物語には書き手が居る。

ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』をベースにしているであろう、こちらの作品の舞台は『淘汰の国』。それも世界に淘汰された者が集まるという。

とはいえアリスが行き着いたこの世界に居るのは『不思議の国のアリス』に登場する名だたるキャラクターたち。白兎やハートの女王はもちろん、三月兎に帽子屋に……より一層個性的に見える彼らは、アリスに出会う度に『またアリス候補がやってきた』『今度のアリスは……』というようなことを言う。

そして好奇心旺盛なアリスは興味と混乱の狭間を揺蕩いながらも、あれよあれよと言う間にハートの女王の元へ辿り着く。だが、ファンタジーとナンセンスを織り交ぜた世界の中で、次第に不条理に満ちた残酷さが見え隠れしはじめ、流石のアリスも足がすくんでしまう。

果たして彼女も世界から淘汰されてしまうのか。それとも……。

『不思議の国のアリス』は元々、作者のキャロルが知人の娘であるアリスに即興で語って聞かせた〈おはなし〉がベースになっている。しかもアリスが視ていた夢の中の物語という設定。

では、この『淘汰の国』は?
彼らはどこからやってきたのか。そして一体何者なのだろうか。アリスは一体何処へ向かっているのか。

それが明らかになるにつれ、このシュールな世界の成り立ちも、レビュータイトルの意味も、一味違って見え始めるかもしれない。