第619話 一撃必殺 ブリジア視点

「ほっ!」


白いオーラを纏った老人が2本の刀を振ると、クロスしている緑の斬撃がバハムートに向かって飛んでいった。


「ガアッ」


その斬撃はバハムートの裏拳によってかき消された。


「私の力ではあれにダメージを与えることすら難しそうだな。だから攻撃は任せたぞ。その代わりに魔法はかき消してやるから安心して攻めてこい」


「何様じゃ!じゃが、そうしてやるのじゃ!」


元々誰かもどんな戦い方をするかも、更には本当に味方かも全く分からない謎の老人と共に接近して戦うのは遠慮したい。だから、老人からの提案は好都合だった。魔法が放たれた時は妾が戻ればいい話だしな。


「行くぞ!」


妾はそう言ってバハムートに向かって行った。




「ガア!」


「まずいのじゃ!」


接近戦を始めて10分ほど経ったが、エリーラとキャリナ以外の全員がバハムートと接近して戦っているというのに、バハムートが左手から特大の風の玉を5発放った。右肩付近に居る離れている妾でさえ風を感じているのだからかなりの威力があるだろう。

放った方向はもちろん、漆黒の炎が高く上がっているシャイナとリュウのいる場所だ。

また、キャリナは既に目と尻尾にバハムートの水、土、光、闇らしきの魔法をストックしているので、新しくストックする余裕は無い。そのため、あれは妾がどうにかするしかない。


「転…」


転移して急いで斬り消そうとした時だった。風の玉に5つの青白いの斬撃が飛んできた。その斬撃はバハムートの魔法を相殺した。


「だから魔法は私に任せておけって言っておる!」


「…頼んだぞ!」


ここで私はこの老人を信用することにした。正直、自分で戦いながら魔法を警戒するのが大変だったのじゃ。さらに、妾はあまり魔法を斬り消すのはあまり得意として無いから魔法を打たせたい立ち回りもしていた。しかし、老人が魔法を消してくれると考えると、それらの2つをそこまで気にしなくても良くなる。それだけでかなり戦いやすくなる。妾は再びバハムートの近くに転移して攻撃を再開した。




「はあ…はあ……」


魔法を老人に任せて30分くらい経ったか?まだ妾達の中から重症を負ったものはいない。つまり、バハムートの攻撃をまだもらっていないということじゃ。

しかし、流石にそろそろ妾達の集中力も無くなってきているし、バハムートが妾達の動きにも慣れてきた。そのため、急激に危ない場面が増えている。そろそろ限界だ。少し前から黒く輝くの炎すら見えなくなったが、大丈夫なのだろうか?



「お待たせ」


「シャイナ!」


そんなシャイナの声が聞こえてきた時、思わず妾達の頬が上がったのは言うまでもないだろう。シャイナの方を向くと、右手に鎖鎌を持っていた。その鎌の反った刃の部分だけは黒く輝くの炎に包まれていた。

そんなシャイナを…鎌を見たバハムートはとんとんとんっと3歩ほど後ずさった。


「よっ」


「ちょっ!?」


シャイナはおもむろにその鎌をバハムートに投げ付けた。思わず驚きの声が出た。バハムートはその鎌を身体3つ分位余裕を持って避けた。しかし、その鎌は方向転換してバハムートに迫った。だが、それもバハムートはしゃがんで避けた。


「とうっ」


シャイナがそう言うと、鎌に付いている鎖がうちゃうちゃ動き、即座に鎖を掴んでいるシャイナを鎌まで運んだ。



「邪炎神刃!」


しゃがんでいるバハムートの真上に移動したシャイナは鎌を掴むと、下に向かって思いっきり振った。

すると、巨大な黒く輝くの炎の斬撃が高速で放たれた。


「外した!」


「問題無いわ!」


シャイナはその一撃を外した…いや、バハムートが避けた。しかし、これは避けたバハムートを褒めるしかない。バハムートは放たれた瞬間に両腕を斬撃に方に伸ばし、斬撃と腕がぶつかって斬撃に腕が斬られているタイミングで腕を動かし、斬撃を横にずらした。その結果、斬撃は地面に谷を作り、バハムートは両腕の肘先が無くなっただげでまだ生きている。

だが、それでもエリーラがまだ居る。エリーラは両腕をバハムートの方に向けると、バハムートの傷口からどばどばと勢いよく血が溢れ出した。


「ガアッ!」


バハムートはそう鳴くと、自分の傷口を火の魔法で焼いた。大きいからと火力が高いからか、離れているが、肉が焼けた少しいい匂いが香ってくる。


「…傷口が塞がったわ」


エリーラがそう呟いた通り、バハムートは自分の腕を焼き焦がすことで無理やり血を止めた。

しかし、キャリナが魔法を奪ってから徹底して火魔法を使わなかったのはこれをするためだったのかもしれない。

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