山奥の小さな集落にある、十七年に一度ご開帳の日を迎える秘仏のお話。
ホラーもホラー、それもゾワゾワくる恐ろしさのあるお話です。主軸にあるのが秘仏、要はお寺の御神体というのがもうすでに良い。普段は秘匿されているもの、すなわち「見てはいけない何か」の恐ろしさ。加えて、それが衆生に救いをもたらす仏様という存在、つまり本来は恐怖どころか親しみを持って接するはずの対象であること。いわゆる「バチが当たる」というような、信仰と表裏一体の恐ろしさ。人が根源的に恐怖を覚えるあれこれがうまく絡み合い、それにより読み手の心をじわじわ居竦めてゆく、この重たく分厚い恐怖の醸し方が本当に絶妙でした。こっわ!
手触りというか、現実感のようなものが好きです。出来事そのものは創作の物語らしいところもなくはないはずなのに、でも全然そんな感じがしない。絵空事や作り物めいたところがなく、なんだか生々しい「ありそう」感がある。リアリティラインの匙加減のうまさもあるのでしょうけれど、単純に話の持って行き方や語り口が巧みで、気づけば首までとっぷり浸からされていたような感覚があります。
あと、単純にアイデア(と言っていいのか、要はタイトルの部分)も好き。〝逆〟になっているご開帳。なんともいえない不穏さと、「なんで?」と気にさせる要素の両立のような。総じて、非常に丁寧に練り上げられた、完成度の高い作品でした。ちょっとネタバレ気味の感想になるかもですけど、「たぶん嘘なんだろうな……」と思わせられちゃうあれが素敵!