第614話 険悪? シャイナ視点
「シャアッ!」
私の投げた鎌をリヴァイアサンは少し残っている水を纏わせて防いだ。
「チェンジ」
私がそう言うと、私と鎌の位置が入れ替わった。これも新しい悪魔の能力だ。そして、新しい悪魔の能力はこれで最後だ。
「ふっ」
「シィヤ!?」
そして、私はさらに入れ替わった鎌を転移で呼び寄せ、鎌に火を付けて一部の水を纏っていない身体をざっくりと斬った。
「魔物は思考が読みにくい」
高位な魔物には思考するほどの知能が存在するが、それは人間と比べて劣っている。そのため、それは感情を表す絵文字のようなもので、言葉として成り立っていないことが多い。だから私は魔物戦よりも対人戦の方がどちらかと言うと得意。
でも、逆に考えれば魔物の行動がある程度読めたら対人戦と同じくらい得意になれる。だからあえて纏わせるために水を残しておいたのだ。こんな巨体の一部の水を操るくらいなら簡単。
そして、不意をつかれて攻撃された魔物が次にする行動も予測がつく。
「シャアァァ!!!」
リヴァイアサンは私の方に大きく口を開けて水の砲弾を放ってきた。
「よっ」
私は地面に少し残っている水を操って、自分の足を引っ張ってそれを避けた。
「ほっ」
「ギャァッ!」
そして、リヴァイアサンの頭のすぐ下の首と思われる場所に風を纏わせた鎌を深くまで刺した。
「炎爆」
その刺さった鎌から炎を爆発のような勢いで噴射させた。その結果、炎がリヴァイアサンを貫いて鱗の隙間から噴き出してきた。
「っ!」
しかし、それではリヴァイアサンは即死しなかったようで私の方を強く睨んできた。高位の魔物は生命力が強いから厄介。
「武器転移、チェンジ、武器転移」
リヴァイアサンはかなり怒り狂っているので、リヴァイアサンから離れることにした。その時にまず鎌を転移させ、その武器と私の位置を入れ替えて、また武器を手元に転移させた。このチェンジは有能なのだが、長期間使って慣れ親しんだ武器としか入れ替えられない。普通はそこが最大のデメリットなのだが、武器を転移させる能力も使える私にとってはあまりデメリットになり得ない。
「風炎槍!」
「重踏圧!」
「形影槍!」
「グギャァッ!」
「あ」
リヴァイアサンは重力に押し潰され、上からは炎と風の槍、下からは自分の影の槍で貫かれた。最後の力を振り絞った攻撃はエルフの女王達の攻撃により、出されることはなかった。
水が無くなり、致命傷を負い、最後の攻撃のために防御を捨てたがためにリヴァイアサンは忘れていたエルフ3人によって倒された。
最後にトドメを奪われたような形になるが、私達も戦闘に突如乱入したので仕方ないだろう。
「女王様方、良いとこ取りですか?良いご身分ですね」
ただ、そうは考えて居ない者もいるようで、リヴァイアサンの近くまでやってきて文句を言った。
「エリーラ。水を退かしてくれたことには感謝しているけれども、何も言わずに戦闘に混ざるのは褒められた行為ではないわよ。それに、最後はリヴァイアサンに何かさせる前に倒してあげたのだから嫌味を言われる筋合いは無いと思うのだけれども。むしろ私達はお礼を言われてもいい立場よ」
「……」
女王が言っていることは至極真っ当だが、上から目線の発言でエリーラは更にイラついている。
「話は変わるけど、魔法は使えなくなったのかしら?」
「っ!」
これには私も少なからずびっくりした。私はエリーラが魔法が使えなくなった瞬間を見ているからすぐに気がつけた。しかし、女王は今ここで少しエリーラと会話しただけだ。それなのに気付けるのは魔法が得意の種族の女王は伊達では無いということか。
「すみません。ゼロが望んでいることはここで無駄話をしていることですか?」
「「「っ!!」」」
私の問いに女王達はピクっと反応した。
「…そうね。ありがとう。ゼロス様のためにできることはまだ残っているわね。こんなところで無駄話している場合ではなかったわ。行くわよ」
「「はい」」
女王達は未だに激しい戦闘音が聞こえているもう1箇所に向かって行った。
「ありがとう。私は冷静じゃなかったわ。でも、もう大丈夫。シャイナの言う通りまだ厄介そうなのが残っているからいがみ合っている場合では無いわ」
「ん」
エリーラは反省した様子でそう言うと、女王達を追うように走り出した。
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