第60話譲り合い



《鬼王の槍剣》を2つ呼び出し両手に持ち構える。

体を低くした瞬間に弾けるように木のモンスターに向けて走り出す。

獅堂も真に続くよう《一等騎士の短剣》の短剣を構えて走り出す。


「チョット待つネーー!!」


「いきなりネ?!」


深く持った《鬼王の槍剣》を木のモンスターの体に深く突き刺し上空に放り投げる。

獅堂は《一等騎士の短剣》を木のモンスターに目掛けて投擲する。

投げられた短剣は左肩に深く刺さった。


「獅堂!!」


真の掛け声に獅堂は刺さった短剣を遠隔操作してその左肩を斬り落とす。

そして流れるように左肩から右肩を斬り落とし抵抗の手段を封じる。


「上手いネ!」


落ちて来た木のモンスターをまた上に突き飛ばすように《鬼王の槍剣》で攻撃する。

すぐさま落ちて来るが片方の《鬼王の槍剣》で上に追いやる。

何度も何度も突き刺すが一向に木のモンスターが消える気配が無い。


(なんで死なない?……人間と同じ心臓となる部分がないのか?!)


「くっ!獅堂!」


「分かった」


真が必死に声を上げるとなんとか意図を汲み取れた獅堂が短剣を操作し体を両断する。


「なら……!」


真は落ちて来る木のモンスターを撃ち上げる事なく自分と同じ高さになるまで待つ。

そして


「うらぁぁぁ!!!!」


全力で木のモンスターの上半身を蹴り飛ばす。

爆発的な勢いで吹き飛ん先はこの広い空間を作っている大木の1つだった。


大木にぶつかり地面にずり落ちる。

一度立ち上がろうとしたが下半身がないため少し動いただけに留まった。


「獅堂固定!!」


突然の要求に応えて獅堂は《一等騎士の短剣》を頭目掛けて投擲する。

一瞬にして木のモンスターの頭を大木に縫い付ける。


(【雷帝】は焼き焦がす事は出来るけど消し飛ばせない……適当に斬って調べしかないか?)


《鬼王の槍剣》を仕舞い《紫紺の短剣》と《一等騎士の短剣》を両手に持ち動けないように木のモンスターを全力で斬り刻んで行く。

獅堂は助けを借りるため猫耳中華娘の所で駆け寄る。


「すいません!真では決め手に欠けるのでさっきの頭吹き飛ばしたやつ出来ませんか!えっと……名前なんでしたっけ?」


「そう言えば言ってナかったネ?取り敢えずニックネームとして猫娘(マオニャン)とでも呼んで欲しいネ」


「私はシャンシャンとでも適当に呼ぶネ」


「分かりました。えと、猫娘さんさっきのやつお願い出来ますか?」


「任せるネ!シャンシャン弱点調べるネ!」


猫娘の指示にシャンシャンは魔力を木のモンスター目掛けて飛ばす。

それに気付いた真は少し体をずらし魔力の通り道を作る。

魔力が上半身に浸透する。

内部を調べるとシャンシャン驚いた表情になる。


「クッ!あのモンスター体の中に核となる物があるのはいいケド。物凄いスピードで体内を移動しているネ。でも腕には移動していナいみたいだから頭含めた体を吹き飛ばせばイケるネ」


猫娘が先程頭を吹き飛ばしたアイテムを装備する。

何か操作をすると真と獅堂が動けないように抑えた木のモンスターを見据える。


「真サン!上に飛ばすネ!!!」


即座に獅堂が頭に刺さっていた短剣を抜き自分の手元に引き寄せる。

短剣から瞬時に槍剣へと変えると下に落下を始めた木のモンスターの胸に突き刺し先程と同じ手順で上空に思い切り撃ち上げる。


「死ぬネェェェェェエェ!!【ストライク・バンカー】!!!!」


ガチン


重い音が離れた位置にいる獅堂やシャンシャンの耳に届く。

橙色の光が機械から洩れる。

獅堂と真は知らないがSランクモンスターの魔石5個消費されている。


中国が開発した魔石を利用する最先端の武器は木のモンスターの頭と胴体どころかその3倍は余裕で上回る魔力を放つ。


「シィァァアァァアァァァア?!?!?!」


その断末魔を最後に木のモンスターの魔力反応が消失した事を全員が確認した。


(威力やっば……こういう手合いの相手なら俺より確殺力は上だな)


(あの馬鹿でかい武器を軽々と振り回すなら少なくとも筋力の値は俺より上そうだにゃぁ〜)


圧倒的な火力を見て真と獅堂は呆然としていた。

その圧倒的な火力を見せつけて当の本人は流石に反動が酷かったのか武器を装着している右腕を抑えていた。

反動で肩がイかれたようだ。


「猫娘とか言ったか?肩大丈夫か?」


「超高価な魔石を消費して放った一撃だヨ。肩がイかれない方がおかしいネ……」


息も絶え絶え、汗が流れるように額に浮かんでいた。

シャンシャンが猫娘に歩み寄るとポーションを手渡した。

左手だけでなんなく飲むと少しだけ顔のキツそうな表情が和らいだ。

そして更に回復魔法をかける。


「ポーションを使った後に回復魔法を掛けると治りが通常より良いネ。これ豆知識」


「へぇ〜初めて知ったな」


「戦って怪我としたら自然と理解していくものと違うネ?」


「「殆ど怪我という怪我した事ない」」


獅堂は優秀なヨハネというアシストがあったから怪我の機会が一般的なハンターより遥かに少なかった。

真の場合は言わずもがなデルガという回復魔法が得意な存在がいたからポーションに頼るまでも無かった。


「「2人は少しオカしいネ」」


「「その言葉そのまま返す」」


ふざけるのが一通り終わるとドロップしたアイテムを拾う。

このボスモンスターアイテムの分配が問題だった。


「最後トドメ刺したのは猫娘さんだからこのドロップアイテムは貴女達が貰ってくれ」


「俺はそこまで役に立たなかったから真の意見に賛成〜」


猫耳中華娘2人にドロップしたアイテムを差し出す。


「いや、でも私こそ本当に何もしてないネ……。だからこのアイテムは受け取れないネ!受け取る権利があるとは私意外ネ!」


シャンシャンはアイテムの受け取りを断固として拒否した。


「それに……出口が分からなくなった私達を連れて来たんだ相当迷惑が掛かってるネ。道中自分達でも倒した魔石くらいで充分」


真達の意見が劣勢になる。

渋々魔石や武器類は受け取るがボスからドロップした【精霊巨人の外套】2つは猫耳中華娘に押し付ける。


「チョット!要らない言ったネ!」


「私は欲し」


シャンシャンが拒否をする隣で猫娘は本音が溢れる。

そんな猫娘の頭を叩くと真を正面から見つめる。


「確かに貰えるのは有り難いネ。でもあくまで私達は助けて貰っている身。受け取るのは……少し抵抗があるネ」


「ならこっちも言わせて貰う。俺は決め手に欠けてたから決着がかなり長引いた。だけど君達がいたから俺がなくなった経験値を独占出来なかったのはかなり惜しいがアイテムはそこまで重要じゃないんだ」


「何故ネ?」


「もう既に」


「沢山持ってるから」


真と獅堂は地面にありったけの武器を出現させる。

長剣、短剣、槍、短槍、斧、手斧etc

あたりを埋め尽くす武器が現れると猫耳中華娘の2人を目を白黒させる。


「これは……」


「また分かる通りまだまだストックはあるんだ。だから遠慮せず貰ってくれ」


「……分かったネ。ありがとうネ」


「(よっしゃぁぁあぁぁあ!!やったね!外套ゲットぉぉ)」


若干の照れを交えてお礼を言う。

猫娘は小声で物凄く喜んでいたがシャンシャンに気付かれ頭を叩かれる。



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ダンジョン世界で俺は無双出来ない。いや、無双しない 鐘成 @Kanenari

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