第608話 代償 エリーラ視点
「リヴァイア」
「っ!?」
魔族は湖の水で魔物であるリヴァイアサンのような水の塊を2つ作った。大きさもリヴァイアサンそっくりだ。
「…私の水操作とは違うわね」
私は契約しているディーネの力で水を操ることができる。だが、魔族がやっている方法は魔力を流すことで無理やり操作していることだ。その方法は私の魔力量ではすぐに底が付くからやろうとはしない。
「水龍!」
私は魔族が生み出した水リヴァイアサンを2体の水龍で迎え撃った。
「キョハハッ!」
「えっ…」
しかし、私の水龍はいとも簡単に食い破られた。
「俺のおじいちゃんとおばあちゃんが負けると思うなよ!」
「くそっ…」
私は思わず悪態をつきたくなった。私の水を操作しているに過ぎない水龍と、無理やりではあるが大量の魔力を流して操作している水リヴァイアサン。全く同じ大きさでもどちらが強いかは明白だろう。
「だからって…」
水リヴァイアサンの制御を奪うのはできなくは無いが、それにだけ集中しないといけないだろう。また、それを行ったところで魔族は新しいのを作って終わりだろう。だからといってあれを倒せるように水に魔力込めるなんてできない。どうすれば…。
「…難しく考える必要は無いわね」
私にできることは限られている。失敗を取り返すためにできることを全力でやるだけだ。
だからシャイナ。私がどんな状態になろうとも止めようととするじゃないわよ。
「ふっ…!」
私は気合を入れて湖の水全ての操作に取り掛かった。魔族に有利な状態も、水リヴァイアサンの操作を無理やり奪っても意味が無いのもここに湖という大量の水があるからだ。つまり、水が共有のものではなくなればいいのだ。もちろん、水を消せればいいのだが、この水を消せるほどの魔法を私やシャイナでは使えない。
だからここにある水は全て私のものにする。既に私の制御化の水なら魔力を注がれようが制御を奪われるつもりは無い。
「があぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
こんな醜い声を上げたくないが、身体中のありとあらゆるモノが焼き切れそうで、そうでもしないと耐えれない。こんな広い範囲、大量の水を操作しようとなんてしたことも無いからそれは仕方がない。
(ピシっ…)
頭の中でぼろぼろになった何か大事な線が限界まで伸びたような感覚があり、これ以上伸びたら切れてしまい、大事なものが無くなるというのも分かった。それでも私は途中でやめることは無かった。
(ピシンっ!)
その大事なものがちぎれ切れると、私の操作能力が急激に上昇するのを感じた。これは好都合だと私は一気に湖の操作領域を拡大した。
「ははっ…」
そして、私は湖全てを手中に収めることができた。後は何が起こったか理解していないのか、こちらを見てただ警戒しているだけの魔族から隙を作って、その間に水リヴァイアサンの操作を奪えばかなり有利になる。
「…あれ?」
隙をつくために精霊魔法を使おうとしたが、上手く使えない。しかも、他の属性の魔法も使えなかった。流石にこんなにもの量の水を操作しておいて、さらに魔法まで使うのは無茶だったのかもしれない。
「エリーラ…魔力が…魔法が……。ううん、何でもない。魔族の隙は私が作るからその隙に水リヴァイアサンの制御を奪って倒して」
「分かったわ」
シャイナがそう言って魔族に向かっていった。魔族は水リヴァイアサンでシャイナに攻撃しようとしたが、それを湖の大量の水でガードした。流石に魔力が大量に注がれていたとしても何百倍もの水ならガードすることくらいは容易い。もちろん、突破するほどの余裕は無い。
水の無いところで互角で、シャイナに対して意味の無い水リヴァイアサンの操作に集中しているので、すぐに魔族の隙は現れた。
「はっ!」
「ウワァワッ!?」
数瞬の隙に私は水リヴァイアサンの制御を奪い取った。その間にシャイナはこの湖から離れている。これなら大丈夫だろう。
「死になさい。巨水龍」
私は湖の水を全て持ち上げ、かなり圧縮して何百mもある巨大な水龍を作って魔族を襲わせた。
魔族は水魔法で対処しようとしたが、どんなに魔力を注ごうが、そんな水リヴァイアサンよりもかなり少量の水では焼け石に水だった。魔族は巨水龍に襲われた。
「…リヴァイアサンの魔族が水に殺られるなんてね」
10分ほど経つ頃には魔族は四肢が無くなり、顔の原型ほど巨水龍に噛まれ、飲み込まれて圧縮され、ぶつけられたようだ。
パシャンっ!
私が水の制御を止めると、弾けるように水が散らばり、豪雨のように降り注いだ。
「エリーラ!エリクサー!」
「ありがとう」
シャイナに渡されたエリクサーを私は飲んだ。正直ショートしたかのようにかなり頭を含める全身が痛かったのだ。エリクサーを飲んだらその痛みはなくなった。
「疲れたわ。少し寝るわね」
「そんな…エリクサーでも治らない…」
シャイナの呟いを聞かずに私は倒れるように眠った。ミスはちゃんと取り返せたわ。
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