第615話 大苦戦 ブリジア視点
「なんなんじゃ、こいつは…」
妾達は戦ってそれなりに時間が経つが、苦戦してまともにダメージを与えられていない。ヒュドラの毒のブレスもその苦戦している理由の一つである。だが、それは些細なものじゃ。妾とドレリアなら悪魔使いの効果でブレスは無視できる。問題なのはもう1体のバハムートじゃ。
「グガアァァァァ」
「うっ…!」
ただバハムートが叫んだだけで衝撃波のような圧がやってくる。これも厄介ではあるが、これくらいはちゃちなものじゃ
「ガアッ!」
本当に厄介なのは巨体にそぐわないそのスピードじゃ。二足歩行だからか、数十メートルあった妾との距離をほぼ一瞬で縮めてきた。転移で逃げるという選択肢が思い浮かばないほどの速度じゃ。
「透過!」
ドゴンッ!
だが、そんなバハムートの何よりも恐ろしいのがその力と耐久じゃ。高くから振り下ろされた拳は透過ですり抜けたが、地面は隕石が落ちたかのように大きく凹んでいる。こんなのガードしたところで即死を回避できるかどうかで、食らった時点で終わりじゃ。
「だぁっ!」
そんな拳をすり抜けきってからカウンターのように斬りつけたが、鱗に薄い線ができただけだった。この高過ぎる耐久も妾達を苦しめる。
「打つ手無しなのじゃ」
そもそもこのバハムートに挑むには強さも数も足りていない。今の状態では隙を生み出すことすらできない。正直バハムートと戦える最低ラインの強さがドレリアを除く側近達じゃ。しかもこれはあくまで最低ラインであって、欲を言えばもう1ランク上のドレリア位の強さは欲しい。ドレリア以外の側近達にはヒュドラを任せたいのだが、2人でバハムートの相手をするのは無理じゃ。ただでさえ強いバハムートの更に強い魔族を相手に1人で戦えるゼロスとソフィは人外とすら思える。
「おい!全然ダメージ与えてないじゃねぇか!」
「!」
どうしようか考えていると、希望の光がやってきた。それはベクアとキャリナともう1人の獣人だった。ベクアならドレリア程の強さはあるし、キャリナは実力では劣るものの、その視野の範囲は指揮に向いていて、急造のチームではかなり役立つ。
「一旦離れるのじゃ!」
妾がそう言うと、側近達もベクア達の元まで下がった。バハムートは余裕のつもりなのかわざわざ追ってこなかった。
「お前らが揃いも揃って何を…」
「何してるのよ。全然ダメージを与えているように見えないわよ」
ベクアの発言を遮って話を始めたのは、今やって来たエリーラで、その後ろにはシャイナもいた。また、その後ろに続くようにエルフの3人もやってきた。
「すまんが、バハムートの相手をベクアとキャリナとエリーラとシャイナに手伝って欲しいのじゃ。奴の強さでは妾達は時間を稼ぐことくらいしかできなかったのじゃ」
「いいが、このウカクも一緒な。強さは俺が保証するぜ」
「分かったのじゃ」
知らない者でも強い者なら大歓迎じゃ。
「エルフの3人にはこの者達と共にヒュドラの相手をして欲しいのじゃ」
「分かったわ」
毒が厄介であるため、ヒュドラにも手勢は多い方がいい。だからヒュドラの相手はドレリアを除く側近とエルフの3人にお願いした。
「キャリナには後方で妾達の指示をお願いしたいのじゃ」
「分かりました」
こうして、急造ではあるが、現時点で最強のチームが完成した。これでバハムートに適わなければ諦めるしかない。そう思っている時、もう1人新たに現れた。
「私も混ざっていい?強さなら申し分無いわ」
「魔族…」
やって来たリュウを見て仲間だとわかっているが、思わず嫌な顔をしてしまった。
「強さに自信があっても、ある程度連携取れないと意味無いんだけど?」
リュウに噛み付くように発言をしたのはドレリアだった。ドレリアは天敵とも言える魔族の王であるリュウが参加をするのは気に食わなかったようじゃ。
「参加させる」
そんな雰囲気の悪い中、はっきりとそう発言したのはシャイナだった。
「悪い考えを持っていないのは確認した。そして、今のリュウはここに居る誰よりも強い。それを溢らせるのは勿体ない」
「分かったのじゃ」
シャイナの発言に妾自信を納得させる意味も込めてそう答えた。確かにシャイナの言う通り、今の妾達に強い戦力を余らせている余裕は無い。妾が許可したこともあって、ドレリアも渋々納得したようじゃ。
「では、行くのじゃ!」
そして、妾達はそれぞれが戦う敵へと向かって行った。
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