第617話 バハムートの強さ ブリジア視点

「ファイアストーム!」


妾は再びバハムートの顔の前に転移すると、顔を覆う程の炎の竜巻を起こした。チラッと後ろ見ると、その隙にシャイナとリュウがこの場から離れて動くと、見えにくい岩の後ろに隠れた。


「だあっ!」


「へっ?」


妾の魔法が消える頃にすぐ近くから声が聞こえた。バハムートに集中していたため、誰かが近づいて来ていることに気が付かなかった。というか、ここまでバハムートの身体を走って登ってきたのか?


「闘拳氷波!」


やって来たのはベクアで、そのままバハムートの肩まで登ってきて、顔の方に飛び込んだ。そして、魔法が消えて顕になった頬を殴った。


「ガアッ…」


「何じゃと…?」


今まで何をしても無反応に近かったバハムートがその攻撃で1歩よろけた。さらに、殴られた顔の左半分は霜が薄く張っている。


「ガア!」


「ベクアっ!」


ダメージを受けたことに怒ったのか、今までで1番鋭い目でベクアを睨むと、拳をベクアに向けて振った。それを空中にいるベクアには避ける手段は無い。


「ウカク!」


「はっ。鎌風」


ベクアの後ろからやって来たウカクはベクアの前に出ると、長い尻尾を振った。すると、バハムートの腕に細い切り傷が複数でき、勝手に拳はベクア達から逸れた。妾でも初見では何が起こったのか分からなかった。

ベクアの言っていた通り、ウカクという者の腕はかなり立つようじゃな。


「行ってください」


「おう!」


その後、ウカクは長い尻尾を纏めると、ベクアの足元に持っていった。そして、ベクアがウカクの尻尾を蹴ってバハムートの顔の方へ向かっていった。役目を終えたウカクは下に落ちて行った。


「今だけの特別製だ!」


ベクアはそう言いながらバハムートの腕ほど巨大化した左腕でバハムートの顔を殴ろうとした。


「ガ!」


しかし、腕が大きくなったことで重さが増したからかスピードが遅くなった。その隙をついてバハムートが両手を組んで上から振り下ろした。


「止めなさい」


「隠闇」


しかし、そのバハムートの腕を水が覆い、動きが途中で止まった。それと同時にバハムートの顔が闇に包まれた。これらはエリーラとキャリナの仕業だ。


「お前らありがとうな!特大闘拳氷波っ!」


「グガアッ…」


2人の協力もあって、ベクアの巨大の拳がバハムートの顔に炸裂した。すると、バハムートの身体は宙に浮いて勢いよく吹っ飛んだ。さらに、バハムートの顔は霜を通り越して氷に覆われた。


「重剣!」


「ガバッ…」


そんな吹っ飛んでいるバハムートの上にドレリアが飛び込んで来た。そして、重力魔法で重くした大剣をバハムートの腹を思いっきり斬り付けて、バハムートを地面に叩き付けた。


「あ、妾ほとんど何もしてないのじゃ…」


妾は最初に目隠しにしかならなかった魔法を放っただけでほとんど役に立っていない。


「これなら2人の力がなくてもいけるかもしれないのじゃ」


協力することで今まで不動とも言えたバハムートをここまで吹っ飛ばすことができた。バハムートは氷に覆われた鼻から血は滲んでいるし、腹には今までに無かった浅くない傷ができている。

この調子で連携が上手くいくと、このまま倒せるかもしれないのじゃ。


「ガア!」


「何じゃと!?」


しかし、妾のそんな考えが甘かったのを見せ付けるかのようにバハムートはケロッと何も無かったかのように立ち上がった。そして、自分の顔を殴って氷を砕くと、鼻血を親指?で拭き取った。


「傷が…ほとんど治ってるのじゃ」


さらに、バハムートの腹の傷はもう再生してきている。まだ血は滲んでいるが、数分後にはもう傷は塞がっているだろう。


「妾の考えが甘かったのじゃな」


今の攻撃を繰り返したらいけるかもと思っていたが、バハムートという未知の魔物はそんな考えを抱ける次元ではなかった。やはり、当初の予定通りシャイナの一撃に託すしかないようじゃ。


「ガアアッ!!」


バハムートは妾達の方を見て吠えると、反撃を返ししようとした。しかし、その行動は横を向くことで無かったことになった。

そう、バハムートの向いた方角はシャイナとリュウがいる方角だった。つられて妾がその方向を向くと、そこだけ光が届いていないのでは思うほどの漆黒の炎が小さく上がっていた。


「ガ…ガアッ!?」


「まずいのじゃ!」


バハムートは急に焦ったようにシャイナとリュウの方へ向かって行った。

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