第3話

依頼を終えたロットは先程の道を通り近くにある公園へ向かう。


???

「おお、ロット。来たか。それで?どうよ?」


体格がロットとは比較にならないほど大きく、貫禄がある男がそこにはいた。


ロット

「ここにいたのは、お前かパイザン。昨日標的にまんまと逃げられて泣いていた弱虫が、俺のプライベートに来るな!」


パイザン

「いやぁ、それでもよー。ここが待ち合わせなんだからしゃーねぇだろ。」


パイザンと呼ばれる大男は眉間にシワを寄せながらくつろいでいた。


ロット

「こっちは奇襲失敗するわ、殴り飛ばされるわで大変だったんだからな!」



ロットは地団駄を踏み、パイザンにあたる。


パイザン

「まぁ、落ち着けよ。もうそろ雇い主もくる頃だ。俺らが失敗するのを覚悟で雇ってくれてんだ。感謝しよーぜ。」


ロット

「俺らって、お前と一緒にするな!俺はちゃんと交戦してきたっつーの!」


指を指しながらロットは怒鳴る。


???

「二人とも揃ったのはいいんだがあまり騒がないで貰っていいかな?」


2人が声がした方へ向くとそこには黒いタキシードを来た男がやって来た。

男の髪は既に白くなっているほどの老人だがその立ち姿は老いを感じさせない威厳があった。


???

「さて、貴殿方の依頼ですが予想通りのようですね。」


パイザン

「ふんっ!俺らに達成できない依頼をさせて何が目的なんだ?あんた。」


ロット

「それに、まだ名前とかも聞いてないんだけどな。」



???

「おやおや、失礼。私は超能力管理協議会上層部の丸鐘と申します。以後お見知りおきを。」


丸鐘は頭を深々と下げお辞儀をする。


パイザン

「超能力管理協議会って…あのJEIが所属してる所の上層部か!」


ロット

「ふんっ!TKGだか上層部だかは知らないけど、俺らが負けるのを想定してたのに依頼したのはなんでだ!」


丸鐘

「聞きたいことが沢山あるのは承知しております。ですがここでの立ち話は情報漏洩の危険がございます。一度我々の本部に向かって頂きその都度説明させていただきます。」


丸鐘は車に2人を案内する。


丸鐘

「さぁ、こちらへ。」


2人とも納得のいかなそうな顔を浮かべ車に乗った。




その頃、進真は買い物を終えて住宅街を一人歩いていた。

ロットの依頼主とやらは俺の情報を持っているのにも関わらずロット一人を俺に向かわせた。相手からすれば駒にすぎないが俺の力と人間性をはかるには十分だということだろう。

それとも他に何か意図があるのだろうか?


(随分と舐められたもんだな)


住宅街を抜け、人気の無い一本道に出た。

広い空き地のような場所で辺りにはゴミが散乱している。


このまま行けばやがて公園が見えてくる。

しかし、進真は視線を感じそちらを向く。


右側にボロボロになりながらも形を保っている鉄骨がある。その鉄骨の上にフードを被った男が立っていた。

男はこちらが視線を返すと鉄骨から降りてこちらに歩いてくる。


進真

「お前もどこかの刺客か?」


男がわずか二、三メートル程まで近づいてきた所で、進真はもう1つ別の気配を感じていた。

(新手か、それとも一般人か…)


(一般人だとしたらこの状況は不味いな…この男…この感覚は間違いなく超能力者だ。一般人に見られたり巻き込んだりすることはできない…

なら…)


進真は気配とは逆の方へ走り出す。

男が刺客ならば追ってくるはず。

どのみち気は引けるはずだ。


しかし、男は進真が走り出した瞬間、逆に止まった。そして、手を広げながら前に出す、出した先にあるものは…


(…!まさかこいつ!)


進真だった。


ドォン!


その音と共に男の広げられた手からは人一人飲み込むほどの巨大なエネルギーが放出されていた。


白く光るエネルギーは進真の方へ素早く飛んでいく。


(くそ!こっちも使うしかないな!)

進真は体勢を整えて防御に入ろうとする。


その時、



「逃げて」



誰かがエネルギーの前に現れた。

その人物は手に何か棒状のものを持っている。


「フレイムエンチャント」

現れた人物の手に持っていたものが激しく燃え上がった。


「はぁ!」


ダン!と音とが鳴り、エネルギーは二つに切り裂かれた。


切り裂かれたエネルギーは進真の遥か後ろにあった車に当たり、飛散していった。



「一般人相手に超能力使って、なにがしたいわけ?」


手に持っている棒と同じくらいに赤く染まった首まで伸びる髪、背中からも分かる引き締まった肉体。

エネルギー切り裂いた人物は男にも勝るほどの肉体を持った女だった。


「普通、一般人に見つかるのはタブーじゃないのかな。」


この女も超能力者だった。その証拠に燃え上がった炎は女の手には燃え移っていない。


「それよりも、あんた組織のやつらでしょ?」


女は戦闘態勢に入る。


「ちょっと聞きたいことがあんだけど」


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蔵一進真は平穏な日常を求める kahu @kahu-883

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