怯えるなかれ。ただし侮るなかれ。

 双極性障害になると、よく聞くエピソードが「躁のせいで酒やギャンブルや異性に溺れ、攻撃的になり、借金まみれになり、不幸になる」という話だ。


 あー、まぁ不幸だけは置いておこう。幸か不幸かはあくまで主観であるべきだ。


 ただ、双極性障害と分かって治療をしている人ならば、ギャンブルしたってまず我は忘れないし、理性が飛ぶほど攻撃的にはならない。今の薬は本当に凄い。他人かと思うほど、性格が落ち着いて丸くなる。


 しかし、意外とやらかしがちなのが『退職』である。上を目指す前に、逃げだす前に、その気持ちに一旦蓋をしよう。双極性障害の人は、躁や鬱になると辞めたい願望が猛烈に強くなる事があるのだ。鬱は休めば落ち着くが、躁というのは本人に自覚がない。準備のない冒険心は、非常に危険だ。

 だから、まずは一か月だけでも気持ちを寝かせる。それでも辞めたいのなら、働きながら転職活動をする。退職願は転職先が決まってから、これは鉄則。

 ――うちは、彼がやらかして貧困難だ。なんでコロナ禍の最中に仕事辞めた、バカ!


 私も借金は結構な額になっているが、それは家計を共にしている彼が仕事を辞めるたびに数か月無収入になっているためだ。彼は過去に踏み倒した借金のせいで(どうやら、診断が降りる以前から発症していたもよう)、お金が借りられない。だから私が立て替えているうちに、借金がえらい事に……。私が立てた貯金計画は、彼のせいでボロボロです。

 家族のためにも、自分のためにも、仕事を辞めるのだけは一旦待って!(切実)


 まあ、借金だけは確かにその通りなのだが、酒とギャンブル、異性との不純交際は私にはない。何故なら、そういうものに逃げる必要がないからだ。最大のストレス源だった実家と縁を切った途端、仕事が一気に楽しくなって何かに逃げる必要がなくなった。

 それまでも縁はなかったけどなぁ。酒は強いから酔えないし、ギャンブルは原理を知って白けちゃったし、友達が異性しかいないレベルで私が女扱いされとらんし。


 まだ薬物治療だけの人は、少し注意がいるかも知れない。ストレス源から離れない限り、『逃げたい』という衝動が歪んだ形で出かねない。それでもちょっとだけ用心深く行動すれば、大きな損を背負う事はない。

 そしてできればストレス源からは全力で逃げよう。そうすれば、薬もよく効くようになるし、波がなだらかになって生きやすなる。何より、心配されるような「酒・ギャンブル・異性・暴力」に逃げる必要もなくなる。

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