私の死なない理由
こういう病気になる前から、私には強い自殺願望があった。
両親から存在を徹底的に否定されていた私は、自分が全生命のゴミにしか感じられなかった。口にする野菜も私より優良種に食われたかったろうにとか、私のせいで死んだ命に申し訳ないとか。学校の先生もクラスメイトも、こんな人類の癌に関わらせてどんなに嫌な思いをしているだろうとか(実際にいじめられていたので)。そんな事ばかりを考えては、階段から後ろ向きに倒れたら死ねるかな、教室の窓からでも頭を下にして落ちれば死ねるかな、と、全ての思考の裏で副音声のように『死』への憧れと計画が流れていた。
病気になってから、私は副音声での計画を行動に移すようになった。
カッターを手首にあてたり、処方された薬を全部飲んだり、水を大量に飲み続けたり、ベルトやタオルで首を絞めたり。それでも死なない自分にゲラゲラ笑い、数日後にはまた繰り返す。
死ぬまででなくても、髪をぐちゃぐちゃに切ったり、腕にタバコを押し当てたり、自傷行動も相当にやった。生きる事が辛かったし、正直言うと今も辛い。
それでも死ななかったのは、自分の死後を想像してしまったからだ。
私をいたぶった両親は、絶対に泣かない。
悲し気な仮面の裏で、迷惑だとぶつくさ文句を言う。
父は葬式にかかる金に文句を言い、私の負債の始末に文句を言う。
被害者面をして、私の彼を2度と立ち上がれなくなるまで責め続ける。
父は正義感を気取っているが被害妄想が強く、とてつもなく無知だ。
あの人にありもしない不貞で殴られたのは、1度や2度じゃない。
母は、同情を引くために「彼のせいで娘が死んだと」言いふらすだろう。
もしかしたら、ありもしない病気をでっちあげるかもしれない。
実際に、母には我が子を使って見栄のために嘘をついた、前科があるのだ。
保身のために娘まで裏切り、家から追い出した人間に、何を期待しろというのか。
私には、弟が2人いる。
私は弟とスクラムを組んで、この両親と戦ってきた。弟とを守るという自負が、私を生かしていたと言ってもいい。
「両親に悲しまれない」という予測も辛いが、弟達を修羅場に巻き込みたくない。兄弟全員が見限った両親の、更に穢れた醜い部分を、改めて見せるなんて酷すぎる。
特にうちの母は、我が子を下僕としか思っていない。私の自殺が引き金になって、弟がまた無理な使役をされるのはたまらない。
死にたいのは症状だ。だからそれはしょうがない。
だけど本当に死んだら、楽になれるんだろうか。
悲しんで欲しい人は、悲しむだろうか。
大切な人が、無駄に壊されやしないだろうか。
自分の死が、曲げられずに伝えられるだろうか。
私は、死んでもいい理由を何度も考えた。
だけど、死んだら不幸になる未来しか出てこなかった。
大切な人が痛めつけられる、そんな未来しか見えなかった。
だから私は絶対に死ねない。
そんな親がいる事実を広め、両親の面目を潰し、似たような環境で耐えている人々の目を覚まさせる事ができたなら、その時やっと自分で死ぬ事を選べるかも知れない。
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