第618話 助っ人? ブリジア視点

「転移!」


「ガア!」


急いで転移したが、何度も転移しているため、大体どこに転移するか分かられていた。その証拠に転移に合わせて走りを止めることなく巨大な拳がやってきた。


「透過」


透過で攻撃をすり抜けたはいいが、このままだと通り過ぎられてしまう。


「やっ!」


全身がすり抜ける前に腕だけを実態化させて、刀をバハムートの肩に突き刺した。


「刺さらない!」


しかし、刀は鱗に引っかかるだけで刺さっていない。どうしても攻撃力が足りていない。


「まずい…!」


後ろからベクアらがやって来ているからか、バハムートは口を大きく開いて光線を放とうとしている。


「ガァァァ!」


「転移!」


かなりの魔力が込められている光線が放たれると、妾はシャイナとリュウの前に転移した。妾もゼロス同様に魔法を斬ることはできるが、今回の光線はさすがに一刀で斬り消すことはできない。また、斬れないからといって刀を振り直したら、その間に妾が光線を浴びてしまうが、仕方が無いじゃろう。


「はあ!」


妾が覚悟を決めて太刀を振ろうとしている時だった。


「ほい!」


あまり力強くない声がどこからか聞こえてくると、巨大な斬撃が光線に数個飛び込んできた。すると、その斬撃は光線の1部を消した。


「これなら!」


1本の光線が輪切りになったことで小分けになった。つまり、一つ一つが一刀で斬り消せるになり、さらに振り直す暇ができたのじゃ。


「はっ!ふっ!やっ!そっ!だっ!」


妾は何度も太刀を振り、分けられた光線を全て斬り消した。


「闘拳氷波!」


「斬拳!」


「ガア…」


その間にやってきたベクアとウカクによる攻撃でバハムートは下がることを余儀なくされている。とりあえずは危機が去ったのじゃ。


「誰じゃ!」


問題は今の斬撃を斬った者が何者かじゃ。斬撃でバハムートの光線の1部とはいえ消せる者なので、強者というのは間違いない。


「すまんのう。本当だったら見てるだけで今を生きる若い者に任せようとしたのだ。しかし、そうとも言ってられん状況になったから思わず手を出してしまった」


「老人…?」


やって来たのは木の柄の2本の刀を持った白髪の老人だった。


「儂のことはただの老人だと思ってくれてよい。昔にぼうず…ゼロスに剣を教えた仲かのう」


「……」


こういう時こそ、シャイナに頼って何を考えているかを知りたいのだが、シャイナは漆黒の炎を自身の鎌と炎に吸収するのに忙しく、そんな余裕は無さそうだ。


「今やるべきことはそこの2人の準備が終わるまであの魔物を足止めすることだろ?もう全盛期を過ぎた年寄りだが、まだやれることがありそうだから参戦するぞ。拒否は認めんからのう。言うことを聞かない老害と思って諦めてくれ。その代わり儂が危なくなっても助けなくて良いぞ」


「…分かった」


そこまで言うなら許可するしかない。敵では…無さそうじゃしな。それに、今はバハムートと戦えるくらい強い人手が欲しい。


「準備ができたらよろしくお願いするのじゃ」


妾はそう言ってみんなのいるバハムートの方に転移した。



「謎の老人が手助けに来たのじゃ!バハムートの光線を斬撃で1部消せるくらいの強者じゃ!じゃが、何者かは知らないから、何かあってもわざわざ助ける必要は無いのじゃ!」


そして、謎の老人が加わることを話し、それと同時に気を使う必要も無いと伝えた。

妾の言葉に皆は混乱した様子だったが、とりあえず納得してくれたようだ。言った妾でもまだ飲み込みきれていないのだからそれは当たり前じゃ。

そして、ちょうどそのタイミングで白いオーラを纏った老人がやってきた。




◇◆◇◆◇◆◇



「手を貸してください」


「仕方ないな!」


儂がボソッとそう言うと、横から突如として目がイカつい男がやってきた。


「すみませんね。急に飛び出して手助けを申し込んでしまって…」


「気にするな。娘も頑張っているのだ。俺様も頑張らないとな」


「相変わらずの親バカですね」



「ほっとけ!だが、俺も引退して王を娘に譲って力はだいぶ落ちてるぞ」


も年を取ったのでそれはお互い様ですよ」


「あはは」

「ふふふっ…」


お互いに競うようにどちらが弱くなったのかを言い合っているのが、まるで昔のような言い合いだと思って笑ってしまった。目の前の若者につられて私も少し気持ちが若返っているようだ。


「では、行きますよ」


「ああ!」


私がそう言って男の前に刀を出すと、その刀を男が掴んだ。


「「精霊降臨」」


2人でそう唱えると、目がイカつい男が消えて、私の体は白いオーラに包まれた。この全能感は久しぶりだ。


「行くか!」


久しぶりの感覚を嬉しく思いながら敵である魔物の方に向かって行った。

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