは大違い。和美には咲子に無い品性を感じる。


 和美はカバンの中から鰹節の小分けパックを取り出して俺の前に撒いた。なんで普段からそんな物を持ち歩いているのかは謎だが…?


《えー、ゴホン。青木和美よ、まずは落ち着いて話を聞いて欲しい。私は(中略)君の故郷である地球を守って欲しい》


 …………………。


 俺の念話テレパシーにはノーリアクションで、和美は一心不乱に俺の頭や背中を撫でていた。


「冬毛のモフモフキジトラちゃんかわいーなぁ。首輪が着いてるから飼い猫かな…?」


 それは首輪では無くて擬態の為の装置だ。手荒に扱わないで欲しいのだが。


《…いや、あの、ちょっと話を聞いてくれる?》


 ようやく俺の念話テレパシーに気づいたのか、和美は辺りをキョロキョロと見回し、その視線はやがて俺に辿り着いた。


「ひょっとして猫ちゃんが私に話しかけてるの? 凄い! 漫画みたい!」


 ふむ、どうやら赤井咲子よりは理解力が有るようだな。俺は改めて和美に彼女の使命について説明した。


「…ふーん、なんだかよく分からないけど、猫ちゃんが困っているなら助けて上げるよ? 猫ちゃんに代わって110番かけるくらいは出来るよ」


 …こいつ絶対分かっていないな。


 まぁいいや、咲子同様メンバーをまとめてから改めて説明した方が効率が良さそうだ。

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