赤井 咲子 その1
最初の
ミナレガの報告書によれば彼女は高等学校に通う16歳だそうだ。
素晴らしい。高等な学校に通っていると言う事は、知能のレベルも周囲の現地人に比べたらそれなりに発達しているのだろう。彼女自身の使命についての理解もきっと早いに違いない。
俺は赤井咲子が自室で1人でいる時間帯を見計らって接触を取ることにした。地球にいる間は正体を隠す必要があるので、この星の『猫』と呼ばれる生物に擬態して彼女の住居に近付いた。2階建ての質素な住宅だが作りはしっかりしており、簡単に風雨に潰れる事は無さそうだ。
素早く、音も立てずに2階の彼女の部屋に取り付き。中を覗き込む。赤い髪の若い女がなにやら携帯通信端末を見ながら大笑いしていた。
この娘が赤井咲子で間違いないだろう。
俺は目を閉じて咲子に
《赤井咲子… 赤井咲子よ、聞こえるか…? 私は銀河警備隊のパタラデン。地球は狙われている。君のその力を貸して欲しい…》
この星の現地人にとっては私の様な存在と出会うのは初めてだろう。なので出来るだけ刺激をしないように細心の注意を払って呼びかけた。
…………………………。
……ノーリアクション。相変わらず携帯を見ながら馬鹿笑いをしている咲子。あれ? 聞こえなかったかな…? もう一度同じ内容の念話を強めに送る。
今度は反応があった。怪訝な顔をして部屋中をキョロキョロと見回している。
俺は満を持して咲子の部屋の窓をコンコンと手で叩いた。彼女に俺を見つけて部屋に招き入れてもらってから、ゆっくりとその使命について説明するつもりだ。
やがて咲子は窓に目をやろうともせず、何事も無かったかの様に、またベッドに腰掛け携帯を見ながらゲラゲラと笑いだした。
大体にして携帯から流れ出る叫び声や笑い声の音量が大きすぎて、俺が窓を叩いて出した音など簡単にかき消してしまっていたのだ。
…そろそろ怒ってもいいかな…?
俺はその手に備えられた爪を光らせ、咲子の部屋の窓ガラスに思いっきり爪を立てて引っ掻いてやった。
全ての生物の神経を逆なでする大きな擦過音に流石に驚いた咲子は『何事か?』と窓に駆け寄る。そこでようやく俺を見つけて運命の出会いとなる訳だ。
窓を通して俺と咲子の目が合う。窓を開けて熱い視線で俺を見つめた彼女の第一声はこうだった。
「あ? なに? きったねー野良猫? 餌なら
そう言って窓はピシャリと閉められた。
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