最後の食事

三枝 優

逃亡の果てに

 俺は病にかかった。

 医者には手術を勧められた。


 だが、何か怪しい。

 世界で初めての・・・とか。この研究が成功したら世界が変わる・・・とか。

 取りつかれたように話す医者。


 手術の予定が近づくにつれ、だんだんと怖くなった俺は夜中に点滴のチューブを引きちぎり病院から逃げた。


 逃亡先に困った俺は、元カノに公衆電話で電話した。


 彼女とは駅のホームで落ち合った。そして彼女の部屋にかくまってもらう。

 夕食を食べながらお互いの状況を話す。

 彼女は今は一人だと言う。俺もパートナーは久しくいない。


 懐かしさもあり、いつの間にかベッドで抱き合っていた。

 久しぶりの彼女は・・・素晴らしかった。



 これが最後の食事、最後の情事になるとも知らずに・・・



 朝、彼女はベッドから出ると服を着て部屋を出て行く。

「朝ごはんを買ってくるわね」


 だが、15分後に部屋に入ってきたのは彼女ではなかった。

 白衣を着た何人もの看護師たちがぞろぞろと。最後にあの医者が入って来た。

 狼狽した俺に、医者はにぃと笑って言った。


「みいつけた」





----


 場末のバー。


 前髪の長いイケメン相手に、俺は飲めもしないウィスキーのグラスを持って話している。

「こうして、俺は改造人間になったんだ」

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